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130.5 王妃2



 何とか単位もギリギリ落とさずわたくしは進級出来た。2年生になると週末も家に帰れる様になったが、妹がーーー。



「あねうえ、帰って来てくださるのは嬉しいですが将来のために学園で出来るだけ学んでください……わたしが成人したら一緒にこの屋敷を出ましょう」



 妹の言葉に頷いて、帰るのは1ヶ月に1度と長期休みの日に数日。

 ………正直わたくしの方が妹に会えないのが寂しかったが耐えた。だってその言葉を言っている妹の方が辛そうだ。





 幸い、2年生の後半からアルバイトの許可も降りたので空の魔石に魔力をコツコツ貯める傍で、夜は学園の食堂で皿洗いのアルバイトをした。



 勉強は早朝と休み時間、放課後の図書室。そんな生活を送っていたので友達は出来なかったが先生からの受けは良かった……しかし、最近悩みがある。




 身長の伸びが完全に止まってしまった…大分小柄のまま。と、言う事は魔力の伸びもこの先悪くなる。


 定期的に行われる健康診断で魔力量の測定を行ったが、案の定、前回と数値と比べて伸び率が悪い。


 これでは、3年生になると受けられる魔法系の選択科目は取れないだろう………魔道具技師とまでは行かないが、中級魔道具位は扱える様になりたかった。


 身長制限がある軍にも入隊は絶望的だ。あそこは寮があるから就職先の候補に入れていたのに………あ、体育の成績あんまり良くないからどっち道無理だったかも。




 妹に相談した。17歳にもなって11歳の妹に相談事をするとは…我ながら情けない。



「あねうえ、国外を視野に入れて勉強しましょう。3年生の授業は選択科目が多いと言っていたでしょう?」



 恥を忍んで相談してよかった…わたくし1人ではこの国を出るなんて発想は出て来なかったわ。


 選択科目一覧の紙を見ながらあーでもないこーでもないと言いながら、最終的に語学関係の科目を出来るだけ取る様にした。

 これで、国外何処に出ても言葉や文字の心配をしなくて済むわ。

 国内は無理でもカイザス国の学園卒業資格が取れればあまり就職先は、気にしなくても大丈夫だろう。





 3年生になって語学関係の授業やその他の単位も無事

に取れて後は卒業するのみとなった。



 順調だと思われた生活は久々に会った父の一言でぶち壊された。










「結婚しろ」





 週末の休日に屋敷に帰って来てみれば、父の書斎に呼び出された。正直言って久しぶりすぎて眼鏡で父だと判断した位だ。



「20歳まで後2年ありますが、婚約ですか?」



「いや、お前は学園を卒業したら結婚させる」



「18歳で?私は魔力量が多く無いので早くに結婚する意味が無い様に思われますが……お相手は他種族の方ですか?」



「いや、陛下の4人目の妃だ」





「は?」




 正直言っていい?わたくし18歳で陛下は50歳位だった気がする…王子も王女もわんさか居るのに今更妃を取る意味がわからない。



「陛下の慰み者だ。嫌ならお前の妹を18になったら差し出す」



 もっと何かに包んで欲しかった……どうやら若い娘が好みらしい。

 そして、妹を盾にすれば私が断れないと思っている。その通りなので頷いた。








 こうして私は、卒業と同時に王の妃と言う名の慰み者になった。


 別れの日妹は泣きながら「いつか必ず迎えに行く」と言っていので「待っているわ」と答えた……私は妹に嘘をついた。



『もし変な事をしてみろ。お前の妹はタダじゃおかないからな』




 結婚の話を出された時に父から言われた言葉に私は絶望した。


 結婚誓約書にサインと婚姻届にサインをしてその日の内に初夜を迎えた。





「『冬哉とうや』の娘だから期待しなかったが、なんだ中々見目がいいな…大きさも私好みだ」



 冬哉はわたくしの父の名だ。

 いつもメガネと妹と呼んでいたので理解するのに少し時間がかかった。


 妹は最近「メガネ野郎」とか「あの野郎」と呼んでいたが、何処でそんな口の悪い言葉を覚えたのだろう?


 そして、大きさとは身長の話しよね?目線は胸に固定されていたが。わたくし身長は140センチだが、胸は結構ある。体重は聞かないで。



 そして結婚誓約書も婚姻届も陛下や親が書く欄は記入してあったので、これが初対面。


 何て言ったらいいか…身長は低めで顔も何処にでも居そうな感じだ…普通の格好をして街中を歩いていもわからないだろう。普通のおじさん。



 わたくしに余裕があったのはここまでで『慰み者』になると言う言葉を、18歳のわたくしは正しく理解していなかった。



 押し倒されてーーー










 ベッドの上で泣きながら、他者とはわたくしに冷たく当たる生き物だったと思い出した。妹や、束の間の学園生活で忘れていた………。



 この世界はいつも不条理で理不尽。





 こんなおぞましい事を妹にはさせられない。








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