3話 デストロイ要塞②とココ村観光
前回の続きでーす
◇帝国軍仮設基地
突撃隊はコダマ大佐率いる1000人の部隊が担当する事になった。
突撃隊は軍服に白だすきを付け、その決死の覚悟を表していた。
「諸君、我々はこれより、死地に向かう!生きて帰るは恥と思え!」
「「「ハッ」」」
「よろしい。では遺書を回収する!遺書を渡した者は杯を受け取れ!」
皆、遺書を渡し、酒の入った杯を受け取る。
「勝利を我が祖国に!」
杯の酒を飲み干し、杯を床に叩き付ける。
杯を割る行為がもう二度と戻る必要など、無いと言う覚悟の表れであった。
この集団的ヒステリーの状態が戦争で言う所の士気である。
夜。空には雲がかかり月明かりは殆ど無い。
初秋とはいえ北方の気温は10度を下回るほど冷え込む。
だが、1000の突撃隊は無言で進む。吐く息は白い。
突撃隊の任務は要塞の攻略ではない。攻略の為の道を作るだけだ。
無数に仕掛けられた有刺鉄線の排除とあわよくば要塞に侵入して火をつけろと言うのが与えられた任務だ。
帰還の為の援護は無い。
コダマ大佐はこのデストロイ要塞はとても魔族達によって造られたとは思えなかった。
あまりにも強固な造りと火力。今までの魔族軍は武器と言えば剣、槍、鎌、棍棒、弓などで銃火器の類は見た事が無かった。ましてや有刺鉄線なんて考えもよらないだろう。精々、使役した魔物達を突撃させる程度の力押しであった。魔族は大抵脳筋である。それが世界の常識だった。
有刺鉄線の第一ラインに到達した。
恐らくまだ、魔族軍は気付いていないだろう。
先日の戦闘で死んだ同胞達の死体が有刺鉄線に絡まっている。数えきれないほどだ。
銃撃に備え、鋼鉄のシールドを全面に出しつつ、有刺鉄線を切断して行く。入り込むスペースを造り、第二ラインを目指す。
◇デストロイ要塞の二塁にある司令室
司令室にあるコタツで仮眠をとっていたドワルデス将軍の部下で実家が農家の士官ルー・ペタジーニもコタツで仮眠していた。
「ん?どうやら何か来ましたかね」
ルーは異変に気付き、本塁の監視塔に向かう。直通のトロッコで移動は楽チンなのだ。
あの鬼姫……いや、ミカエル姫様の魔族国貢献度は高く、産業革命、農業革命など、魔族国は豊かになった。このデストロイ要塞はミカエル様の作品の一つに過ぎない。
監視塔から見ると、何やら帝国軍が有刺鉄線を除去しようとしていた。
「闇に紛れて奇襲ですか、丸見えですが」
夜目の効くルーは悪魔族だ。夜の活動は専売特許である。
「敵襲!直ちに一塁、三塁は銃撃で敵を正面に」
兵達に指示を出すと、要塞中央にあるマウンドと言われる施設に向かう。
「整備班!ピッチングマシンを使う!パチ弾装填かかれ!」
デストロイ要塞に敵襲のサイレンが響く。
「気付かれたか!」
コダマ大佐率いる突撃隊は第二ラインの有刺鉄線の除去作業中だった。
「撃て!撃て!弾は使い切れ!」
サーチライトが、部隊を照らすと雨の様な銃弾が降り注ぐ。
カン!カン!ヒュン!
