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17話 とりあえずの決着ですね



「てんめぇぇぇぇぇ!」


ミカエルが血相を変えて飛びだすが、結界が貼られている為エイルの元に行けない。


が、ミカエルは素手で結界を殴り始める。


素手で結界を割るなど不可能。そんな事くらいはミカエルも承知しているが、いても立ってもいられる訳が無い。


ようやくして観客は事態を飲み込め始め、泣き叫んだ女性やら、リュウタロウに罵声を浴びせるやらで闘技場は騒然とし、今にも暴動が起きそうな雰囲気になっていた。


「姫様!お止め下さい!姫様の手が……!」


ミカエルは自身の拳が砕けても結界を殴り続け、手は血だらけになっていた。


「てめぇ!殺す!絶対殺す!」



「怖いねー、君の仲間。君にはこれから僕と一緒に来て貰うよ。どうやらここには居ずらくなってしまったみたいだよ」

項垂れるエイルの左手を掴み、転移術式を展開させる。

「スピカ!リズ!帰るよ!」



「ミカエルさん!エイルさんの手は必ず私が治します!だからもう止めて!誰かミカエルさんを抑えて!」

スピカは銀の翼メンバーにミカエルを抑える様に指示する。


「ミカエル止めろ!」

皆でミカエルを抑え込む。


「スピカ!信じていいんだな?」

セリスはミカエルを抑えながらスピカを見つめる。


「信じて下さい!」


そう言うと、スピカは結界を解除し、リュウタロウの元へ走った。


そして、リュウタロウ達は闘技場から消えた。

エイルを連れて。



「あ、あ、あぁ!エイル……!」


ミカエルはただ泣き崩れるしかなかった。




勇者によるエイル拉致。


その日全国民が悲しみと怒りに溢れた。


街では


「エイルちゃんを返せ!」「勇者許すまじ!」

「戦争だ!」「セブール王国と戦争だ!」


国民感情は異様なまでに昂り、今にも暴動が起きそうな有り様だった。

王国の至宝とも言うべき若い剣士の利き腕を切り落とし、更には連れ去って行った勇者リュウタロウはファミリア王国民全てを敵に回した。



◇王宮謁見の間


謁見の間には、王国首脳陣の貴族。騎士団長。魔導師団長。陸兵団司令。参謀長。等錚々たる顔ぶれが集結しており、事態の重大さを物語っていた。


「やはり、セブールに宣戦布告でしょう!」

「いや、セブールには抗議文で宜しいかと……」

「なら聖教会を襲撃して、エイル様奪還の許可を!」

「待て待て!聖教会に居るとは限らないでしょう!」

「勇者の転移先が解らないのでは打つ手はないでしょうが!」

「セブール領、帝国領に捜索隊を派遣し、情報を収集するのが良いかと」

「それでは国民を抑えられん!」

「陛下いかがなさいますか?」


ユリウス国王は自分のせいでエイルを攫われる事態になった事を悔やむが、今は国王としての決断を迫られていた。

「うむ……」


「セブールに抗議文を送った後、騎士団はセブールに出兵。圧力をかける。並びに各国領に捜索隊を派遣。入国許可申請は後出しで構わん。急げ!」


「「「はっ!」」」




◇王宮客室



「ミカエルは?」

セリスが寝室から出て来たジスとティファに様子聞いた。

「今は落ち着かれ、お休みになりましたが……」


「とにかく、今は動きようがない。スピカが言ってたが、エイルの腕は必ず治すと。それを信じるしかない、居場所に関しては情報を待つしかない」


「勇者許せないっス!」


「絶対にぶっ殺すなのです!」


「あのぅ、アチナ様に言った方が良いですかねぇ?」


「そうだな、ティファ呼べるか?」


「任せて下さい!アチナ様ー!アチナ様ー!」


「呼んだ?」

カチャリと浴室の扉から出て来た。

どうやら椿(つばき)様も一緒のようだ。



私は事の発端と顛末をアチナ様に説明した。



「……だから言ったんだ。勇者に手を出すなって!」


「いや、アチナ、今回は避けれなかったんだ。仕方ないだろう」


「うぅ……わかってる、わかってるけどさぁ!」


「勇者の処遇はどうする?放ってはおけぬだろうが」


「今は……まだダメだ。エイルの身が危ない。だけどこのままじっとしてる訳には行かない。聖教会本部に行くよ」


ガチャ


寝室からミカエルが出て来た。

「ミカエル……少しは落ち着いたか?」


「……うん。ごめんなさい。迷惑かけたね」


「謝るならユリウスに謝った方が良いな。お前をここに連れてくるまでに色々壊したからな」


闘技場から王宮の部屋に戻る際、ミカエルは八つ当たりで王宮の正門、中庭の石柱、更には最上階の屋根に石柱をぶん投げて穴を開ける等、破壊行為で騒ぎになった。

