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16話 レグルスの到着ですね


それから、こっぴどくアチナに叱られた。

余計な事をするなと念を押され、マリンの発案には基本的に乗るなとのお達し。確かにマリンの言う事は大体ろくな結果にならない。


とはいえ、剣聖ウメに結界石を持たせていても、遅かれ早かれ奪われただろうと椿(つばき)ちゃんの助け舟で、お叱りモードは幕を閉じた。


今後の使徒の動きには警戒しなければならないが、聖女スピカが使徒である事は、かなり不味いとアチナが言う。何せ、聖女であり、神聖王国でカリスマ的に人気のスピカが敵となると、聖教会と神聖王国セブールを敵に回す様な物である。


魔女ノアの話によると、スピカの使徒としての能力は策謀であり、美貌を活かして人を操るらしい。

つまり、聖教会は既に落ちていると考えてよい。


恐らく、使徒の狙いは、神聖王国セブール、ローゼン帝国、ファミリア王国の三国同盟を魔王討伐の名目で動かし、混乱に乗じて禁断の地へ行く事だろうと推測出来る。


問題はそれだけではない。何故、使徒が加護を獲ているのかである。魔女ノアはスピカと少しの期間、暮らしていた事があるそうだ。その当時のスピカには加護は既に無く、お世辞にも強いとは言えないレベルだった。

だが、ミカさんの話によると、かなり強いらしく、剣聖シズカ等よりは確実に強いそうだ。


「加護を与えた黒幕が居るって事かな?」


「アルテミスは封印されているから外部と接触不可だけど……」


そう言えば……。前に次元の狭間とか言うところに行った時の帰り際に、ロリババアが、他の世界がどうとか言ってた様な気が…………しないでもない。

ひょっとして今これ重要?


「あのさ……前に次元の狭間って所に行ったんだけど……そこで会ったロリババアみたいな人が、この世界を他の世界が狙ってるみたいな事言ってたよ」


しばしの沈黙が流れた。


「エイル……そんな大切な事、なんで黙ってるかなぁ?まさにそれなんじゃないかな?」


「ご、ごめん……」


「要するに異世界の神が、十二天将に何らかの方法で加護を与えたと言う訳ね。狙いが何かは分からないけど」


「ノアの言う通りだね。ボクの方でも調べてみるよ。気が進まないが、神界に行ってみる。エイルは大人しくしているように!」


「う……」


そう言ってアチナは魔女ノアと転移で去って行った。

飲み食いした後の片付けもせずに……


転移魔法獲得。


おっ!なんか覚えた!転移かぁ。これは便利だね!

後で試して見ようかな。


「また2人きりになったな♡」

頬を赤らめて椿(つばき)ちゃんが下手くそなウインクをした。


「変な言い方するな!それより、自分の心配して下さいよ!次に狙われてるのは椿(つばき)ちゃんだよ!」


「案ずるな。来たら剣を振るう、それだけだ」


そりゃそうだけど。俺なんかが心配する様な師匠ではないのだけれど、不安になる。


「それよりエイル、剣聖ウメを倒したのは、師としては嬉しいぞ。強くなったな!」


褒めて貰えるのは嬉しいのだけど。


「剣聖ウメ、かなり椿(つばき)ちゃんに恨みあるみたいだったよ?何したんですか?」


「あー、前にな、勝負を持ちかけられて、返り討ちにしたのだが……あやつ突然、嫁になってくれ!とか言い始めてな。気持ち悪いので、弱いし、臭いから嫌じゃ!って言ったら、泣きながら去って行ったな」


酷い……。人間、見た目や弱さなら仕方ないと思うだろうけど。自分で分かる事だし。でも臭いって言うのは自分では分からない事だし、他人に言われるとショックだ。ましてや、プロポーズの断りに言われたら……


「かなり酷い振り方したんだね。剣聖ウメに同情するよ」


「むー、臭いのだけは無理なんじゃ!鼻がもげるわ!亜人族は嗅覚強いから、我慢出来る範囲が違うのだ。その点エイルは良い匂いするから、いつまでも嗅いでいられるぞ!」


変態か!それより天使だから、体臭とかはないのか?発汗作用はあるみたいだけど……



その後、結局、抱き枕の刑が執行されて就寝したのだった。



◇セイコマルク



王宮内でミカエルとルドルフ王は軍事同盟について協議を行っていた。


「実は、親書でお伝えした内容だけでは済まない事態になってしまいました」


「ほう、済まない事態とは?」


「帝国に革命の動きあり、このまま待てば帝国との戦は終結するでしょう。ですが、武力による勝利ではないと、奴隷解放は難しいと考えてます。戦勝による交渉の有利性が損なわれる可能性です」


