表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『コミック最新巻、7月8日発売!』落ちこぼれ退魔師は異世界帰りで最強となる  作者: 秀是
第十三章 京極一族編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/251

第九話 試練への挑戦


 夜が明けて次の日、朱音と渚は次の修行に入るために、日が昇ると同時に修行場へと赴いた。今日の修行はかなり厳しいものになるとだけ真夜には伝えられていた。


 朱音も渚もどんな内容かは真夜には伝えなかった。これは反対される可能性を考えてのことか、あるいは真夜に心配をかけないためか。


 どちらにしても真夜は二人の修行に口出ししない約束をしていたため、気にはなったが頑張れと言うだけに留めた。自分のために強くなろうとしている二人を信じようと真夜も思ったからだ。


 そんな真夜は二人と別れると右京に呼び出されるまで、と言うよりも約束の時間までの間、今日からの方針を改めて考えることにした。


(京極家初代の試練。右京さんと雫に聞いて、内容によっては付き添いも考えるか)


 朱音や渚の行う修行よりもさらに上の試練。誰も達成した事の無い試練に一人で挑むであろう雫。あるいは右京も一緒に挑むのかどうか。昨日は試練の内容まで聞いていなかったが、死ぬ可能性も高いのならば、きちんと話をする必要がある。


(渚の異母兄姉達の問題は一応はある程度の解決はしたしな。宗家の問題を右京さんがどう考えてるのかも探る必要があるか)


 清彦やその子供達はまだ比叡山に滞在している。元々二、三日はいるつもりだったとのことで、清貴達は後遺症が完全に消え、力が戻ったかを確信させるためにも、またもう一段強くなるために比叡山の修行場で修行すると今朝に清彦から連絡を受けた。渚や朱音とは鉢合わせにならないように配慮はしてくれているようなので、真夜としては一安心だ。


(あの三人は大丈夫そうだしな。まだ増長するようなら叩き潰すだけだけど、渚の親父さんも大丈夫そうだって言ってたから、問題はやっぱり右京さんの方だよな)


 真夜は昨日一日である程度右京のことを観察していた。察してくれと言っていたこともあり、様々な可能性を考えると同時に右京自身に何か良からぬ事が起こっていないかも、相手に気付かれないレベルで霊視を行った。


 その結果、朱音や渚には伝えなかったが、右京には何かが憑いているのが朧気ながら感じ取れた。ルフを直接召喚して調べてたわけではないので確信には至っていないが、その可能性が高いと真夜は思っている。


 ただ憑いていると言っても、悪霊や邪霊などの悪い気配はしない。むしろ守護霊やそれに近い存在のようにも思えた。その正体を完全に看破するには、やはりルフの協力が必要だろう。


(下手に藪を突いて面倒な物を出したくも無いが、先にこっちから動く方が無難か。特に悪い気配はなかったが……。くそっ、情報が足りなさすぎるな。本格的に親父達の手を借りるのもありか)


 昨日は清彦や他の面々も近くにいたため、強攻策には出れなかった。朱音や渚の事もある。真夜自身トラブル体質なのは嫌というほど自覚しているので、何かをするにも万全の体制で臨みたい。


 朝陽や明乃に定時連絡として状況を伝えて、意見をもらってから行動する方が何かあった時は対応がしやすい。


 それに右京の察してくれとの言葉や憑いているモノや雫の存在。謎を解くためのピースが少なすぎるため、真夜もいくつか予想は立てられても、答えを得ることが出来ないでいる。


 さらに強引に行動に出て良いものかと僅かなためらいもある。


 だが昨日の右京の行動は、どう見ても京極家を混乱させる行為でしかない。真夜が協力したからこそ、上手くいったものの……。


(……待て。昨日は結果的に俺がいたから上手くいった。もしいなければ下手すれば京極家が割れていたかもしれない。だからか? あそこまで強引に俺を引き込もうとしたのは? まさか俺がいることを前提にして動いていた?) 