本当に迷惑な客人である。


「それで、どうするんだミカエルは?」


少し考えてから

「一度国に帰るわ。勇者をぶっ飛ばす準備してくる」


「そうか……私はここに残って情報を待つ事にする」






◇帝国某所


転移魔法でリュウタロウ達がやって来たのはローゼン帝国の帝都スタットブルク郊外にある屋敷だった。


「……ふう。さてどうするかな」

屋敷に着くなり、抱えていたエイルを放りなげ、暖炉に火を灯した。


「リュウタロウ様ここは?」

スピカは屋敷内部を見渡して、使用感のない部屋を見る限り、自分の知らない場所だと気づく。


「ここは帝国だよ。前に一度来た時に買っておいた古い屋敷さ。リズ!屋敷の掃除頼む」


「はい!わかりましたにゃ!」

リズは早速、埃っぽい屋敷の窓を開け、掃除に取り掛かった。


「スピカはとりあえず生活に必要な物でも買って来てくれるか?」


「わかりました……、ですが、その前にエイルさんの手の治療をさせていただきます!」


「あー、構わないよ、勝手にしてくれ」


スピカは未だ速度低下(スロウ)状態のエイルを抱えあおむけに寝かして腕の欠損部と離れた腕を治す治療を始めた。


「これから、どうするつもりなんですか?エイルさんをこんな目に合わせて、ファミリア王国は完全に敵に回りましたよ……」


ここが帝国と言うのが、少し厄介だが。

エイルさんをミカエルさん達にお返しする事が困難な状況だ。恐らくミカエルさん達は帝国に潜伏している事に気付くには時間がかかるかもしれない。

帝国には教会がない。

アチナ神を信仰していないからだ。

教会があれば教会を通じて連絡手段があったのだが、

どうやら無理ですね。

最悪、皇帝を使う事も可能だが……

この件で皇帝を動かすのは、ちょっと気が引ける。

極力使徒としての活動は避けたい。


「ファミリアなんてどうでもいいよ。とりあえず時間かけて、そいつをボクの下僕にするだけさ」


「……酷い人」


はぁ……本当にクズですね。まだ利用価値はあるから見捨てませんが、用済みになった時は……消しますかね。

アルテミス様、もう少しお待ち下さい。



◇その夜


地下牢に繋がれたエイルは未だ状態異常のまま、ただ目を開けてリュウタロウを見つめている。

いや、見つめているように見えるが、視認する情報すら速度低下しているため、見えてないのであった。

エイルの意識はまだ闘技場である。

時間が経てば、経つほど時差が生じて行く。


リュウタロウはこの繋がれた少女を見て、これから始まる生活が楽しくて仕方がなく、口が緩む。

「ふふ、ゆっくり時間かけて従順な奴隷にしてあげるよ……ユウキさん……」


リュウタロウは性的な虐待はするつもりはない。

変態だが、無理矢理と言うのは好まず、魅了や誘惑で操り、本人から自分を求める様にする事で征服感を満たす。自分を殺したい程、憎しみの感情が強いであろうこの少女が、自分を求める姿を想像しただけで快感だ。


「……今日はおやすみ、ユウキさん」

そう言って、リュウタロウは地下牢を後にした。






…………速度低下(スロウ)獲得。

…………速度低下(スロウ)耐性獲得。



◇翌日


ファミリア王都正門


「本当にイッちゃうっスか?」


「ちょっと発音おかしいわよマリン……」


陸王に跨り、青髪の阿呆に向かって残念な目を向けるのはミカエルだ。

後ろにはジスが座っている。


「道中気を付けてな。と言ってもミカエルなら大丈夫か」

「ミカエル様は私が付いてますから大丈夫です!」

ジスは自信満々に胸を張る。


「リオ!これ新しいギミックスーツあげるわ。エイルと私の合作よ!大事になさい!」

空間収納から黒いボディスーツの様な物を取り出し、リオへ渡した。

ところどころに施された魔石が身体強化に変換される特殊スーツだ。ステータスが数倍になるだろう。


「ありがとうなのです!ミカエルまた会えるですか?」


「当たり前よ!銀の翼はまだ終わらせないわ!帝国潰したらまた冒険しましょう。その時はエイルも必ず連れ戻す!」


「じゃあまたな淫魔」

「またね残念エルフ」


2人は再会を誓いあい、それぞれのすべき事をする。


ミカエルとジスはデストロイ要塞を目指し、王都を去った。





そしてエイルの消息は解らないまま

半年が過ぎた……





読んで下さりありがとうなのです!


ブックマーク、評価ありがとうなのです!


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