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自分はこれで本当に良いのだろうか?
カノジョに会ったのは、私がそんな事を悩み、ため息をつく事が多くなった頃だった。
「亜…神原さん、おはよ!」
名前を言い直しながら神田優介が話し掛けて来た。
いつもニコニコしている、クラスのアイドル的存在。
(なんか、イヌっぽい…)
目下、わたしのカレシ。
優しくて健気。なのに、この煮え切らない気持ちは何だろう?
彼とわたしが知り合ったのは半年前。
入学したてでまだ出席番号順の席。
「神田」と「神原」、前後の席になって、ユースケの方から話し掛けて来たのが始まりだ。
ユースケはあっというまに、持ち前の人懐っこさで人気者になった。
引きかえ、わたしはどうも外見から誤解されるらしく、友達と呼べるのはユースケのみ。
男子に声かけられたり、コクられたりもしたけど…
ユースケに勝てる相手は居なかった。
それでもわたしは「オトモダチ」だった。
ある日、ユースケにスキと言われた。
もしかしたら、わたしに友達がいなくて、同情してくれたのかもしれない。
ユースケはそういう所がある。
けれど…ユースケといると、この可愛くない性格を直せそうな気がしてOKした。
実際、ユースケと付き合うようになって、周りの反応が違ってきた。
でも、わたしはやっぱり違う気がする…。
わたしのタイプではないのか。
でもそれは、ユースケにいうと傷つくのでは?
そしてズルズルと悩んだまま、1週間を迎えた。
この日、カノジョと運命的な出会いをする。
それは、甘く、切なく、夢のようで、悪夢のようでもあり…。