第一話 起点
今日は蒸し暑い。朝のニュースでは、今年初めて三〇℃を超えたらしい。
衣替えも既に終え、クラスの全員が夏服を着てはいるが、みんな下敷きをうちわにしている。
クーラーも扇風機もない。今時の高校にしては設備をケチっている。
この蒸し暑さの原因は梅雨が終わったばかりだからだろう。
最近の異常気象のせいか、梅雨は七月下旬近くまで続いた。
おかげで今年の夏はジメジメしたものになりそうだ。
しかし、そんなことはお構いなしなのが高校生の頭の中。休み時間ということもあり、もう既に、数日後に控えた夏休みの話で盛り上がっている集団もいる。
もちろん、僕はぼっち。常に教室の隅にいるような陰キャラだから。
自分から何かしようとは思わないし、したいとも思わない。
毎年、長期休暇は家でゴロゴロ過ごすのがお決まりになっている。
そのせいで高一にして肥満体型。みんなからは変なあだ名を付けられるほどだ。
だけど、今年は違った。
「おーい、プー太郎」
一人の男子が近付いてきた。
「お前、夏休み暇だろ? 二二日さ、俺らに付き合えよ」
唐突の誘い。
そして彼は僕の返事を待たずに男子五人のグループに戻っていった。
彼は五十嵐健治。あのグループのリーダー的な存在。いつも教室で騒いでいる奴ら。僕とは正反対な人間なのに、なぜ僕を誘う。きっとバカにしているに違いない。
とは言え、強制的に約束をこじつけられた。
約束を破るわけにはいかない。
誰にも聞こえないように小さく舌打ちをしつつも、逆らうことはしなかった。




