客間でのヴァンパイア達
冒頭で6行ほど、少し血が出てきます。苦手な方は、飛ばして下さい。
客間を麗とひなが出て行った後、
西園寺彩世は、自身の細く長い指先に、鋭く尖った牙をぷつりと突き立てる。
指先からは赤い血が、プクゥッと膨らんで出てくる。その血がプクプクと音を立てて、
そこから、黒くなり、形が生まれる。見る見るうちにコウモリの姿になっていく。
2匹のコウモリが出来上がる。「さっきの黒頭と栗頭を追え。」とコウモリに命じる。
コウモリは微かに一礼をし、パタパタと扉を擦り抜け、麗とひなの後を追う。
「彩世、あの子達を匿うんだね。」一条征史朗が言う。
彩世は、血が滲み出た自分の指を赤い舌で舐めながら、
「ああ。あいつらの匂いは極上の香りがする。特に栗毛の女、ひなだったか?今までに感じた事のない、特別な甘い匂いがした。もしかしたら、あいつは『女神の血』の持ち主かもしれない。思わぬところで、さや達の手柄だな。」
そう言い終わると、指先の血は止まり、スゥーーッと傷口が塞がっていく。数多く有るヴァンパイアの能力の一つだ。
但し、これだけ早い回復は、ヴァンパイアの中でも、最も能力が高くないと出来ない。
「そのようだね。僕も近くで話したけど、この間の話の『女神の血』の持ち主かもしれないね。」と征史朗が返す。
「ああ!さっきの天使ちゃん!近くで嗅ぐと流石の俺も、匂いで酔いそうなぐらい、甘美な香りだったよ。」とうっとりと
ヘーゼル色の瞳(ライトブラウンと緑が合わさった色)を細めて朝倉加賀が、ダークゴールドブロンドの前髪をかき上げた。その、艶やかな仕草にトキメク者は、この場には誰も居ない。
すかさず、癖毛のストロベリーブロンドをふわふわさせて
「晴もだよ!久しぶりにクラクラしたよ。ま〜黒髪の奴も凄く良い匂いだったけど......って言うか、
加賀、さっきは可愛い子ちゃんで、今は天使ちゃん、呼び方がコロコロ変わるんだね。まっ、どぉでもいいけど。」普段の天使に似つかわしくない言葉を口にした後ニッコリ笑う。
「まぁ、お陰で『女神の血』の奴を探す手間が省けたな。栗毛女をこの家に匿うぞ!」そして、溜息を吐きつつ
「はぁ。非常に不本意だが、黒髪頭も匿う事にした。男に興味はねぇが、あいつも、それなりの香りがするからな。
『過激派』(人の血を欲望のままに吸う。人を殺してしまうヴァンパイアの事。)
に狙われるのは、時間の問題だ。」赤褐色の髪を掻く。
「彩世は優しいね。」碧眼の瞳を優しげに細めた。
「あぁ!?ちげぇ!単に、貴重な俺たちの飯(血)をみすみす敵に渡したくないだけだ!只、それだけだ!」
「フフッ素直じゃ無いんだから。彩世は。」征史朗は楽しげに笑う。
「はあ!?からかうんじゃねぇ!」と彩世は怒鳴る。
「俺は、黒髪の黒猫ちゃんも大賛成だね!」またもや、加賀が、ヘーゼルの瞳を細めて艶っぽく笑う。
「も〜加賀は綺麗な子だったら、男でも良いの?はぁ、キモイんだけど...」ジト目で、
晴一は普段のソプラノ声とは、打って変わって、低音で毒を吐く。
「晴一は分かってないな。まぁ、これから面白くなりそうだな。」加賀は笑いながら言う。
「ほどほどにするんだよ。さやの大事な友達なんだから。」紳士な征史朗は、フォローする。その言葉に、
「そうですわ!わたくしの大切なお友達に無礼を働いては、許しませんわ!」サラサラの銀髪を揺らして、麗とひなを門扉まで送り届けたのか、客間に入ってくる。
「大丈夫だよ。手加減はするから!」ウインクしながら加賀が言う。
「本当に分かっているのでしょうか?」と
さやは問い質す。
それを傍目に、彩世は
「しかし、黒髪の上坂麗だったか?あいつは油断ならねぇな」と1人呟くのだった。
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