すぐ近くでシールドに弾かれる音や、その間を通り過ぎてく弾丸の音、先程まで隣りにいた同胞は体に当たったのか倒れ呻き出す。絶命した者もいるだろう。
コダマ大佐は持っていた指揮刀を抜刀し、兵達を鼓舞する。
「突撃隊!進め!進め!」
要塞側からの迎撃は広範囲に展開されており、とてもじゃないが、散開させられる状況ではない。
むしろ、中央の弾幕が薄い、ならば中央突破し、爆薬で破壊を試みる。
移動式の大砲8門を進んでは撃ちを繰り返す。
要塞までの距離は50メートルにまで迫っていた。
流石に強固な要塞であろうと、近距離からの砲撃は効果がある様だ。要塞から煙が上がり始めた。
「撃て!撃て!」
「進めー!」
要塞側の砲撃により、いくつかの大砲が吹っ飛ばされたが、撃てる限りを尽くす。
少しでも要塞にダメージを与え、後の同胞に未来を託す。
コダマ大佐率いる突撃隊が、第三ラインに到達した時だった。
要塞の正面の門が開き始めた。
「門が開く!敵が出て来るぞ!」
が、出て来たのは兵隊ではなく、また魔物でもなかった。
ゴロゴロゴロゴロ
出て来たのは直径5メートルはある巨大な銀色の玉だった。
巨大なパチンコ玉である。
「なっ!」
巨大なパチンコ玉は勢い良く転がり、中央に集まってしまった突撃隊を踏み潰して行く。
次々と要塞からパチンコ玉が転がり出て、無残にも突撃隊が潰された結果、1000人居た突撃隊は負傷者12名
それ以外は戦死した。
デストロイ要塞は巨大な野球盤の様な造りになっている。野球好きのミカエルらしい造りだ。
因みに正面の門を突破した所で巨大な落とし穴が待ち受けている。落とし穴に落としたあと、パチンコ玉が降って来る仕様である。
◇帝国軍司令部
「作戦は失敗。突撃隊は生還者12名、コダマ大佐は戦死なされました」
伝令からの報告でバルバトスは拳を机に叩き付けた。
「くそぅ!だが、仇は必ずとってやる!無駄死ににはせんぞ!」
◇ココ村
旅館の二日目の食事は海鮮料理だった。
だけど、やはり醤油とワサビは無かったので、ミカに出して貰い、美味しく頂く。
と、そこで
「やっぱり魚にはこれでしょ!」
ミカが、先程買った一升瓶の酒を出して来た。
リオ以外は成人なので皆で呑むことに。
「「「おいしい!」」」
これは、日本酒みたいな酒だ。造り方までは知らないが、かなり近いものがある。
だけど、アルコール度数はかなり高い気がする。
「これは中々美味いだにゃー」
セリスが既に酔っていた。早っ!
「あはは、セリスは酒弱いっスか?」
「マリンさんはいつも酔っ払いみたいですよぅ」
確かに無駄にテンション高くてシラフなのが信じられないな。
「あーこれはぬる燗で呑みたいわね」
「それいいね、風呂で温めるか?」
リオは食事で満足したのか、既に寝ていた。
「リオ〜風邪引くぞ〜」
足どりがおぼつかないセリスが布団を敷き始める。
「ティファ食事の片付け、お願いして来てくれ」
「はい!わかりましたぁ」
「マリンは何もするな」
「何でっスか?」
余計なことしかしないだろうに。
あれ?ミカさんは?
見ると部屋の露天風呂で酒呑み始めてました。
「エイル付き合いなさい」
「は、はい……」
とりあえず1杯付き合うか。
風呂で酒とか体に悪そうだな。
「なんかいいわね、平和で」
「うん?あ、まあ騒がしいけど」
なんだ。なんか普段なら、「あいつらうっさい」
とか毒づくのに。変だ。
「あのね、あたし……」
「ん?どした?」
ミカさんが、少し赤い顔で見つめてくる。
近い。なんだか直視出来ないので下を向くと、けしからん胸の谷間が!
胸を凝視する訳にも行かず、キョロキョロしてしまう。
「あたしを見て!」
ガシッと両手で、顔を固定されてしまいました。
ヤバい。ドキドキしてきた。心臓が脈打つ速度が上がる。
「あたしね……ず」
「ずるいっスー!何二人だけで呑んでるっスか?ウチも参戦っス!」
貝殻下着姿のマリンが登場した。
見事なまでのムードクラッシャーだよ。
「とうっ!っス」
飛び込むかと思いきや、普通にスタスタと近づいて来た。そして、貝殻下着を外して、洗い始めた。
「その貝殻まだ使ってたんだ?」
下着の役割を果たしてないだろうが。
「これはリョーマ様に貰ったウチの宝物っス」
宝物の使い方間違ってるだろ。
「でも最近キツくなって来たっス」
食い込むからな!大体紐だしね。
「上の紐の長さが足りないっス」
そっちかよ!てかまだデカくなる気なの?