 真夜は昨日の右京の行動を思い返し、一つの考えに行き着いた。まるでそうなるような事がわかっていたような右京の行動。どこまで予想通りでどこまで予想外だったのか。昨日の右京の様子では、完全に想定通りという反応では無かったように思えるが。


(答えはわかっているが、その過程がわかっていないみたいな感じか? 予言? それとも神託の類か? あるいは限定的な未来予知? 異世界でも何回かそう言う手合と出会った経験はあったし、そう考えると辻褄は合うが……)


 異世界では未来予知を行える存在が僅かに存在した。数秒から数分だが未来を見る敵もいた。神からの神託という形で、聖女も真夜が召喚される際はその存在を教えられていたという。


 また退魔師の世界にも過去には、未来を見る事が出来る先詠みの巫女などという存在もいたとされている。


 右京もそれに類する能力を持っているのか、あるいは憑いている存在が影響している可能性もある。


(確定は出来ないが、ある程度の絞り込みは出来るか。京極家の問題にあまり首を突っ込みたくはなかったが、乗りかかった船だ。元々最後まできちんと対応するつもりだったし、できる限り穏便に契約を完了させたいからな)


 まだ右京が京極家に対して良からぬ事を考えている可能性もある。真夜の予想が外れており、真夜を引き込んだのは清貴達を巻き込み、京極と星守の協力体制にヒビを入れるための騒動を画策したからと考えることも出来る。


 右京から嫌な気配は感じないが、胡散臭いのは間違いなく裏がないとは言い切れないので、楽観的に考えるのは禁物だ。


(釘は刺してるから下手なことはしないと思いたいが、もう一押ししておく必要はあるか。それに雫の方もだな)


 まだ出会って一日だが、真夜としても海のようなタイプに思えて放っておけない。彰のような一面も見られるので、放置すると面倒な事にもなりかねない。


(まっ、出来ることからするか。まずは右京さんに改めて探りを入れてみるかな)


 時間になり、少し離れた所から元気よくこちらに向かい名前を呼ぶ雫と、苦笑しながらやってくる右京の姿を視界に収めながら、真夜はもう一度気合いを入れ直しながら、二人に挨拶を返すのだった。



 ◆◆◆



 修行二日目、渚と朱音は今日は戦闘が行える服に着替え、比叡山の山中にある、とある洞窟の前にやって来ていた。


「ここですね。霊器使いにしか使用が認められていない洞窟は」

「結構な霊気を感じるわね。ゾクゾクするっていうか、ヒリヒリするって言うか」


 洞窟の奥から流れてくる独特の気配に、感覚派の朱音は今までに感じたことも無い気配に緊張を高めていた。


 入り口には小さな祠と石碑が建てられており、京極家初代当主も修行したと言われている洞窟である。


「朱音さん、気を引き締めていきましょう。京極家初代の試練ほどではありませんが、ここも下手をすれば大怪我では済みません」

「上等! それくらいでないと真夜には追いつけないし望む所よ」


 渚の言葉に朱音は強気で答えると渚も同意するように頷く。


「では行きましょう」


 二人は洞窟の中を進んでいく。中は明るく光が続いている。地脈に流れる霊気を光に変換しているのか、常に明るくなっている。


 奥へ進むと、巨大なドーム状の空間が広がっている。その中心部には台座が鎮座し、そこを中心に五芒星に描かれた陣が敷かれ、そこから半径十メートル以上の円が囲んでいる。


「ここがそうなの? 結構身体に掛かる負荷があるわね」

「はい。ここは一定以上の実力がなければ、まともに立っている事もままならない場所です。その中で行う修行ですが他の人も見学できます。基本的にあの中で一人で行いますが、どちらが先に挑戦しますか?」


 渚が台座の方を見ながら朱音に問うと、朱音は後で良いと告げる。


「これも修行だし、渚の挑戦を見学させてもらうから」


 負担により消耗しても、必ずやり遂げる気概と自信があるからこそ朱音は渚に先を譲った。


「わかりました。ではお先に」


 渚は一人円の中へと入っていき、台座の前に立つと霊器を顕現させる。そして自らの霊器を台座の上に置くと両手を側面に沿わせる。


「っ……」


 両手の平から渚の半分近くの霊力が台座に取り込まれると、台座が音を立てて床へと沈んでいく。完全に台座が沈みきると、描かれていた五芒星が光り輝く。


 そして彼女の眼前に光が収束し、段々と姿が変わっていく。それは光り輝く渚と同じ姿の存在だった。光の渚は台座と共に地面に降りた霊器を無造作に掴むと、彼女から一定の距離を取り構えた。


「あれが!」

「そうです! これがこの修行場の試練! 自らの霊力を与え作り出した自分自身を打倒する! ただし相手は己の霊器を持ち、自らは使わないでの状態で!」


 どの年代に作られたかは定かでは無い上に他に類を見なく、他の霊地や六家でも同じ物は存在しない。誰が、何の目的で、どのような術式を使いどうやって作り上げたかも不明。現在では再現すら出来ないオーバーテクノロジーだが、京極家はこの陣を長年保全、維持してきた。


