血の繋がり
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「ついたぞ、ここが私の里だ」
「ここですか、闇狼の里。いい景色ですね、ユー君!」
「ああ。そうだな」
あれから俺たちは次に行く町を決めるはずだったのだが……。
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「それでユド、どこに行きたいんだ?」
「どこに、というわけじゃない。どちらかと言うと戦力を高めたい」
武器は――この槍があるか。リルもよさそうだ。
「戦力、か。私はお前に協力するが、それでも足りないのか?」
「ああ。俺が、強くならないとあまり意味がない」
「では修行だな。……よし。私の里に来るといい」
「え?!ナクルさんの里ですか?やったー!」
おい。
「では早速行くとしよう」
おいおい。
「ちょっと待ってくれ」
「ユー君、何ですか?何か不満でもあるんですか?ナクルさんの里ですよ?」
うん。それは分かってるから、リル。
「何だユド?」
「ああ、なぜ修行をするのにナクルさんの里に行くことになるのか教えてくれ」
「分かった。一つ。私の里には何人か、他の里のやつらより強いやつがいる。お前の相手にふさわしいだろう」
「二つ、私は龍族の友がいると言ったな。どうやら昔から闇狼は龍族との交流があったようで、龍族についての資料が多数保管されている。何か新しい力を手に入れる手掛かりになるかもしれん」
「三つ、私が家に帰りたい」
うん。最後のは関係ないがなるほど中々にいい環境であるらしい。
「分かった。闇狼の里に行こう」
家に帰りたい、か。この町に長い間縛られていたのだろうか。
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本当は町に行きたかったのだが……。
その分町では出来ない効果のある修行であることを願おう。
「ユー君、どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
里は町とは違い、沢山の、木で作られた家や、施設。そして畑などが広々と広がっていた。
「なんか森の中を思い出すな、それほど時間は経っていないがな」
「そうですね。なんだか、同じ雰囲気を感じます」
俺たちはこの地に溢れている自然エネルギーを感じていた。
「二人とも、着いたぞ。私の家だ」
ナクルさんは何故か凍り付いたように動かぬ笑いを浮かべていた。
ここが、ナクルさんの家。これは……森で俺が作った住処と同じ形。
「なあ、ナクルさん。これは……」
俺が言い終わる前にナクルさんは俺の背後に。
それから背中を押して家の中に俺たちを押し込んだ。
「ナクル!いるんだろう?!出てこい!」
家の中に入った途端怒鳴られた。
かなり歳だろうか。白髪、白髭のおじいさんだった。
「お、おじい様……?もう少し静かにしてほしいのですが……」
そう言いながらナクルさんは俺たちの後ろから姿を現した。
「ナクル!早く!家を作ってもらおうか!」
家?!
「わ、分かっています。私は町に出て色々な建物を見てきました。必ず素晴らしい家を建てて見せます」
ナクルさんは凍り付いた笑顔のままそう言った。
「そうか!ならば早く建ててもらおう!わしが折角広い土地を手に入れたのに、今だ家が建たず子供たちの遊び場になっておるわ!」
「は、はい!行ってまいります!」
そう言ってナクルさんは飛び出していった。
う~ん。どうもこの村のことが分からない。
「あ、あの……」
リルが声をかけようとすると、
「む?なんだこの者たちは!」
と、おじいさんは、初めてこちらに気づいた様子で俺たちを睨んだ。
ナクルさんは俺たちの後ろから出てきたのに……。
「あの~村長?この者たちはナクル様のお連れ様かと……」
と、おじいさんの横にいた青年は耳打ちした。
村長?!こんな所に村長が住んでいるのか……。確かに早く家を建てて欲しい。
「そうか!お前たちはナクルのなんじゃ!答えい!」
この爺さん、勝手に話をどんどんと進めるなぁ。これで村長勤まってるのか?
「私たちはナクルさんの友達です!」
リル、流石に早いな。
「そうだ。俺たちはナクルさんのとも……仲間だ」
「ん?友か?仲間か?どっちなのだ?」
俺は、友、なのだろうか。リルは間違いなく友だと思うのだが……俺はどっちだろうか。う~ん。
リルは私たちと言っていたが……。
そんな俺の思考の間にリルは答えた。
「私たちはナクルさんの友達です!」
まあ、そうだな。今はどちらでもいいだろう。
「そうか。友であるか。では歓迎するとしよう」
良かった。この里の者以外を置いておけるか!なんて言われたらまたリルとあてもなく歩くしかなくなる。
「村長さん、質問してもいいか?」
「いいだろう。なんだ?」
横からは「村長にため口とは!」とか聞こえるけど気にしない。
「ああ。何故ナクルさんに家を作らせるんだ?大人たちが勝手に作ればいいじゃないか」
「そう、思うか。なるほど、外の者は考え方が違うのだな」
お前たちの方が違うと思うんだが……。
「で、理由はなんでなんだ?」
俺が聞くと村長はゆっくり答えた。
「掟だ」
「掟、か。それはどういう掟なんだ?」
「そうだな。簡単に言うと、里の娘は20になる歳に一軒家を建てる。そして息子は家を建てるための土地を開拓、または発見する。という掟だ」
……と言うことは、村長さんが手に入れたと言っていた土地は相当長い間そのまんまって事か。
「何故そんな掟が?」
「わしにもよく分からん!」
だろうな。
村長が、そう言ったのを聞いた青年は横から、
「一人の大人となった。ということを証明する儀式のようなものです」
と、説明した。
「そうだったのか。ナクルさんって今何歳なんだ?」
「そ、それは……」
と青年は気まずそうに村長さんの方を向いた。
すると、
「わしは忘れた。言ってやれ。むしろわしが聞きたい」
と、言った。
全くこの人は……。しかし、何か憎めないというか。
これが、村長の気質というものなのだろうか……。
「それでは、申し上げたいと思います。ナクル様は……。今年で25歳でございます」
ほう。大分、待たせていたようだな。
「ガッハッハ。全くナクルのやつ、随分と待たせてくれたもんだ。しかし、ナクルの作った家ならばそれだけ待つ価値があるな」
村長はそう言ってまた、大口を開いて笑い出した。
「少しいいか?」
「はい、何でしょうか?」
この青年はさっきからずっと村長さんのそばにいて色々手助けしていた。
村長さんの、側近とかなのだろうか……。
「お前はどういう立場なんだ?」
「はい。私は、ナクル様の結婚相手として選ばれたものでございます」
予想外の答えであった。