ガララ
ふらふらのセリスが、ティファに掴まりながらやって来た。
「セリス大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ、私はまだ戦えるぞ」
何と戦うんですか?
結局、寝ているリオ以外みんなで風呂で酒呑んでしまいました。
「さてと寝るか」
布団に入ろうとしたら
「まだっス!今日こそはご主人様の隣りはウチっスよ!ミカエルには負けないっス」
「うむ!そうだにゃ、ここら全員で枕投げで勝った者らエイルの隣りっれ事はどうだりょ?」
呂律回ってないよセリス。
「私も負けませんよぉ!」
何がティファの心に火をつけた?
「いいわ、お前らまとめてぶっ殺す!」
何で枕投げで険悪な空気作ろうとするの?
と言うわけで、第一回枕投げバトルロワイヤル開始!
「シャーオラーっス!」
先手を切ったのはマリン。両手に持った枕をフリスビーの様に回転させて、ミカさんに投げる。
無駄にポージングしながら下にしゃがみ躱す。
が、「ハッ!」海神の逆鱗発動!
枕がミカさんの上空を通過せずに真下に落ちる。
ドカっドカっ!
「ゲフッ」
流石のミカさんも膝をつく。
まさか枕に重量アップかけるとは!
セリスが、枕をミカさんの顔目掛け投げ、更にその枕に飛び蹴りかまして追撃をかける!
これは効果的で、払おうとした枕にセリス自身の蹴りと体重が乗っているので潰され、尻もちをついた。
そこにティファがありったけの枕を投げる。
「うおりゃああああああああぁぁぁ」
大量の枕の下敷きになり、身動き取れないミカさんにマリンがダイブする。
「どりゃあーっス!」
「ざけんな!」
ミカさんが浴衣の帯をマリンの顔面に振り払う。
パシーン!
見事にマリンの目に命中した。
「ふぎゃっ」
「暗黒闘気」
ミカさんの周りを黒い気が覆う。
完全に魔族化し、ツノと尻尾が現れる。
帯を外した事により、浴衣はスルりと落ち、下着姿が顕になる。黒い下着姿ですね。
下は意外にもボクサータイプだ、レース付きだが。
マリンの頭を掴み、露天風呂に放り投げ、扉ごと場外。マリン、アウト。
「あわわわ、聖なる力よ、邪悪なるものを拒め。聖域!」
ティファが聖魔法で防御に徹する。
「暗黒領域」
ティファの聖域が黒く侵食されていく。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「インパクト!」
ミカさんが枕をフルスイングしてティファを打った。
ティファは頭からふすまに突っ込み沈黙。
ティファ、アウト。
「拘束」
今度はセリスを帯で縛り上げた。
セリスの帯を取り、ムチの様にセリスを何度も叩く。
バチーン!バチーン!
「グアッ!」
叩かれる度に悲痛な叫びをあげるセリス。
「誰の隣りで寝たいって?」
「ぐ、くっ!殺せ!」
ここでクッコロかい!
まさか枕投げでこの展開!
いや、すでに枕投げじゃないよね?
「淫魔式マッサージ壱の型」
ミカさんがセリスに、あの秘技を発動した。
「くっ、や、やめろ!私はそんな事れ、くっしらいぞ!んっ!ら、らめー!あっ!……っ」
セリス、アウト!
スリーアウト試合終了?
「あ、あ、」
俺が部屋の隅で怯え震えていると
「ジュルリ……」
飢えた淫魔が、舌なめずりしながら近づいて来た。
後ずさるが逃げ場が無い。
「フフっやっぱりあたしの勝ちね!」
ミカさんに抱きつかれ……
「カプっ」
血を吸われました。
そのまま抱きつかれながら眠りについた……
翌朝、女将さんにお説教されたのは云うまでもない。
次回は再び王都へ出発します。
勇者の動向も気になるかな?




