20話 二人の告白ですね
2章完結!多分!
「じゃ、機会あったらまた来るよ」
「そう滅多に来る場所じゃないが……貴様とはまた会える様な気がするのじゃ……息災でな」
「あ、そうそう!言い忘れて、おったが他の世界が……狙っ……」
何だか気になる言葉が聞こえた様な気がするが、聴き取れ無かった……
◇
「やったーっス!うちの勝ちっス!」
「くっ!無念……」
「……悔しいですぅ」
「何故勝てないのでしょう?」
マリンがエイルの添い寝権を獲得した。
「もう離さないっス!」
マリンはエイルの顔を自分の胸の間に挟み、抱きしめてた。
とは言え、未だ意識の戻らないエイルを今後どうして行くか、話し合いが必要だと言うことすら、忘れてる銀の翼メンバーとスピカだった。
◇夜
「はぁ♡ご主人様ぁー、肌がすべすべっス!たまらんっス!」
マリンはベッドで無抵抗なエイルを介護?と言うより、完全に自分の抱き枕にしていた。
エイルは着ていた服はマリンに脱がされ、一糸まとわぬ姿でマリンに良いようにされていた。
「……あのぅ、隣で変な行為は困りますよぅ」
同じ寝室で寝てるティファにはいい迷惑だ。
睦みあっている隣で寝れるわけが無い。
いや、睦みあっていると言うより完全にソロ行為だ。
意識が無いのをいい事にエイルはマリンに使われている。
ミカエルさんが、知ったら……なんて考えるのが恐ろしい。ミカエルは今や魔王なのだ。
その魔王の大切な……?
とにかくバレたらヤバい。
ただでさえ、いつも八つ当たりの的になっているティファは、自身の身を案じた。
深夜、エイルの身に異変が起きた。
顔をマリンの胸に填めていてしばらくして……
「……苦しい……」
気が付くと闇だった。
だが、暖かい何かに包まれている。
微かに心臓の鼓動がトクントクンと、聞こえる。
息が出来ない。
堪らず、顔付近にあった肉の谷から逃げ出す。
「マリン……か?」
寝室の窓から月明かりが照らす肢体は青髪の美女を神秘的に映していた。
だが、全裸である。
隣のベッドを見るとティファがスヤスヤと寝ていた。
どうやら無事に帰って来れたみたいだ。
危うくマリンに殺されかけたが……
スキル「次元移動」獲得。
何か覚えたらしい。
あと去り際に何か言ってたような?
「……まぁいいか」
ベッドから起き上がり、自身の身体を確認すると、やはり全裸だった。
衣服や下着が散乱していた。
「一体何された?」
少し汗ばんだ身体に不快な感じがしたので、風呂に入りに寝室を出た。
浴室の鏡を見ると髪がかなり伸びていた。
肩に少しかかる髪。女の子みたいだ。
いや、女の子だけど。
髪が長いとより結城美佳に見える。
リュウタロウに引っ張られた髪、蹴られた顔、殴られた顔、そして殺された。
リュウタロウを倒す。
次は負けない。強くならないと。
アイツを殺せない。
ガチャ
「エイルさん?」
スピカさんが浴室に入って来た。
「あっ!スピカさん……心配かけました、それと色々ありがとう……」
「いえ、あ、お背中流しますよー」
いきなり衣服を脱ぎはじめて、浴室まで侵入してきた。
「あ、恥ずかしいから!」
慌てて制止するが、問答無用にわしゃわしゃと洗われました。
「何を今更!下の世話までさせといて!」
それは忘れたい黒歴史!
「それを言わないでくださぁい」
「フフっ、ミカエルさんになんて言いましょうか?私達の関係?」
「変な言い方しないでっ!ミカさんには絶対に言ってはダメ絶対!」
「えーどうしましょう?じゃあ黙ってる代わりに、一つお願い聞いて貰いましょう」
「う……変な事じゃないよね?」
「変な事?まさかエッチな事考えちゃいました?エイルさんは、おませさんですねー」
おませさんて。
あのー私実わ、中身23歳の男ですからね!
多分スピカさんと同じ位の青年ですよ?
そんな奴と一緒にお風呂入ってますが!
