合同捜査
佐久間たちは、いわきから福島市に向かうことにした。
「この時間なら、JR磐越東線の郡山行きで郡山駅に向かい、JR新幹線やまびこで仙台行きに乗り継げば、二時間三十分で福島市に入れるはずです」
「やはり、東北地方は遠いね。捜査とはいえ一日中電車に乗って、腰が痛いよ」
佐久間たちは、福島駅に到着すると、事前連絡を受けていた福島県警察本部の須藤が出迎えてくれた。
「遠くから、お疲れさまです。福島県警察本部の須藤です。捜査本部にご案内します」
「警視庁捜査一課の佐久間です。こちらは同僚の山川刑事です。よろしく」
捜査本部では、既に九名が被害者について話合っていた。
須藤が、皆に佐久間たちを紹介する。
「えー、警視庁捜査一課からお見えになった佐久間警部と山川刑事です」
捜査本部長の田中が挨拶した。
「佐久間警部、わざわざ来て頂き助かります。先ほど、司法解剖結果が出ました」
「お初にお目に掛かります。やはり、薬物中毒死ですか?」
「青酸カリのようです。また、直接の死因には至りませんでしたが、長い期間酢酸タリウムを盛られていたようです。被害者の毛根から、二つの成分が検出されました」
「ほう。相当、犯人は恨みがあったと見えますな。死亡推定時刻はいつぐらいですか?」
「死亡推定時刻は、先日の二十一時三十分から二十二時頃です。このJR特急ひたち二十九号は、二十一時に上野駅を出発しましたから、おそらく土浦から水戸の間に死亡していたことになるでしょう」
「いわき駅で確認しましたが、被害者は当初二名で電車に乗車していたようですね。おそらく殺害後、すぐに電車を降りたはずです。土浦駅か水戸駅で」
山川が、捜査本部長に尋ねた。
「山川です。被害者の身元はおわかりになりましたか?」
「被害者は、新田敏朗。五十四歳。住所は、東京都江東区○○番地です。新田商事を経営しており、表向きは普通の商社ですが、捜査からこの商社は裏で闇金を取り扱うブラック会社であることが判明しています」
山川の目が光る。
「取り立てによる恨みから犯行に及んだのか不明ですが、悪党による可能性が高いですな?」
佐久間は、次の質問に入った。
「被害者の家族は、もう対面されたのでしょうか?」
「いえ、新田敏朗の妻は五年程前に他界しているようです。一人息子がいますが中々連絡がつかない状況です。そこで警視庁さんには、新田敏朗と息子について捜査協力をお願いしたいのです。逆に、土浦で起きた下山元刑事の捜査は本来は茨城県警察でも捜査をするでしょうが、我々捜査本部としても捜査協力を惜しみません」
「わかりました。この二つの殺人事件、警視庁と福島県警察合同で行きましょう。茨城県警察にも話を行い、要請してみます」