104.5話 ユリエル5
部屋に案内されて黒い何か自ら入れてくれた茶を出された。美味しい…鈍行性の毒だろうか?まだ効いて来ないな。
私の事は割と最初の時点で目をつけられていたらしい。早すぎるだろ…ここからどれだけ離れていると思っているんだ。
「いや、世界樹の国のエルフ族が国境越えた時点で世界各国警戒するよ?普通は」
この非常識の塊の様な黒い何かに「普通は」なんて言われた…悔しい。カミュの友人(推定)のクセに。
「しかもこんな危ない物持って来ないでよ。コレはこっちで処分するからね?」
「………ただのコンパスだが?」
すごい顔された。
「はぁ?(怒)」って心の声が聞こえるのは気のせいでは無いのだろう。
心臓止まりかけて死にそうになった。比喩ではなく本当に。どうやら拷問コースの様だ…辛い。
ローブに組み込まれた自決用の魔道具は、この建物の中に入る際に没収されたので自死も選べない。
戦う気も失せるほど……と言うか戦う前に勝負がついてる様な存在から逃げる事も出来ない…詰んだ。甘んじて拷問を受けるしか無い。
カールと名乗ったエルフ族が…………エデンのエルフ族か。
自分の故郷以外にいるエルフ族を初めて見た…ハイエルフ種かふーんなるほど。焼き菓子を出して茶のお代わりを入れてくれた。
同胞よ、私を哀れに思うなら私に一服盛ってくれないだろうか?………断られた。泣き脅しも通じそうな相手じゃ無さそうなので止めておく。
菓子うまいな。茶も先程より美味しく感じる。
人生最後になるだろう甘味を味わって食べ、打つ手はもう無いので私は素直に拷問を受ける事にした。
黒い何かにコンパスの危険性を説かれた。3日位。
最初の1時間で何回か心臓が停止したが、何とか生き延びた。エルフ族のタフさが今は悔やまれるな…サクッと殺って欲しい。
ー
説明と言う名の拷問中
コンスタンティン「なんで重複多重結界発動してる建物内の人物が特定出来るの?非常識気まわりないよ辞めて本人の許可も取らずにこんな物作るの」
ユリエル「………カミュに言え。大体、大きな結界など魔力消費を下げる為に網目模様なのだからその穴に通せば普通出来るだーーー」
コンスタンティン「はぁ?普通出来る?ちょっと何言ってるか分からない」(怒)
ユリエル(死にそうだ…死にそうなだけで死ねない…ツライ。そしてカミュお前は絶対許さない)
こんなやり取りを数回して、途中から口答えしなければ怒りを買わない事を学習したユリエルが話を素直に聞く様になり、いつの間にか結界魔法全般の話になって盛り上がり過ぎ数日経っていた。
ユリエル「…そう言えば途中何度かコンパスが貴方を追跡出来なくて止まっていたが、どんな結界を?」
コンスタンティン「あれは平面じゃなくて魔力消費無視した、表面が三次元構造の立体で構築してあるからかな?」
ユリエル「(こうして、あーしてこうして……いや、此処はこうだな)………なるほど」
コンスタンティン「何がなるほどだよ。今頭の中で組んだ術式やめてくれる?その顔はロクなのじゃないでしょう?」
ユリエル「………?」
コンスタンティン「あのアホが悪巧みしてる時の顔そっくりだったよ?うっわ…嫌そうな顔も似過ぎだからその顔やめてね」
ユリエル(解せない。カミュ許さない)