「……エイルさんは天族ですよね?」
「!…………」
しまった!斜め上を行く質問に、対応出来ず沈黙してしまった!
「……やはり、そうでしたか。アチナ様の使徒かしら?」
「……うぅ、はい……」
もう仕方ない。スピカさんは命の恩人だし、良しとしよう!
だが、リュウタロウに筒抜けになるリスクが心配だ。
スピカさんは聖女だ。勇者側……つまり敵だ。
「リュウタロウ様には秘密にしておきますよー、それと、教えてくれたお礼に、私の秘密プレゼントします!」
秘密?……だと!
実は男ですとかはないよな?
実は妊娠中とかリュウタロウに対する殺意ブーストですか?
「……私も天族なんですよねー、あはは、言っちゃいましたー」
「え?」
わからん、さっばりわからん。
今そのカミングアウトは何の意味が?
一気に血の気が引く感覚だ。
普通に考えて、殺られると思うのが適切だろう。
「私はアルテミス様の使徒。十二天将が1人、乙女座です。大丈夫。今は殺したりしませんよ」
ニコッと笑う顔が鏡に写る。
「何が狙いなんですか?」
スピカさんは俺の頭を洗いながら、話し始める。
「私はアルテミス様の復活。それだけよ」
「それだけ?」
「ええ、それだけ。それだけで充分、他に必要な事なんてないの」
「なんでアルテミス復活させるの?世界に復讐?」
スピカさんは頭を優しく流してくれた。
「さあ?私はただ、言われた通りにしてるだけよ?その先なんて興味無いの」
言われた通り?
他にもいるのか。
「私達の目的はアルテミス様復活。そのためだけの関係かしら?」
「だから、競争しましょうか?私達がアルテミス様を解放するのが、先か。エイルさんが、リュウタロウを殺すのが先か?」
何を言ってるんだろうか?
「ずるいです」
「ずるいかしら?」
「お……私はリュウタロウに負けたばかりだし、弱いし、時間……かかるかもだし」
「あっ!そうでしたね!分かりました!その辺は考慮出来たらしますが、約束は私には出来ないかもしれないですよ?」
何ともよく分からない。スピカさんにはあまりメリットも無い密約の気がする。
今まで水面下で行動していた組織がいきなり「どうも!秘密結社です!」と言って来た様なものだ。
しかも、これから悪い事しますから倒しに来てねと言う、フェアプレー精神丸出しだ。
「なんで、急に正体を明かしたんですか?言わずにいた方が目的を達成しやすいはずですよね?」
「私がエイルさんの事を気に入ってるからかなー」
「はぁ……」
なんだろう、スピカさんの言葉って、どこか足らない感じがする。
「はい!交代!」
その後、お互いの身体を洗いっこして風呂を出た。
いきなり敵を公言して来た相手とまさかの、裸のお付き合いだ。ミカさんに知れたら……怖い。
「一応、2人の秘密って事でー」
スピカさんは着替えて部屋を去って行った。
皆はスピカさんの魔法で眠らされているらしく誰も起きて来ない。
しかし……スピカさんが、アルテミスの使徒。
使徒は複数いる。
リュウタロウを殺したら勝ち?
て事は……リュウタロウがアルテミス復活の鍵?
わからない事だらけだな。
考えても、スピカさんの裸体が出て来て頭回らないな!
あれ?スピカさん使徒だとすると……平行世界の俺ヤバくない?
そして夜が明けた。
結局眠れなかった。
スピカさんの裸体のインパクトが強くて悶々としてしまいました。流石、神の造形って感じね。
ガチャ
「エイル!気が付いたのか!良かった……」
セリスが一番に起きて来て、抱きしめてきた。
「セリス……ただいま。心配かけてごめんね」
そのあとは
マリン、ティファ、リオの順で起きて来て。皆に抱きつかれ、もみくしゃにされた。
「やっぱうちのオッパイの力っス!」
「くっ!否定できん所が悔しいな」
「いや、死にかけたよ!息出来なくて!」
◇午後
アチナを呼んだ。
朝は呼ぶなと前に言ってたので昼に呼んでみた。
「エイル!心配したんだよ!でも良かったよ無事で!」
そんな事言ってるが、家電やらを買ってたのか、幾つか家電量販店の袋を抱えていて説得力がない。
その隣りに狐の亜人さんが居るが、どちら様ですかね?
