静かな夜
狭い寝室には時計の秒針を刻む音が響いていた。
カチカチ、カチカチと。
そこには明かりも、音楽も必要ない。
窓から差し込む月の光。
ちぎれ雲の隙間から、少しだけ顔を覗かせて。
暗闇をさり気なく照らす。
時折、風が木々を揺らす。
葉のこすれ合う音が波のように、穏やかに寄せては返す。
朝日が昇るまで、延々と繰り返す。
永遠のように、繰り返す。
静かに、ゆるやかに更けていく冬の夜。
止まってしまったような時間の中で。
それさえあれば、何も要らない。
それ以上は、何も望まない。