謎の眩み 彩世視点
何時もお読み下さり、有難うございます!
加賀が去って行って、何故か俺はホッとする。
彩世は、まだ麗を後ろから、腕の中に囲い込んでいた。
「あ、あの!もう大丈夫ですから!」上坂は
俺の方を向こうと首を捻る。
上坂の薄紅色の目が合うと、まただ。薄紅色の瞳は綺麗に輝いて、
クラクラする様な眩しさに見まわれる。
それから、
ドクンッドクンッ
謎の動悸が始まる。
俺は思わず、上坂から視線を逸らしてしまう。
この動悸が始まると、上坂の目を合わしづらくなる。
そして、何故か俺はまだ上坂を放したく無い。
ずっと腕の中に閉じ込めておきたいそんな衝動が出る。昨日の盟約後、上坂に触れると安心する。だからか?
だが上坂の顔が仄かに赤い気がする。俺が強く抱きしめ過ぎていたせいで苦しかったんだなと納得する。
「あ、ああ、悪い。苦しかったよな。」俺は言葉とは裏腹に腕を解いた。
上坂は正座の体勢で俺の方に向き直る。
「い、いえ大丈夫です。気にしないでください。」と否定する。
「ああ。...その、具合は平気か?」改めて尋ね、彩世はトパーズ(金)色の瞳を揺らめかす。
本来、俺は男に対して、具合を心配する事はあまり無いが、
上坂だけは、何故か無性に心配になる。これも、盟約の所為なのか?
「はい!問題無いです!」と俺に薄紅色の瞳を細めて笑う。また、輝いて見える。
「あっ!それから、昨日、俺気失ってから、運んでくださったの彩世さんだったんですね!有難うございました!傷もあるのに!」思い出した様に言う
上坂。
「何で知って...?...ああ。加賀か!」あの時か!帰り際に上坂に呟いていたあれか!と納得する。
「はい。帰り際に俺に耳打ちしてきました。
俺、重かったですよね!?」
別に、寧ろ軽すぎて心配した程だと俺は思う。
「改めて、ここまで彩世さんも負傷してたのに、運んで下さり有難うございました!」彩世の金色の瞳を真っ直ぐ見て言う麗。
その真っ直ぐな瞳をまともに直視して又もや目が眩む。俺の目は一体どうなってるんだ?
ドクンッ
後、この動悸は何なんだ?
「いや、元々は俺がお前の血を吸いすぎたのが発端だ。悪かった。負傷した箇所も塞がった。」さっきから上坂を見る度、目がくらむ程輝いて見える。何なんだこの謎のエフェクトは?目を合わせられない。それに、胸の鼓動も速くなる。こんな、ごちゃごちゃ考えて、俺の性に合わねぇ!
俺自身の事が、分からない。むしゃくしゃしてくる。
「血と涙の盟約の件も悪かったな。」
「大丈夫です。あれは背に腹はかえられない。彩世さんの命が大事です。それに、俺こそ、俺の血で不服だったかもしれません。悪かったです。」ニッと笑う麗。
俺は一瞬固まる。すっかり忘れてたが、当初こいつの血を馬鹿にしていた。後悔先に立たず。上坂には凄い悪い事をした。失礼な発言をした。それにも関わらず、上坂は俺に血をくれた。心が広い親切な奴だ。何故か胸の辺りがジンと温かくなる。上坂には借りができてしまったな。
始めこそ馬鹿にしていたが、上坂の血は悪くない。男の血だと言う事を忘れる程に。
「お前の、血は、悪くなんか無い。寧ろ助かった。当初、お前の血なんて貰わねぇって言っていたが、世話になっちまったな。情け無ぇ事をした。悪かった。お前の血がどうのこうのじゃなく、男の血に抵抗があっただけだ。失礼な事を言って悪かったな。」と頭を下げる。
「大丈夫です!気にしないでください!何となく、吸血行為は異性で行うイメージがありましたから!」優しい上坂は無理矢理フォローを入れる。
だが、少なからず当たっている。
異性同士で吸血を行った方が、より美味しい血になると言われている。ヴァンパイア界では、古くから伝えられてきた。
俺らヴァンパイアは自分で言うのもなんだが、人間を惹きつける様に見た目が良いらしい。惹きつける事においては、食虫植物みたいだな。異性だと幸せホルモン(オキシトシン)が出て、より美味い血になるのだとか。
「上坂は男だが、お前の血の味は悪くない。寧ろ美味かった。」男の血だと言う事を忘れる程に上坂の血は美味い。
皿洗いの時、上坂の血を舐めて美味しいと感じ、吸血欲を抑えるのが大変だった。そして、血と涙の盟約後も夢中になって飲んでしまった。盟約が無かったら
上坂の命が危なかったかもしれない。
加賀は兎も角、晴が気に入るのも頷けるぐらい。そしてかく言う俺もお前の血の味を気に入ってしまった。昨日の皿洗いの時は認めたく無かったが、認めざるをえないぐらい。
「それは、光栄です?」と上坂は思わず、疑問系で返す。
何故疑問系なんだ?一々面白い。僅かにフッと笑ってしまう。上坂は思いもよらない、
拍子抜けする様な事を言うが、それが俺には気兼ねなく話せる。話を次に繋げやすくなる。安心する。
「厚かましいとは思ってるが、また、これからも血をくれるか?」と俺は瞳を真剣に上坂の薄紅色の瞳に向ける。
「はい!もちろんです!俺の血を貰って下さい。晃生さんにも説明を受けましたが、血と涙の盟約ではどの道、巴紋が消えるまで2日に1回は血の提供をしないといけないんですよね!?」上坂の薄紅色の瞳を真剣に俺に合わせてくる。
こんな時でも上坂がキラキラして見える。
心臓の動悸までも激しくなる。
俺の目と心臓は病気か?
