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否定しても肯定しても窮地に立たされるとはさすがです、加賀さん

「さてユーヤさん」

「はい何でしょう」

 おもむろに話を振る加賀さん。

 何だ……時期ネタか。でも加賀さんだからな。普段あんまり冗談言わない人だしな。


 お昼過ぎ。午前は大学の課題があったという加賀さんが居間にいる。前島さんは珍しく外の仕事だ。

「今日はユーヤさんにー、重大発表があるのですよー」

「ほほう」

 これはフリかな。今日の、って前に置いてるしな。しかも重大発表な。

 よろしい。

「聞きましょう」

「いい度胸ですねー。その度胸だけは誉めてあげますよー」

「なぜ上から発言…?」

 聞くだけだよ? 聞くだけなんだよ?


「それではー、耳をかっぽじってよぅく聞いてくださいー」

「よし」

 耳掃除は万全ですよ、僕。

 前のめり気味に待つ僕に、加賀さんはひとつ頷いて、では、と咳払いなどし、


「実はですねー、私、見た目通りの小学生なんですよー」

「ほう……」

 …………。

「…………」

 …………。

「…………!?」

 え、どっちだ!?

 冗談か!? 四月のお馬鹿さんか!? それとも本当に事実暴露か!?

 加賀さんはリアルにロリなのか!?

 否定できないっ!!


「…………」

「おやー、どうしましたー?」

 あんぐりと顎を落として加賀さんを凝視する僕に、加賀さんはなんてこともないように見返す。その表情に無理はない。いつも通りの平静な顔だ。

 冗談を言う顔ではない。


 いやでも……加賀さんが見た目に合わないポーカーフェイスであることは、いつぞやの前島さん主催大ババ抜き大会で思い知っている。加賀さんの顔筋コントロールテクニックは完璧だ。


「大丈夫ですかー? まるで鳩が魔貫光殺砲を食らったような顔でー」

「それ食らってたら顔残ってないですよね」

 鳩に向けて撃たないでよ、そんな大技。もう何か見るまでもなく大丈夫じゃないですよそれ。


 しかし…どうする? 否定するか? でも否定したら、加賀さんが合法ロリであることを認めることになるんだよな。しかし否定しないと、加賀さんは真性ロリであるということに…!

 僕は生唾を呑み込んだ。

 これは究極の二択だ…!!

 慎重に慎重を期さねばならない。


 加賀さんの凪いだ湖面のように静謐な目の光を見返しながら、僕は考える。

 見た目から考えてはいけない。それでは選ぶまでもない。見たままに加賀さんは疑いなくロリだ。

 だから周辺情報から考えるべきだ。外堀を埋めるべきだ。まず加賀さんは大学生…それは確かだ。僕のひとつ上。ソレは学生証を確認したことがあるから間違いない。

 はず。

 偽造、なんてあり得るだろうか?

 よしんば偽造でないとしても…いや、この国にはまだ飛び級制度はないはず。

 僕はすっかり乾ききってしまった唇を湿らせる

 ということは、だから──!


「……う……嘘、ですよね……?」

 もの凄い及び腰になってしまった。

 真相やいかに。

 僕の問いかけを聞いた加賀さんは──果たして、にっこりと笑った。

「正解ですー。冗談ですよー。いやーよかったですー、看破できなかったらどうしてやろうかと思いましたよー」

「そ、そうでしたか。それはよかった、は、はは……」危なかったぜい。今更、どっと冷や汗が出てきた。


 それにしても、ねえ。

 ころころと笑う加賀さんの笑みは、もう完全にあどけない幼女のそれだった。


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