113話
資格や就職関係の話しが終わって、コンスタンティンが外に出てみないかとお誘いをうけた。
「今日は霊山が見れるけど、ちょっと見に行かない?」
「是非行きたいです」
外に出るので、皐月先生が前に貸してくれたショールを羽織り………私ずっと医務室から借りてるスリッパだけど外歩けるかな?
「転移するからそのままでも大丈夫だよ?」
コンスタンティンさんが瞬間移動してくれるみたいだ。よろしくお願いします。
手を握ってと言われたので、両手でギュッと握ったら部屋の景色が変わった………高っ!?
「うぉわっ!何処ですかここ!?」
「時計塔の上だよ?この国で1番高い建物だね」
もろ屋根の上って感じで、時計塔なのかは確認出来ないが…いやー、いい景色だね。
ずっと建物の中にいたから、外がこんなに暑いとは思わなかった…王宮内は空調が効いてるんだね。
「つばめ。ちょっと頂上付近に雲があるけど、アレが霊山だよ」
コンスタンティンさんが指さした方向を見たが………多分富士山だね。遠くて少しわかりづらいけど。
「まさか異世界で富士山を拝むとは………んー?」
「どうかした?」
「コンスタンティンさん、私日本の記憶が曖昧なんですけど働いても大丈夫ですかね?」
「何が思い出せないのかな?」
人の名前とかは出て来るが、顔や声が思い出せない………何処に住んでいたとかも朧げだ。
実家の住所は思い出せるけど一人暮らしもしてた気がするな………んー…何処住んでたっけ?料理とかは出来るんだけどな…何の仕事してたんだっけな???ダメだわからん。
「こっちに来る前の記憶とかが曖昧なのかな?異世界人だとたまにいるけど、日常生活に支障が無ければ大丈夫だよ。徐々に思い出すかもしれないしね」
異世界転移して、日本に未練が無い様に記憶を調整されたのかもしれないと言われた。
言われてみれば…何が何でも地球に帰りたいとか思わないな。
ついでに神様に会った記憶も消されたのかな………うん、あまり深く考えない様にしよう。今はこれからどうやって暮らして行くかとかの方が大事だ。
考え事をしていたら、視界に大っきい鳥が2匹飛んでいるのが見えた。おぉっ!ふぁんたじー。
「異世界の鳥って大きいんですね」
「あれは魔物だよ。医療都市に急患を運んでいるんだ。つばめの世界だと、救急車みたいな役割かな?」
異世界の救急車もっふもふだね。
黄色と黒のまだら模様のアヒルと、白色の完全に見た目アヒル2匹を人が乗れる位に大きくした感じだ…まだら模様色味が凄い目立つ。
コンスタンティンさんに都市を囲う城壁の説明を受けた。
カイザス国王都クリスタは円形で、外側にさらに円がある。二重になってるんだー。
ドーナツみたいだと思った私は、ちょっと小腹空いて来たのかも。
外側の城壁は4区画に分かれており、それぞれまた違う都市だそうだ。
医療都市は南にあるらしい…黒まだらのアヒルは既に遠くの方に行ってしまった。もふもふよサヨウナラ。
「あっちが西ですかね?」
「うん、西には学園都市があるよ」
と、富士山は南西方向に見えるので地図の通りだ。
うーん…街並みはやはり異世界っぽいけど、時計塔が高すぎて下の人とかはよくは見えないな…獣人族がいるって言ってたけど見えない。
もふもふが足りない気がする。
しかし、先程のアヒルカムバックとか言えない…あれ救急車だもんね。
「あ、言い忘れてたけど私が転移出来るのは内緒ね。この世界に転移魔法は無い事になってるから、不用意に口にしてはダメだよ?時計塔のてっぺんに来た事も内緒」
「了解しました」
「ふふっ…名残惜しいかも知れないけれど、そろそろ部屋に戻ろうか」
そう言ってコンスタンティンさんは手を出して来たので、また両手でしっかり掴まって……コンスタンティンさんの部屋かなここ?
「お帰りなさいませ。オヤツをお持ちいたしました」
「飲み物ちょっと冷たくしてくれる?」
「かしこまりました。」
「コ…コンスタンティンさん」
「ああ、カールは大丈夫だよ。ユリエルもね。皐月は多分知ってるけど言わないであげて?」
「はい…」
コンスタンティンさんって何者なんだろう…研究者って言ってたけど、見た目(服装)神父さんであんまり研究者っぽく無いんだよね。聞いても大丈夫かな?年齢も良く分からないし。
「コンスタンティンさんの年齢ってな「つばめ様、本日のオヤツはクッキーになります」
「…………ありがとうございます」
カールさん笑顔だが、目が笑って無いので「それ以上聞くな」ってことね。
クッキー美味しいです。お茶もありがとうございます。
コンスタンティンさんの顔はいつも通りニコニコしてたのでよくわからない。
んー……まぁ、コンスタンティンさんはコンスタンティンさんだと思う事にした。少なくとも魔王では無いみたいだけど………まぁ、いっか。
ー
つばめオヤツ
プレーンクッキー
ココアクッキー
アイスティー