「ああ。そうだ。巻き込んじまって、悪いな。」と力無く言う。
赤い巴紋が目に入ると昨夜の光景をまざまざと思い出す。昨夜は、躊躇わず思いっきり吸ってしまった。そう思い出すとまた、罪悪感が出てくる。
「気にしないでください!乗りかかった船です!俺の血で良ければ、飲んで下さい!何なら今、どうですか?」と笑顔で言う上坂。良いやつ過ぎる。そんな綺麗に笑う上坂に見入ってしまう。
「助かる。だけど、今は大丈夫だ。...お前は今、貧血だろ?盟約相手が貧血気味の時は血の摂取はしなくてもいい。その巴紋の温度が他の部分の皮膚の温度に比べて、低くなる筈だ。」彩世はそう言って麗の腕を持ち上げ、巴紋に触れる。
「ん。」と上坂にも触る様に促す。
上坂が、巴紋に触れると感心した顔をする。
「わ、体温が違う。本当に低いですね!」
上坂は笑う。何つー危機感の無い。
「俺が言うのもなんだが、お前危機感なさすぎだろ!?この紋の温度が低ければ低い程、命の危機なんだかんな!」と俺はつい怒鳴ってしまう。本当にこいつは危なっかしい。俺が近くで観とかねぇと。
「はい!肝に銘じます。」と真剣に言いつつ口の端が上がっている。本当に思ってんのか?怪しい。
「何が面白いんだ?あのな、こっちは真剣に喋ってるんだぞ?」と俺は眉間に皺を寄せる。
「はい!彩世さんが何時もの元気な調子に戻ってくれて嬉しいんです。」とニコニコと薄紅色の瞳を細めて笑う。
「はぁ?何なんだ!その理由!」赤褐色の片眉を上げて呆れる。くだらない。そんな理由でか!?だけど、悪い気がしない。寧ろ、
ふふふと笑ってくる上坂を見ると又、
謎のクラクラする様な輝きが出ているし、俺の鼓動も速くなる。
正直、このクラクラする様な輝きと動悸は訳わかんねぇし、疲れるが
こいつの側に居るとそれ以上に安心する。
仕方ない。こいつと居る以上、
この謎のエフェクトと動悸に付き合わないといけないなら、開き直ってとことん付き合ってやる。
「いいか!お前の貧血が戻ったらたっぷり血を貰うからな!覚悟しとけよ!」と顔が熱くなりながら俺は言う。
「はい!覚悟します!」と手をおでこにピシリと添えて敬礼する。
「それまでしっかり身体を休めとけよ!」
上坂とは数日過ごしただけだが、無理し過ぎる傾向がある。理解した。危なっかしい。
こいつは、俺が見ていたら大丈夫だ。
血と涙の盟約をした以上、俺が責任取って
上坂を守ってやる。
「あっ!飯だったな!腹減って無いか?」
「はい、すみません。お腹空きました。」
「晴!飯!」と呼ぶ。
「お待たせ。」と直ぐに
上坂の背後に現れた。やけに速い到着だなと思う。
上坂が振り返るとストロベリーブロンドの癖毛が際立つ晴が、お盆に鍋を乗せて立っていた。
本日も最後までお読み下さりありがとうございましたm(__)m




