新たな事実
佐久間たちが、川合朋子に任意で事情聴取している同時刻、捜査本部でも下山元刑事殺害の対策会議が行われていた。
「鑑識官、何か発見はあったか?」
捜査本部長の坂上が、尋ねる。
「まず、足跡ですが犯人は二種類以上の靴を使用している疑いがあります」
「どういうことだ?」
「はい。犯行現場で見つかった足跡は土浦駅から駅近くの駅西駐車場までと河川敷き堤防から犯行現場まで確認。この事から、犯人は土浦駅で下車し、駅西駐車場に行き、そこから車かバイクで河川敷き堤防まで移動。堤防から徒歩で犯行現場に行き、下山元刑事を刺殺。そして、堤防まで徒歩で移動しそこから足跡は確認出来ません。犯人が、行きと同じ向きで足跡を意識し歩いたとは考え難いため、犯行後に河川敷き堤防から車もしくはバイクで移動の際に、履き替えまた駅西駐車場に戻ったか、駐車場に戻らす何処かへ逃走したかは不明です」
「犯人は、また同じ駐車場に戻ることは普通では考えられないな。しかし、足跡を消すことに力を入れている所は相当したたかな犯人だ。他には?何か発見があったか?」
「はい。現場に落ちていた植物の種が、この地域には普通では生息しない種類である事がわかりました。これはアロカシアのクプレアという植物で専門店でしか入手出来ない外来種です。つまり、犯人が何処かで踏んで足裏に残っていたものが、現場に落ちた可能性があります」
「この植物は、どの程度一般家庭に普及しているかを至急調べるんだ。佐久間刑事にも情報を入れておくように!」
〜 喫茶店 〜
「山さん、これを見てくれ!」
川合朋子を見送った後、七月六日の列車ダイヤを確認していた佐久間は、興味深いことに気がついた。
「どうされたんです?」
「切り離しだよ!」
「切り離し?」
「この七月六日の列車ダイヤ表を詳しく見るとわかるんだが、土浦駅で車両の切り離しに七分近く、通常よりも停車をするんだ。つまり、JR常磐線勝田行きは二十時四十一分に上野駅を発車して、柏駅を二十一時十分頃通過し、土浦駅には二十一時五十一分に到着する。ここでは、車両の切り離しを七分間行うんだ。おそらく前寄り五両十一号車〜十五号車を切り離したはずだ」
「つまり、この間に途中下車して犯行を行なった新田俊介は、何食わぬ顔で、川合朋子の隣に戻った?」
「上手く行けばね」
「しかし、新田俊介たちは、間違いなくこのJR常磐線勝田行きに乗車していたはず。どうやってJR常磐線特急ひたち二十九号で新田敏朗を殺害したのでしょうか?」
「それについては、ダイヤ表でトリックがわかったよ。来週の同時刻にやってみよう」
「来週ですか?」
「ああ。これはね、いつでも出来るものではないんだ。来週にわかるよ」




