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プロローグ・大河「直虎」 2


 戦国の流れ。


 有名無名な地方戦が多数あった。

 そして尾張の織田信長が突出。

 包囲網などの抵抗もあったが撃退。

 その地盤を継承した羽柴秀吉が事実上の統一を果たす。

 政権継承に失敗した秀吉政権が簒奪される。

 反抗勢力を根絶やしにして、鎖国に至り、バカでも血筋で利権を継承する時代が成立する。


 主人公が誰でも、この図式は変わらない。だって事実なのだから。


 忠義の人か温かみのない策士だろうが石田三成が首を斬られた事実は変わりない。


 大名家としての太祖・毛利元就が家族愛を大事にしていようがしていまいが、二名のバカ孫のが毛利の株を指定銘柄から二部落ちさせた事実は曲げられない。

 奥地の視野の狭い男や島津、前田なども以下同文。


 でも定番だし、いつどこで誰がどうするのか見える。教科書にも載っているし。

 例えば〝去年の信長と来年の秀吉の大河との差別化〟も可能、素人目にも楽なのだ。



 例えば、戦国ものは、「女」とか時代としては脇役端役の「利家・一豊」のような家老たち。また「兼続」に至っては陪臣。古臭い表現だと「又の家来」であるけど、見える。


 それは直江兼続が上杉の子分、家臣だからだ。兼続は、正確には謙信ではなく、その次代の景勝の寵臣。子分だが、謙信の遺徳で、なんとなく見える。

 関ヶ原や大坂の陣などに兼続が参加しているのも、「見える」要素になるし、少し歴史に詳しいと「直江状」なんてのが日本史に激震を与えたとして、陪臣としては破格の知名度だろう。

 親分人気のお陰で、片倉小十郎もそこそこ知られている部類だ。


 だが、直虎は見えない。


 それは消されている一面は確かに重要なのだが、直虎が「関ヶ原」と言う大イベント前に退場するハズだし、また井伊家が遠江から発して、上野こうずけの高崎、そして近江彦根と「尻の落ち着かない」武将・一族であることも災いしている。

 これに輪をかけて、井伊家は明治体制こと皇国史観で悪役に転落するなど、致命的失点もある。このマイナス要素は大河の支持層である高年齢層には、重い足枷になっているはずだ。


 現在は大河効果を期待して遠江井伊谷や高崎、現行の本家の彦根など「直虎」イベントを展開しているだろけど、まあ今年だけ。

 これは酷だけど歴代の大河効果を期待した先輩の観光施設の結末で明白だ。



 そして一番重要な点が、



 『結局、この人、なにをした人なの、ダレなの?』


 これである。



 直政の政治上の親と説明しても、そもそも井伊。井伊谷の知名度は低いし、直政の知名度も、どうなのだろう。


 推定だが、信長や秀吉を100とした場合、直政は地域格差はあっても──彦根では90以上のはずだが──おそらく10代。

 もっとも、これはとある大学教授の統計だと、毛利輝元──祖父の元就ではない──は上記の指数で『01』。

 10ではない、100に対しての1なのだから10は悪くない数字だと言い訳をしておく。


 その10程度の知名度の養育親で、存在を消されているのだ。


 見える訳がないのだ。


 色々ご批判はあっても複数回ドラマネタで採用されている戦国、あるいは幕末、そして忠臣蔵は、常識人ならば、大筋と結末くらいは知っている。


 まあ私も記憶にある最初の大河ドラマの「国盗り物語」の時代──未就学──は信長が近藤正臣が演じる光秀に襲撃されて切腹したことは驚いた記憶があるが、それは多分例外。

 親にチャンネル権を握られていない、自分の意思で視聴しているならば、結末はとっくに知っている。信長が謀反で倒れ秀吉が政権を取り、後に簒奪されると言う歴史的事実は。



 井伊直政の知名度推定10代。だから、なんとなく見える。それに徳川四天王なので、100に近い人物がこれからどうなるのかを「教えてくれる」のだ。直虎には、それがない。大河を一シーンも見逃さず視聴してたわけではないが、恐らく「直虎」あオリジナルキャラを除いて初出場なのも手痛い。知名度が低すぎるのだ。



 この自説は私と同類で歴史に詳しい──本業は出版である──知人は賛同しない。どんなに解説を入れてもわからないやつはわからない、と


 でも、私は力説したい。


「信長を秀吉を、そして三河人を出せ」と。


 直虎がまだ柴咲コウでなく子役の時代、信長はどうしていた。あるいは都では足利将軍はどうしていた。


 そんな描写がない。


 もちろん、昨今の大河では主役に関連性が低いイベントは「三秒語り」で処理されてしまう事例が多い。

 子役直虎が、ど田舎で駆け巡っているころ、織田と斎藤で、どこどこの合戦があった等々。

 それは確かに効果の割に結構予算を食うシーンだし、今現在は過去の大河の使い回しは避けているようだ。


 実例だと「八大将軍 吉宗」では「松の廊下」のシーンは「峠の群像」から流用しているのだが、版権問題が厄介なのか主役を引き立たせるためなのかは放送業者の部外者にはわからないのだけど。


 でも時代が見える。この点は保証する。


 どんなに詳しい解説を入れてもわからない人種にはさっぱりでも、わかる人が増える。それだけでも効果アリだと思う。


「なぜ、戦国大河に信長がいないのだ?」


 さすがに女城主に関わる三河人やその粛清された正妻は築山殿と言う侮辱名で知られている。

 三河人はよほど女性蔑視の地盤らしく、前述の今川氏や、天下人の側室プラス生母に遊女に付帯する『殿』で呼んでいる。

 女性陣。歴女はもっとこの点を怒るべきだとおもうのだが。

 ともかく、三河人の正妻。

 本来なら最低でも関口氏か、伝統に倣えば今川氏と呼称すべき人物が、「直虎」で相当話数が幼い頃から出演していた。


「ならば、どうしてもっとこの二人の出番を増やさないのだろう?」


 これは、今川氏が三河人の悪行を全て押し付けられているので、ドラマの序盤、心地よい「ツカミ」にならない問題点が大きい。



 ならば、今回のマイナー主人公で汚名払拭させる勇気が制作サイドに欠けている。確かに主役は直虎だが、女城主とわざわざタイトルに入れたのだ。


 瀬名、あるいは瀬奈と、この当時としては珍しく名前が伝わる今川氏。

 もちろん、この呼称も本名ではない可能性は高いのだが、それでも名前が伝わっているところに、少なからず今川氏に同情する、無罪冤罪だとの支持者がいるのだと信じたい。


 さて主役の直虎は合戦で父親、謀略で親戚を失った激しい悲哀を経験する女だが、養育した直政は紆余曲折を経て、大大名に出世する。


 一方。

 松平瀬名、あるいは今川瀬名は自分だけでなく腹を痛めて授かった嫡子信康まで種馬に惨殺されている。直虎と違い報いられなかったのだ。


 どうせ女性主人公ならば、もっともっと女目線で物語をしてもよかったのではないか。

 つまるところ「直虎・愛」が足りないのだと私は思うし、愛と熱意の欠如は作品に間違いなく影響しているはずだ。


 これでは一般視聴者も歴史ファンのどのレベルも拝聴視聴しようとの熱意が湧きにくいと言うものだ。



「戦国双璧の両雄が行方不明」

「単に女性が演じているだけの地方領主」


 こんな貧相貧弱な餌では、オサカナは釣られないのだ。


 そう確信している。



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