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十七年前の真実 〜佐久間警部の記憶〜  作者: 佐久間元三
二つの殺人
4/15

土浦の地

 山川刑事と新宿駅で合流したのは、連絡を受けてから三十分後の事だった。


「おはようございます。すみません、非番の日に要請してしまいました」


 山川は、申し訳ない表示を隠せない。


「いや、良いんだ。山さん。よく教えてくれた。下山先輩の無念を晴らそうじゃないか?」


 佐久間たちは、JR常磐線を利用し、現場に向かった。


「状況をわかる範囲で説明します」


 山川は、移動時間中、現在持ち寄った情報を佐久間に小声で伝えた。


「なるほど。死亡推定時刻は不明だが発見は六時頃か。何故、下山先輩と判明したのかな?」


「第一発見者の女性が、下山さんを知っていたようでした。退官されてからの下山さんは、畑仕事に精を出して、近所付き合いは大変良好であったと」


「先輩らしいな。想像していた通り、余生を満喫していたようだ。尚更、その余生を踏みにじった犯人は赦すことは出来ないね」


 土浦駅に到着したのは、九時を過ぎた頃であった。


 下山元刑事が、遺体で発見された場所はJR土浦駅から、南西に七百メートル離れた場所である。


 桜川の岸辺だが、鉄道高架下という事もあり、すぐにはわかりにくい。


 たまたま、この近くを通り掛かった散歩の女性が倒れている下山元刑事を発見したのだった。


 非常線が張られた黄色いテープを潜り、佐久間たちは現地入りした。


 下山と対面した佐久間は、沈痛な面持ちで、まず両手を合わせた。


 妻の分まで気持ちを込めて。


(下山先輩、誰にやられたんですか?無念は私が晴らしてみせます)


 第一発見者の女性に話を聞いた。


「捜査にご協力頂き、誠にありがとうございます。また、被害者は私の上司でもありました。発見が遅れた場合、それだけ捜査が難航します。どれだけ助かったか。いつも、この発見時間帯にご散歩を?」


「いつもは、時間は大体同じなんですが、散歩コースが実は違うんです」


「・・・というと?」


「昨日の下山さん、何か様子が変でした。いつもは、ニコニコ優しい表情で、野菜を分けてくれたりするんですが。何か気になりまして、朝こちらのコースを歩いてみたんです」


「どんな風に様子が変でしたか?」


「詳しくは、聴かなかったんですが、誰かが今夜自分の所に時間限定で尋ねて来ると。何でも長年追いかけていたことがわかるかも知れないと興奮して話していましたよ」


「ーーーーーー!」


「・・・警部?」


「ああ。間違いない。下山先輩は、昨夜誰かにこの場所に呼び出されたようだ」


「この場所は、下山さんの畑から近いんでしょうか?」


「はい。遺体があるすぐ脇の畑が、下山さんの畑です」


「そうですか。貴重な情報ありがとうございました。また何かお気づきの点が出てきましたら、この名刺にご連絡をお願い致します」


 佐久間は、第一発見者に名刺を差し出し、見送った後、遺体の確認作業に入った。


「警部、鋭利なナイフのような物で心臓を一突きということでしょうか?」


「それに、下山先輩のこの表情。何故かはわからんが、殺されることをわかって刺された感があるな」


 誰が何の目的で、退官した元刑事を殺す必要があるというのか?


「山さん、ただの物取り犯行でないとすると間違いなく、警察もしくは、下山先輩に恨みを持つ者の犯行だ。一突きで仕留めていることからも、相当恨みは深いのかもしれない。後は鑑識官に任せ我々は、いわきに向かおう。福島県警察が待っているようだしね」


「下山先輩、申し訳ありません。また参ります」


 佐久間と山川は、深々と遺体となった下山に頭を下げ、現場を後にした。


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