「あっ!エイルは初めてだったね、こちら剣聖の椿ちゃんだよ」
これが、剣聖ツバキか!
噂どおりの美人で艶やかな雰囲気があるが、強そうには見えない。
「あの……はじめましてエイルです。お、わたしに剣を教えて頂けませんか?」
「……いいだろう。だが、私の修行は厳しいぞ」
「椿ちゃん、弟子とった事ないだろう」
「……」
ちょっと不安になった。
「だ、大丈夫だ、お前には我が一刀流のアレとかを伝授してやるぞ!」
アレってなんだ?そこ奥義じゃないの?
「ミカエル呼ぶかい?一番心配してたのは彼女だったわけだし」
アチナが珍しく気を利かせてくれた。
だが、なんか怪しい……
アチナが空間転移でミカさんを連れて来たのだが……
「エイル!てめぇ心配したんだよ!バカが!」
はい。激怒りでしたね。
久しぶりに見たミカさんは髪の色と瞳がオッドアイになっていて驚いたな。
そのあと、ユリくん主催で盛大な宴が開かれた。
ちゃっかりアチナと剣聖も参加していた。
案の定、アチナは美しさが目立ち過ぎてユリくんに捕まってた。
「あの。お嬢さん、エイルとはどの様なご関係でしょうか?私はユリウス。一応ここの国王ですが!」
「ん?君が国王かい?ボクはエイルの母だよ。うちの子に手出したら許さないよ」
「お、お義母様でしたか!真剣に交際希望です!是非、私を推薦してくれませんでしょうか?望みのものは何でもご用意致しますので……」
「ユ、ユリウス!その方に近付くでない!お前ごときが、気安く話しかけるな!」
セリスがユリウスを引っ張って行った。
一国の王にお前ごときと言えるセリスって凄いね。
「はっ!あの方は!」
アチナは、珍しく宴に来ていたフレオニールを見つけて
、モジモジと遠目から眺めていた。
お前ウブか?
ミカさんは何故かピアノを弾いていた。
なんか聴いた事ある曲だ。
あっ!あれだ、えーと、卒業式とかで聴くあれだ。
音楽には疎いのでわからないが。
◇王宮客室
宴は深夜まで続き、久しぶりに皆で騒いだ。
今日はアチナと剣聖も空いてる部屋に泊まって行くようだ。
懐かしの俺とミカさんの部屋。
ミカさんと2人同じベッドで寝るのも半年ぶりだ。
ミカさんに押し倒された。
「……私、咲野くんが……エイルが好きだよ」
「ん、知ってる。俺の大切はミカさんとこの身体だよ……」
「……ありがと……」
二人の唇は自然と近づき重なった。
暫くして……
「また離れちゃうね……」
まだ肌寒い季節だが、二人の肌の体温で気にはならない。
「でも、直ぐ会えるよ。ちょっと修行するだけだし」
ミカさんの髪を撫でて誤魔化す。
「んー!充電させろ!」
「えっ?あ、あー!」
「カプっ♡」
◇翌朝
「準備は良いか?」
剣聖との修行のため、俺は旅立つ。目的地は北の山脈にある、剣聖の屋敷だそうだ。
「……はい、らいじょーぶれす……」
「エイル!明らかに大丈夫では無いぞ、なんでそんなにやつれている?ミカエル!エイルに何した?いや、ナニしたのか?」
セリスがゲッソリした俺を見て、ミカさんに言及する。
「ご、ゴメン、半年ぶりだったのと、魔王化で加減が判らなくて……吸いすぎたわ!」
予定外の体力消費だったが、強くなる為に俺は剣聖の弟子になった。
強くなってリュウタロウを倒す。
漸くして俺は目的が出来た様な気がする。
そしてまた次の冒険が始まるのです。
小ネタ
ミカさんの弾いた曲は「威風堂々」
強盗を笑って刺されたのは実話ですw
コンビニ強盗の凶器がドライバーも実話ですw
これにて2章終幕です。
幕間を少し書いてから3章になります。
ここからも引き続き「ものまねスキルは最強です」を宜しくお願いしますm(__)m




