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なろうラジオ大賞2

貴方が落としたのはどの聖女ですか?(脳筋ver)

作者: 高山小石

 『選択の泉』の上に泉の精が現れた。

 その左右には、ずらりと12人の同じ顔で同じ服を着た聖女が並んでいるが、勇者は左端の聖女から目が離せなかった。

 彼女だけ、同じ服が引きちぎれそうなくらいの立派な筋肉がチラ見えしている。

 もはや勇者は左端の聖女以外は目に入らなくなっていた。


「すまん、聖女よ。俺はこの人と世界を救う!」


 ガチムチ勇者は今まで共に旅をしてきた聖女に頭を下げると、筋肉聖女の手を取りかき消えた。


 『選択の泉』は、異世界を(また)に掛けるマッチングシステム。

 王族勇者聖女など立場的にパートナーを変更しにくいはずなのに、あまりにも多い婚約破棄に心を痛めた神々が作ったシステムだ。

 世界には自分と同じ顔をした人間が3人いるのだ。異世界や並行世界まで含めば、その数は相当数にのぼる。

 希望すれば候補者が集められ、選択者が選択した相手の世界に行くことになり、空いた隙間に別の人間を喚ぶ事ができる。

 選んだ相手が元と違っていても、元からその人間だったことになるように神々からフォローされているので、誰を選んでも記憶的にも遺伝子的にも問題ない。 


 ただ、本人達の記憶は残る。


 元の聖女は、今も勇者が消えたあたりを切なそうに見つめていた。


「貴女たちは仲が良いようでしたが、これでよろしかったのですか?」


 聖女の希望で集められた残り10人の聖女も元の世界に戻った後、泉の精として働く選択神は残された本来の聖女に声をかけた。


「確かに私は勇者様を心からお慕いしていました。でも私一人の力では、周囲の不満を抑えることがどうしてもできなかったのです」


 勇者と聖女の二人で世界にかけられた仕掛けを解いていくのがこの世界の仕組みだった。

 だが、力ある勇者は「解くのは面倒だ」とゴリ押しで進むため、勇者が通った後には壊れた仕掛けが残り、「今代はともかく次代はどうするのだ!」と国々から不満の声が高まっていた。

 聖女は全力でフォローしてきたがもう限界だった。このまま進めば殺されていただろう。


「あの聖女様がおられる世界なら、きっと勇者様も活躍できるでしょう」


「それは保証します」


「ふふ。良かった」


 残された聖女は聖母の微笑みを浮かべた。


「勇者候補はこちらに用意していますが、すぐに選ばれますか?」


「少しだけ時間をいただけたら嬉しいです」


「では、準備ができましたら泉に入ってくださいね」


 泉のほとりで一人きりになった聖女は、勇者との思い出に、ひとしきり涙をこぼした。

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[一言] 悲しい勇者、聖女マッチングシステム
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