橙の廊下の先に
食事のカートを押しながら廊下に並ぶ照明に明かりを灯していく。一つ、また一つと明かりを灯していくと闇に包まれていた長い長い廊下の先が映し出されていく。無骨で冷たい石畳にオレンジ色が加えられ温かみを得ていく。
カートを押す。明かりを灯す。カートを押す。明かりを灯す。
同じ所作を繰り返し、最後の明かりを灯したと同時に今まで見えなかった扉が出てくる。
その扉の前に食事を置きノックを二回すると、小出しの窓が開き料理が中に吸い込まれていく。そして入れ替わりで出てきた空の皿をカートに乗せて来たばかりの廊下を戻る。
毎日繰り返し行う行動だが今日はいつもと違うことが起きていた。皿についていたソースがきれいになめとられていたのだ。
ああ、主様。私の血は美味しかったですか。
もしあなたの吸血欲が満たされないのであれば、本日はこの明かりを消してあなたの道を示しましょう。
思わず鼻歌を歌いながらつけてきた照明を一つ、また一つと消していく。
冷たさが戻った廊下の奥で木のきしむ音が聞こえた。
テーマ「照明」で書いたこのSSは書き始めるのに時間はかかりましたが思いのほかすんなりといった作品でした。