104話
私がこの世界に来てから使ったトイレは2ヶ所。この客間と医務室のトイレだ。
「皐月、医務室のトイレは表示どうなってる?」
「あそこは建物が古いですから、個室1個の男女兼用マークですね」
なんの疑問も持たずに使っていたが記憶を掘り起こして見ると、確かに『トイレ』と共通語で書いてあって日本と同じ男女で赤と青のマークが書いてあったと思う。ちなみに客室は何も書いてなかった。
王都クリスタの最新の公衆トイレは女性、男女兼用のサイズ別、男性。
身体の不自由な方があまりいないので、多目的トイレは無い。その代わり小さな子ども、普通サイズ、体の大きい獣人族が使える様な男女兼用個室トイレがあるたいだ。
「元々カイザス国は人族の国だったからね、名残で人族の表示なんだ」
ユリエルさんの故郷で別大陸『ヴァニア』にあるエルフ族だけが住む『世界樹の国』でのトイレの表示は現地の言葉で『トイレ』と書かれているのみ。
「男女関係なく同じトイレを使うらしいのよ」
「なるほど」
人口の半分は両性で、4分の1が男性、4分の1が女性。
身体の作りだけで性別を分けたらこんな感じになるのだが、ユリエルさん曰く「皆んな一緒」らしい。
『世界樹の国』にいた時は性別とかあんまり気にした事ないみたいだ。
ただ、世界基準のエルフ族の緑ローブで「男」と、ユリエルさんは表明しているらしい。
ちなみに『世界樹の国』では戸籍上に男女の記載は無い。
成人100歳の時に世界基準の緑ローブを羽織るか羽織らないかの違いのみらしいよ。『世界樹の国』だと羽織ってる人もあまりいないみたい。
「前にユリエルに聞いてみたんだ。なんでローブ着てるの?って」
『苦労が減る』←とある理由
「サキュバスも裸足で逃げ出したくなる様な顔だものね…気持ちは何となくわかるわ」
ほー…異世界流の言い回しだが、ユリエルさんモテモテらしい。
ローブを着ていれば男性寄りの人からは暗黙の了解で口説かれる事は無くなるので、確かに苦労は減ったみたいだ。
ユリエルさんの話はこの位にして、この国のトランスジェンダーや『性別不合』の人はどうしてるのか聞いてみた。
『性別不合』の様に身体の性別と心の性別が一致しない場合は、特殊な医療用の魔道具を使って両親同意の元で胎児の時点で心の性別に合わせる施術を施すらしい。
しかし、心身共にユリエルさんの様にどちらの性とはっきりしない人や、混じっている人もいるみたいだ。
その場合や本人の意思を尊重する時は、生まれてから自分で性転換手術を受けるかどうか決めるらしい。
大体の人は施術を受けてもほぼリスク(生殖能力の減退等)の無い20歳までにどうするか決めるみたいだ。
性転換しても生殖可能なのは凄い医療技術だよね。元男性が妊娠して出産も出来るのか……異世界凄い。
んー………日本の価値観だと生まれる前に本人の了承無しに性別変えちゃうってどうなんだろう?と思ったが、今のところ胎児の時に性転換の施術を受けて元の性に戻りたいと言った人は、カイザス国内では500年の中で2人。
その方々は、胎児の時にこころと身体の不一致の数値が当時の基準ギリギリで性転換の手術を受けたために、病院側が賠償したそうだ。その事をふまえて最近基準の見直しをしたみたい。
「後、カイザス国は同性愛者の人には厳しいかもしれないけれど、どちらか片方の血縁者の養子がいないと結婚出来ない」
カイザス国の結婚は基本男女のみ。
同性の場合は養子縁組して、土地や相続をハッキリさせないと認められない。その代わり、種族がどのペアでも結婚が認められている。
人族の国『神聖帝国』では同性婚OKだが、人族同士じゃ無いとそもそも結婚は出来ない。
獣人族の国『ベスティア国』では同性婚OKだが、パートナーの片方が獣人族じゃ無いと結婚出来ない。重婚可。
ドワーフ族の国『フォーゼライド国』で結婚出来るのはドワーフ族の男女とドワーフ族が含まれない同性婚を国が受け入れているらしい。王侯貴族は重婚可。
エルフ族の国『ハイルング国』ではエルフ族の男女が結婚可能。詳細不明。
………細かい。国ごとにこんなに違うのかー。
「ゴブリンのスタンピードの所為で人口が激減しちゃってね。人族と獣人族は大分増えたけど、ドワーフ族と特にエルフ族は被害甚大だったからね」
スタンピードが100年前なので当時生まれたエルフ族の子がやっと成人した位だと言う。
人族と獣人族は増えたと言ってもエデン全体で見ればまだまだ人手不足なので、エデンとしてはなるべく子どもを産んで育てて欲しいそうだ。
国にもよるが、条例でパートナーシップ制など導入している所もあるそうで、国や地域ごとに同性婚や異種族婚も違うみたい。
城壁内だからあまり感じないが、この世界にいる魔物の被害による種族人口の偏りが今現在結構深刻みたい。
ー
つばめ「他種族で結婚すれば人口増えそうですけど…」
コンスタンティン「種族や国家間の問題とかあるけど…つばめ、動物を思い出して?何種類位頭の中に出て来るかな」
つばめ「いっぱい?」
コンスタンティン「いっぱい専門医とかが必要にならないかな?」
つばめ「なりますね」
皐月「獣人族と他種族で子どもが産まれると、さらにその分小児科とか専門的な子育て支援を増やさないといけないと思わないかしら?」
つばめ「思います」
コンスタンティン「残念ながら専門的となると獣人族の国とカイザス国しか医療や教育が難しくてね」
つばめ「なるほど…」
※トイレの話しばっかりだと本当トイレの話し永遠と続く感じになってしまうので、また大分先の方に詳しく説明入れます。ちなみに、パンツの話しはちょいちょい出てきます。
※あくまでも異世界の物語上の設定です。ご了承下さい。