 この試練は台座に霊器を置かなければならないので霊器使いにしか起動させられない。光り輝く己の分身は霊器を手にするからこそ、その姿形が維持し続けられる。


 そしてその相手を打倒しなければならないが、霊力の半分を相手に渡し、さらに自らは頼みの霊器が無い、霊器使いに取っては枷をはめられた状態での戦い。


 相手から放たれる力は霊器により増幅されており、自分の分身では無く完全な格上となる。さらにこの陣は当人の戦い方を完全にトレースする。これは霊器が、己の霊力と魂の一部を使い具現化されているものであったとされ、その情報を元に再現されていると言われている。


 とにかく、渚にとっては、またこれから挑む朱音にとっても厳しい試練になるのは間違いない。


 朱音も渚も、式神などを含めて他の一切の装備は持ち込んでいない。持ち込んではいけないと決まっており、自らの身一つで逆境をはね除けろと言う試練に他ならないからだ。


 朱音は予め聞かされていたとは言え、この試練のえげつなさに一筋の汗を流す。


 霊器使いが霊器を使えず、自らの写し身と命を預けてきた武器が敵となり立ちはだかる。しかも自分は他の得物も持ち込めない。あまりにも勝率が低すぎる。


(確かにこれは厄介な修行よ。京極家の人間が挑もうとしないのも納得だわ)


 唯一の救いは死ねば特殊な術式により、洞窟の入り口の祠の前に強制的に無傷の状態で転移させられるため、陣の中では実際に死ぬことはない事だろう。


 ただし大怪我、それこそ手足がちぎれても転移はしないし、その状況を打開しようと自らの意思で命を絶った場合も発動しないという、どうすればそんな術式が組めるんだと関係者が叫ぶような仕様である。


 まあ瀕死の状態でその場に留まり、時間経過で死ねば転移されるのでその手は使えるが、一定時間を経過すれば陣の霊力が消失してそれすらできないという鬼畜仕様でもある。


 だから甘い考えで、生半可な覚悟で挑んではいけない。一度発動すれば試練に成功するか失敗するかしなければ終わらない。


 この修行を受けると聞かされた清彦は、当初は強く反対していた。それはそうだろう。修行とは言え死ぬ可能性がある類いの物だ。和解した今、簡単に頷けないのも無理は無い。しかし渚は説得した。


 渚は自分を信じてくださいと清彦に言った。それが決め手となり、清彦は渚を信じ許可を出した。


 だから渚はそんな清彦との約束を守るためにも、また最愛の真夜に少しでも近づくために、必ずこの修行をやり遂げると決意している。


 挑戦する者も、見守る者も含め、精神的にプレッシャーは果てしない。後続の者はやめる選択肢も取れるが、


 先に試練に挑む渚には恐れは無い、それを見守り後に続く朱音も同じだ。


 朱音もここで逃げ出す選択肢を考えるようならば、そもそも最初から挑もうとはしていない。どんな危険な修行であろうとも、それくらいしなければ真夜の手助けをするための強さを得ることなど無理だと腹をくくっていた。


 渚は目の前の霊器を持つ自分の写し身に対して、自らの霊力を刀の状態にして構えて対峙する。


(高難易度の修行だけありますね。自分の欠点は理解しているつもりですが、資料によれば写し身もそれに対処してくるとありますし)


 渚の得意の式神を相手が使わないのはまだ救いだが、自分も使えないのに対して、相手は霊器を持ち、増幅して渚と同じ様々な霊術を使用してくる。同じだけの霊力でも霊器があるのと無いのでは、その優位性は段違いだ。


(けれども泣き言は言ってられませんね。わかっていて自分が挑むと決めたこと。それに、この程度の不利で泣き言を言っていては、真夜君の手助けなど出来ない)


 渚は霊力を高めると同時に鋭い眼光を写し身に向ける。


 己自身であっても、否、己自身だからこそ、絶対に負けるわけにはいかない。


「行きます!」


 渚は霊力の刀を握る手に力を込めると、一気に写し身との距離を縮めるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
異世界にも似たようなタイプがいたとはいえ答えにたどり着くのは流石だな 縛りプレイで自分の上位互換を倒すか…ここで得られた物が初代の試練に役立つようにできてるのか、それとも単純に実力向上に役立つ修行場…
更新お疲れ様です。 次の修行に向かう渚と朱音を”頑張れ”の一言だけ添えて、2人を信じて送り出す。 なかなか出来ない事だと思いますが、真夜は、この辺りの心の持ちようもあちらの世界で鍛えられたんでしょう…
上位互換相手だからこそこの場で打開策を見つけられなきゃならんのキツいなぁ…。 事前に仕込もうもんなら逆に利用されるだろうし、そら高難易度ですわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