「ふむ、確かに一理あるが、血を流さず終結出来るなら越したことはない。奴隷解放は厳しいかもしれぬが、革命後の交渉で訴えて行く方法もあるであろう」



確かにルドルフ王の言うのも分かる。

戦争なんて無い方が良い。私だって戦争がしたい訳じゃない。喧嘩は殴る方も痛いのだ。

だが、解せないのは全て敵の思惑通りに事が進んでいる事だ。帝国の軍事蜂起から、革命。こちらが押せば引く。この状況が、全て仕組まれているなら、次の一手が分からない。相手は邪神の使徒だ。世界を操るプロだ。策で勝てる相手じゃない。使徒の1人でも捕縛出来れば、なんだけど……


「場合によっては神聖王国セブールが敵になるかもしれません。敵側に邪神の使徒。聖女スピカがいます」


「聖女スピカ様が邪神の使徒とは、深刻な事態であるな。だが、神聖王国セブールが敵になるとはまだ分からないなら、今は様子見の方がよかろう。もしも、そうなった時、我々はミカエルの力になると約束しよう」


「分かりました。ありがとうございます。今回の同盟の件、ひとまずは親書の通り、帝国との戦争が継続した場合の我が軍隊の駐在と補給支援と言うことで、お願い致します」


「承知した。しかし、立派になったなミカエル。子供の頃、魔族領を抜け出してセイコマルクに度々来ていた、おてんば姫が魔王とはな」


「恥ずかしい話を出さないで下さい!」


子供の頃、セイコマルクに旅の劇団が来ると知ってジスと2人で国を抜け出して見た演劇は楽しかった。後で捕まり、怒られたけど。


「そ、それよりリオの様子はどうですか?」


とりあえず話を逸らした。


「うむ。ワシなんかより、息子のトラビス王子が可愛がっていてな、一族に伝わる拳を教えると張り切っておる」


受け入れられた様で良かった。

余計なお世話をしてしまっていたらと少し気になっていたんだけど。交渉に利用してしまった事は後で詫びよう。


その後はセリスら『銀の翼』メンバーも交えて同盟締結の宴となった。

宴の席で、リオが王族であるとお披露目もあった。着慣れないドレスに戸惑いながらも、肉はしっかり食べていた。

「ほらほら、落ちついて食べないとドレスが汚れるぞ」

セリスがリオの口周りをハンカチで拭いてあげていた。

相変わらず母親役だ。


「マジ美味ーっス!パネェーっス!」

「ちょっとマリンさん!皆が見てますよぅ」


「相変わらず騒がしい連中ね」


「何1人落ちついた風を装ってるんだ?その酒は何本目だミカエル?」

セイコマルク特産のワインを行儀よくラッパ飲みしていたミカエルにセリスからツッコミが入る。


「うるっさいわね!だって美味しいんだもの!たまにはいいでしょ?」

ミカエルの足下には空になったボトルが8本転がっていた。

「いや、そんな事を前回も言って、泥酔していたエイルにイヤらしい事をしようとして大変だったのを忘れたか淫魔め!」


「淫魔言うな!残念エルフが!」


いつもの様にギャーギャーと言い争っていたら……


「女の喧嘩はみっともねえぞ」


「フン!生きていたのか?剣聖ウメ」


「何?コイツが剣聖ウメ?汚いおっさんね」


「あんたが魔王ミカエルかい?随分若いんだな。ところで銀髪の嬢ちゃんはどうした?」


「エイルは椿(つばき)様の所に戻った。何用だ?事によっては今日がお前の命日になるぞ」


「おいおい!待てよ!別に嬢ちゃんに興味ある訳じゃねぇよ。ツバキの事を聞きたくてな。俺はロリコンじゃねぇしな。俺はどっちかというと胸がボーンて言う方が……」


心底どうでもいい。コイツ殺そうかしら。


「お前……私のエイルに近付いたら殺すわよ。臭いからどっか行けおっさん!」



◇王宮地下牢



「あー、腹減ったな。おい!飯食わせろ!」


地下牢には、セイコマルクにやっと到着した、十二天将のレグルスがいた。

案の定、入国審査で引っかかった彼は、旅の疲れでも癒そうと、大人しく捕まったのであった。


ガシャガシャと檻を掴んで揺らし、看守に声をかける。


「おい!飯はまだかよ?腹減ったぞ!」


「おい!静かにしろ!飯など出さん!怪しいヤツめ!」

何せ身分証は無い。金も無い。荷物すら持ってないと言う。大方、帝国の脱走兵であろうと、思われていた。

それにしては、身なりは良いのが怪しい。

戦場で無駄に目立つであろう、金色の騎士鎧だが、武器の類は無く、丸腰であった。


「そっか。じゃあ寝る」


そう言って横になったレグルスは直ぐに眠りについた。



セイコマルクはついに邪神の使徒の侵入を許してしまったのであった。


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