132話
多分、元々は地球と変わらない作りだったんじゃ無いかと、コンスタンティンさんは仮説を踏まえながら話し始めた。
「今、世界で一番古い国は世界樹の国だけど、あそこは頑丈な防御結界が張ってあるからね。あの国が出来る前も世界大戦で地形や国境線自体は変わってると思うよ?特に酷いのがこの辺りで今も荒野が広がって人が住める環境じゃ無い」
コンスタンティンさんが球体地図と呼んで教えてくれたそこは、教科書では空白部分の荒野の地(魔大陸)。球体地図には大陸の形がハッキリ描いてはあったがーー。
「ボッコボコですね」
「クレーターだよ。大戦の名残りと凶暴な大型の魔物がいっぱいいるからね。この球体地図も古いから、今現在はまた地形が変わっているかもよ?」
大型の魔物がいる中でわざわざ測量する人もいないので、地図の更新はしていないらしい。
大きさ自体はヴァニア大陸より大きいが、巨大なクレーターでエグれていたり海と繋がっていたりしている。
北の方に『魔王城』と書かれた部分があった。
魔族はこちらと一緒で城壁を築いて暮らしているみたいだが、世界樹の国の様な城壁結界が常に発動した状態で、日々の生活を送っているらしい。
「魔族って人を食べるって言ってましたけど、ごはんどうしてるんですか?」
「厳密には人だけ食べてる訳じゃないんだよ?人を食べるのが一番エネルギー摂取効率がいいってだけでね。人は血液中に魔力も沢山あるし」
吸血鬼もパンを食べるし、野菜も肉も食べると聞いて驚いた。あんまり人と変わらないんだなー。
「元々は人だったからね」
「ん?どう言う事ですか?」
「人型の生き物の祖先は大体人族だね。エルフ族とドワーフ族と人族の違いなんて、ほぼ身体の頑丈さと魔力量位だし。吸血鬼の元を辿ればゴブリンに行き着くけど、ゴブリンも元々は人だったんだよ?」
色々衝撃的すぎて、ちょっと頭パァンしそう。
体の頑丈さや大きさと血液中の魔力量、魔石があるか無いかの違いだけで、内臓などの配置も脳の作りも殆ど変わらないみたいだ。
生物学的に見たら人型なのは人族の亜種に分類出来る。
「つばめも魔力量だけで見たらエルフ族に分類されるんだけど、昔の異世界人が『人族に分類して欲しい』って言ってね。それ以降人族に分類してるんだ。前話した人狼や竜人は生物学的に見たら魔族だけど、獣人族と名乗っているのと一緒かな?話が結構それちゃったから、大陸の話に戻してもいいかな?」
「はい、すいません」
「謝る事ではないよ。つばめの国では『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』って言葉もある位だしね。ただ、こちらも秘密保持の規約などで答えられない時もあるからそこはごめんね?」
「いえ、ありがとうございます」
コンスタンティンさん、昔は今のヴァニア大陸にあたる所に住んでいたのだがお引越しして、東にある小さな島のひとつを現地民から買い取って島を起点に徐々に島の面積を拡大。
島を買い取って面積を広げて、隣の島とくっつけてみたりと色々試してるいると現地民が移住したいと申し出が………。
「今の神聖帝国民の祖先だね」
結局全部の島々を買取繋げて、ある程度の大きさになったので島の拡大はストップした。
しかし、東の果てに不思議な島があると聞きつけたエルフ族が安住の地を求めて何とかたどり着き、そのまま定住。
その後、ドワーフ族も仲間に入れてくれと島にたどり着いたが、エルフ族と喧嘩になるので島の増設を再び開始。
噂では獣人族や魔族も一部来たがっているとの事だったので、広めに島を作ったそうだ。
ドワーフ族は広大な大地を、エルフ族は温暖な気候の大地を、人族はコンスタンティンさんにお任せしますと言われたので、恐らく昔は日本の型をしていたのだろうこの場所にエデンを作った。
案の定、後から魔族と獣人族も来たので、北にドワーフ族、南にエルフ族と分けてコンスタンティンさんが中間あたりに住もうかなと思ったら、すかさず人族が近くに住む事を希望。
「発言してもよろしいですか?」
「何かなカール?」
「神聖帝国が崇め奉っている神が何かお話ししないと。まるで人族がコンスタンティン様のストーカーや金魚の糞の様に思われてしまいますよ」
「一応私を信仰しているらしいよ?それで、話の続きなんだけど」
コンスタンティンさんは神様でした。
大地を作っちゃう位だもん。信仰したくなる気持ちもわかるわ。
何だか本人あんまり気にしてない感じがするのは気のせいかな?そういえばそんな事もあったなーみたいにサラッとお話しされたけど。
「私は元々は神聖帝国の総本山の神殿に住んでいたんだ。私の住まいを囲う様に神殿が建っていたが正解かな?」
人族国教…またの名前を『大地神教』。神の名前は秘匿。最高司祭になると知らされる名前は『コンスタンティン様』。
「まぁ、私がここにいる事は公然の秘密で、エデンの殆どの人が知ってるだろうけどね。一応一番上の位になったら面会してるよ?」
「コンスタンティン様、一番上の位は最高司祭です。補足しますと信仰心あつい者達が後を立たないので『最高司祭にならないと面会しない』とおっしゃっていたらしいですよ」
現在も約10年に2回面会している最高司祭は、カールさんの話によると苛烈な…ガチ総選挙を勝ち抜かないと着けない職業?で、神聖帝国民憧れの職業だとか。
「ほとんど血筋で決まるけどね。やる意味あるのかなって私は思ってるよ?」
「コンスタンティン様、最高司祭にその事は仰らないで下さいね…また泣かれますよ」
「言わなくてもいつも泣いてるから気にしないよ」
神が何か仰られているが、私は最高司祭がどんな人かちょっぴりだけ気になった。本当にちょっりだから会いたい訳じゃ無いよ。
そう思っていたつばめが最高司祭?に遭遇してドン引きするのは、もう少し先のお話し。