瀧川晃生の疑問②
何時もお読み下さり有難うございます!
今、目の前にいる意志の強そうな薄紅色の瞳をした男は、みなの為に御礼だと言って料理を振る舞ったり、加賀や晴に血を提供している。
8年前のあの時の子供とは、明らかに違う善良さだ。だが、簡単には信用できん。
それから
「あの、俺、人間には無いヴァンパイアの能力を見てみたいです!」薄紅色の瞳をキラキラさせながら前のめりに言う上坂。
上坂の言動に吃驚し、俺は思った事をそのまま口に、出していた。
「上坂は怖くないのか?」
晃生は思わず、アメジストの瞳を麗に向ける。
人間達はすぐに恐れる。自分達の想像を超えたり、異形の者に対して畏怖を抱く。
「いや、全然!怖くないです。自分には無い物なので、寧ろ憧れます!迷惑で、無ければ見てみたいです!」薄紅色の瞳を見開き興奮させて言う上坂に拍子抜けする。嘘偽りの無い上坂の薄紅色の瞳が俺の目に映る。
上坂の瞳は、あの時の子供と同じ瞳に違いない筈だが、あの時の濁った瞳ではなく、今は澄んだ瞳をしている。
晃生達が実際に、
ヴァンパイアの能力で一っ飛びした時も怖がるどころか、
上坂は賞賛を口にする。
森口ひなは少し驚いていた様だが、それが普通の反応だと思う。
上坂は今までの人間とは少し、違うし、勇気がある。それは認めよう。だが、上坂の幼い頃を知っているだけに、まだ完璧には、信用できない。
そう思っていたのだが...。
昨夜、過激派駆除に向かった帰り、彩世は智美を攻撃してくる過激派から庇い、重症の傷を負う。
あの、強い彩世が傷を負うとは、傷はかなり深い。俺は動揺してしまう。
そんな時、サクッと茂みを踏む音がする。そして、嗅ぎ覚えのある良い血の匂い。
姿を見なくとも誰かは一瞬で分かる。
「大丈夫ですか!?」と駆け寄ろうとする
上坂がいた。
彩世の役に立つ気が有るのかどうか分からない者に今の彩世を近づけたくない。
「今彩世は血が欠乏状態だ。今上坂が来たら、君を彩世は襲いかねないくらい危険な状態だ。」危険は本当の事だ。
上坂は一瞬立ち止まっていたが、直ぐに
「大丈夫です!」と叫ぶ。
大丈夫!と生半可な気持ちで言ってもらっては困る。大丈夫と言うからには、その血を彩世に寄越す気持ちがなくては!
「大丈夫じゃ無いから言っている!」晃生や
智美は説得する。
にも関わらず、上坂は更に距離を詰めて、驚くべき事を言う。
「俺の血貰ってください!彩世さんには血が必要な筈です!」上坂は真剣な表情で訴える。必死な気持ちが伝わってくる。俺は、彩世を助けたいと切望していた事だが、上坂自身は怖くないのか?
その表情は躊躇う事もなく。
恐れてもいない。
「大丈夫です!男の血で彩世さんは不満かもしれませんが、言ってる場合じゃありません!こんなに酷い傷なんですから!」上坂は淀みなく言う。その決意は堅い。そう言っている間にも彩世は苦しそうにしている。一刻を争う。彩世に血を分けてくれるのは願ってもない事だ。
彩世は必死になって抵抗するが、一刻も早く、彩世には回復してもらいたい。
俺は上坂の申し出を今直ぐに受け入れるべきだと思った。
「兄上!麗が折角言ってくれてるんだ!
こうなったら、''血と涙の盟約''(Tears and Blood compact)をしたらどうだ?」と智美が彩世に提案する。
上坂にとっては未知であろう盟約をあっさりと受け入れる。上坂の勇気に感心する。
上坂は無償で彩世を助けようとするのか。善良にも程がある。
前言撤回する。昔がどうあれ、今の
上坂は慈悲深く、信用に値する人物だ。
了承の返事した上坂に俺は、血の盟約について説明する。
今の彩世が上坂の血を直接採血するのは、危険だと言う事を伝え、俺が上坂の指に牙を立てる事になった。
上坂の指にぷつりと噛み付くと甘い香りが濃くなる。今は、上坂の血に酔っている場合ではない。
彩世が上坂に襲い掛からない様に俺は、再び抑えつける。
上坂の指から血がぷっくりと出る。
正直、とても食欲のそそる匂いだ。
俺は血と涙の盟約が結ばれると速やかに、
彩世の部屋から彩世の着替えを取りに行く。
一刻も早く、いい香りのする上坂から離れたかった。理性が保たれている間に。
その時、牙に微かに付着した上坂の血を舐めとった。
微かに味わった上坂の血の味は、8年前に想像した通り、甘い味わいだった。
この血を舐めた後、俺は理性を抑える為に暫くの間、自身の部屋の輸血パックで血を補給した。
本日も最後までお読み下さり有難うございました!




