13話
「お待たせしました」
「お帰りなさいませ。それでは参りましょう。」
ガチャ
鈴木さんが馬車のドアを開けてくれたので、乗り込む。
コンコン…
このノックする音が出発の合図だ。
馬車の中は御者台の方(前方上)にしか窓が無いので薄暗い。天井部分に灯りはあるが、オレンジ色で優しい光だ……揺れと合間って正直とても眠くなる………昨日はいっぱい寝た…のに…な……ウトウト…
コンコン…コココン
「ふぁ〜……ねむっ……」
………目的地に着いて馬車が停まる合図だ。あー…まだちょっと馬車に揺られてたかったな……自宅から王宮までは大体15分前後で到着する。
スマホや腕時計が無いので本当に大体の時間だが。
扉付近からノック音がして、鈴木さんが「つばめ様、到着いたしました。扉を開けても宜しゅう御座いますか?」と優しい声で聞いてくれる。
良い声だなー…本の朗読とかしたら売れそうだな〜。
「はい、大丈夫です」
「失礼致します」
扉が開き、私が降りやすい様に鈴木さんが手を差し出してくれる。
うん、ジェントルマン!だがしかし、私身長も高いが手もデカイな……。
毎回降りる時は介助して下さるのだが、私がよろけた拍子に鈴木さんに怪我でもさせたらと心配になるので、前に「私がすっ転んで押しつぶすと大変だから介助は不要です」
と、言ったら「つばめ様のような女性に押し倒されて死ねるなら、この私め本望に御座います。」と冗談をおっしゃっていた。
そのセリフを聞いて、昔は遊び人疑惑が浮上した。
今もかな?こんなオトコ女を女性扱いしてくれるだけで、マジ紳士だと思います。
「それでは私めは此方で失礼致します。」
「鈴木さんありがとうございました。また帰りによろしくお願いします」
「はい。お早いお帰りをお待ち申し上げております。行ってらっしゃいませ。」
「行ってきます」
鈴木さんとはここまでだ。帰りはまた同じ場所に迎えに来てくれる。
私は馬車乗り場から真っ直ぐ歩く。
馬車乗り場からは外廊下…屋根のある道をしばらく進むと王宮入り口のドアが見えて来た。
そのドアを入ると右に受付、正面にゲートが見える。
「おはようございます」
「つばめさんおようございます。お鞄と身分証をお願いします」
受付の人に鞄の中身を見せて、持ち込み出来ない物(危険物)が無いか確認してもらう。
私はペンダントを出して受付の人が手に持っている長方形の銀の箱の上にそれをかざす。
箱表面に文字が浮かび上がった…
王宮内部通行許可証明書
名前 つばめ
所属 王都クリスタ 第7文官 図書室
職種 臨時補佐官 臨時司書補佐 事務 翻訳
範囲 無制限
許可 コンスタンティン
通行を許可します
「ありがとうございました、それではお進み下さい」
「はい、ありがとうございました」
私はゲート…門に進む。
日本だと空港とかにある金属探知機みたいなものだ。異世界だとある一定量の金属の他に持ち込みや許可の無い魔道具とか毒物も引っかかるらしい。
ゲートを潜ったら廊下を進み、階段を登りなんやかんやで職場の入り口までたどり着いた。
『第7長官室』の入り口をノックして…………うん、返事無いな。
ドア横の壁に銀のプレートがあるので、そこにペンダントをかざしてから入室する。
「おはようございます。失礼します」
誰も居ないが一応挨拶してから自分の席に着席し…
「また増えてるよー………さて、やるか」
机の上にごそっと置かれた手紙の山に取り掛かる。
ちなみに仕事開始まで後1時間以上あるが、すでに帰りたい気持ちでいっぱいです。