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135.5 ロジャーのお使い〜洋服編〜



「……この手紙を家の者に渡せ。ついでに直ぐ読む様にと伝えろ」



「わかりました。行ってきます」



 上司のユリエル長官に渡されたのは、ユリエル長官のサインが入った手紙だ。早速馬車に乗って王宮を後にする。




 ユリエル長官の住まいだから、カール様所有のエルフ族大使館。

 神聖帝国、フォーゼライド国、ベスティア国の大使館は王宮の敷地内にあるが、エルフ族は大使館が街中にあるし、名前が国名では無く種族名。


 馬車がカール邸に到着して、馬車の窓からユリエル長官の手紙を門番に手渡す。




「手紙の中身は執事にお渡し下さい。念のために身分証を魔道具にかざして下さい」



「はい、わかりました」



 身分証を銀の箱型の魔道具にかざして情報を読み込んでもらう。

 これで、私がこのカール邸で変な事すると名前や国の登録番号、住所も知られている事になるので……変な事をする気は無いけど、お利口さんにはしとこう。



 馬車が玄関前まで到着したので降りると、年配の体つきが良い獣人族虎種の男性…ハッキリ言うとムキムキのお爺様だ。お幾つだろう?お祖父様より年上に見えるけど、素敵な筋肉をお持ちなのが執事服の上からでも分かる。



「執事の春日井かすがいと申します。今日はどの様なご用件で御座いましょうか?」



「玄関先で申し訳ありませんが、ユリエル長官より速やかに手紙を読む様にと仰せ付かりました。こちらをお受け取り下さい」



「畏まりました。頂戴致します」



 春日井と名乗った執事は早速手紙を開けて…もう読み終わったの?



「こちらに『急用。袖の通して無い服と靴を用意して手紙を持って来た者に持たせろ。エルフ族の女性が着る。下着はいらん。』とありますが…女性の年齢や背格好などご存知でしょうか?」



 早いと思ったら手紙の文章が短いだけだった。



「年齢28歳身長は190センチの足のサイズは27センチで、体つきは…肩幅などは余り変わらないと思いますが、ユリエル長官より胸がややおありでした」



「胸がおありの28歳ですか?……失礼かと存じますが、見目はいかがでしたか?」



「個人的感想ですが、見た目はとてもいいと思います。髪はダークブラウンのクセのないショートボブで、目の色はエメラルドの様なグリーンでした。お肌は色白です」



「そうでございますか…ユリエル様からエルフ族の子ども服や物品の指示が御座いませんでしたでしょうか?」



 春日井は暫く考え混んで、後ろに控えていた別の男性に指示を出してまた私に質問して来た。



「いえ、特に指示は無かったです…子ども服が必要ですか?」



「エルフ族の28歳ですと身体は大きいですが、まだ抱き上げたり、人によってはオムツがハズレていない方も中にはいらっしゃいますので」



「結構しっかりしている方なのでオムツは大丈夫です。職場見学をして、就職活動をなされる様な方です。ピンクのドレスがお嫌だそうで、出来れば大人用の普段ユリエル長官が職場で着る様な服にしてあげて下さい」



 謎の多いエルフ族の衝撃的な実態を知ってビックリしたが、異世界人だと素直に伝える訳にもいかず具体的に伝えたから多分大丈夫だよね?つばめ様、オムツは回避したと思いますから、そこだけは安心して下さい。



「私も洋服など見繕って来ますので、中でお待ちいただいてもよいでしょうか?」



「いえ、お手間でしょうから馬車の中で待たせてもらいます。馬車止めを使うご予定が無ければ玄関先で待機させて頂いても大丈夫でしょうか?」



「来客の予定はありませので大丈夫でございます。それでは10分少々お待ち下さい」






 ー10分後ー



 馬車の中で待っていると、御者がトントンとドアを叩いて開けてくれた。

 服が用意出来た様で、春日井と多分従僕が箱と鞄を持って馬車に近づいて来た。




「時間が無い様なので目録は作りませんでしたが、上はゆったりめで下はベルトで調整出来る物にいたしました。後は丈が足りなかった場合は縫い目を解いて生地を引き出して下さいませ。ブーツも紐で調整出来る様にいたしましたが、足を入れていないのは一足しかございませんので、合わなければ他でご購入をオススメいたします。一応ご年齢を考慮して…新品では御座いませんがローブも入っておりますのでご了承下さい」



「わかりました。それでは急ぎますので失礼させていただかます。本日はありがとうございました」



「気をつけて行ってらっしゃいませ」



 肩掛け鞄とボストンバッグを持ち、更に手には箱。

 この黒い箱にはブーツが入っているらしいが……有名な魔道具技師の名前か書いてある?のはきっと気のせいだよね!(涙目)。



 王宮の入り口の検査でブーツどころか他も引っかかった。他もだったんだ…ベルトに魔道具でも仕込んでたのかな?

 黒い箱を手渡したら受付の人が書いてある名前に気がついたみたいで、震えた手で奥の検査室に持って行った。



「………こちらにいたのか」



「ユリエル長官、ブーツはいいんですけど洋服も引っかかりましたよ。靴下に何仕込んでるんですか?」



「…………検査は通るはずだ」



 教えてもらえなかったけど、検査に通るって事は攻撃系では無いんだろうな…たぶん。ブーツの作者はそんな物まで作れるのかー…知らなかった。



「お…お待たせしました。ブーツの飾りだけ引っかかったので……ああ、ユリエル長官の物でしたか。飾りだけロジャー副長ではなく、ユリエル長官がお持ちいただいても構いませんか?それなら通せます」



「………承知した」



「わかりました」



 全然通ってないじゃないですか。


 中級魔道具使用免許(フィールド限定)を持ってる私が持てないって…なんて物運ばせるんですか!

 そう言えば、ユリエル長官緊急時は特級魔道具も扱える上級魔道具使用免許(限定特級)保持者だったの忘れてた。



「………その箱から出さなければロジャーでも問題ない」



「この箱も魔道具だったんですか?」



「……ああ」



 あの箱自体が封印の魔道具だったのか…それは凄い。何が凄いって…ブーツを入れる用の箱に使う物じゃ無いのは間違いない。








 こうして、どうにかコンスタンティン様の居住区に辿り着いて、無事に荷物を手渡せた私を誰か褒めて欲しい。


 職場見学が明日に延期になったのなら、こんなに急がなくてもよかったなー…急がせてすいませんでしたカール邸の皆様。



 僕にとっては大冒険だったので、今夜はリンゴを食べよう。

 いつか冒険小説の主人公みたいにリンゴを丸齧りするのが僕の小さな夢なんだ。お行儀悪いけど、1度はやってみたいよね。





「シャリ……冒険の後のリンゴは美味いな」


「そうだねお兄ちゃん。今回の冒険は大変だったから、なおさらリンゴが美味しく感じるわ」


 こうして今回の旅は無事終わり、いつもの様に2人で林檎に齧り付くポチとタマ。


「次はカイザス国に居る英雄でも探しに行くか?」


「あら、もう次の旅の話し?もう少しゆっくり休んだらね。次はどんな冒険が待っているかワクワクするわね」


 こうして、2人の旅はまだまだ続くのであった。



『獣人族兄妹冒険記12巻』より一部抜粋






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