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ダルド、月の光と大地を抱いて

 女神一族が慌ただしい動きをみせるころ、キュリオの住居である悠久の城ではささやかな宴が開かれていた。

 剣士や魔術師の集う棟にはキュリオからの豪華な料理や高級な酒の数々が差し入れられ、それぞれ名のある地位を与えられた者たちは広間へと招かれた。王や姫とともに食事ができることに浮かれて酒を煽る者がいれば、上機嫌な様子で永遠と祝辞を詠う者もいる。


「子供たちはそろそろ部屋へ帰す時分だな」


「ほぉっほぉっ! そのようですな。カイなどは腹が満たされて床に転がっておりましたしのぉ」


 立ち上がったガーラントの言葉にふっと笑みを零したキュリオは、腕の中で終始笑い声をあげて嬉しそうに手を叩いていた幼い姫に目を向ける。


「アオイ、ミルクはもういらないかい?」


 キュリオお手製のミルクボトルを彼女に近づけてみるも、眠気が先立っているらしいアオイの反応は鈍く、キュリオの腕に寄りかかるように体を預けていることから睡魔との戦いに敗北してしまったことがわかる。


「あぁ、私たちも部屋へ戻るとしよう」


 腰を上げたキュリオに付いて来ようとする女官へ制止をかけると、中庭からこちらの様子を伺っていたダルドが慌てて駆けてくる。


「……キュリオ、戻る?」


「そうだね。私たちは失礼するよ。

料理も酒もまだたくさんあるから君はゆっくりしていくといい」


「ううん、……ロイと話すのは疲れる」


 ダルドの言葉にキュリオが中庭へと視線を向けると、相当な酒が入っているらしいロイが侍女に介抱されているのがみえた。


「ふふっ、では少し寄り道をしてから戻ろうか?」


 だいぶ窮屈な思いをさせてしまったようだ、とダルドの負担を思いやったキュリオは彼を伴って広間を出ると、だいぶ進んだ通路の扉から中庭へと足を踏み入れた。


「……アオイを抱いてみるかい?」


 ダルドが先程からこちらを気にしているのをキュリオは気づいていた。……こちらというよりもアオイに触れたいという気持ちが大きいのだろうと。


「うん」


 迷いなく答えた彼に頷いたキュリオは眠っているアオイをダルドへ託す。


「……あたたかい……アオイ姫」


 決して重くはないが、ぬくもりを纏った命の重みに自然と笑みがこぼれた。

 穏やかに繰り返される呼吸にこちらまで癒され、月の光に照らされた赤子の肌はダルドの生まれ育った北の大地の雪のように輝いて、喉の奥が熱くなるような懐かしさが蘇る。


「……アオイ姫はキュリオに似てる」


「うん?」


 癒しの光を手中に集めていたキュリオが輝きを纏いながら振り返る。

 キラキラと靡いた髪が月の光を放っているように見え、ダルドは眩しそうに目を細めた――。


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