第3話 前篇
「あぁーーっ」
学校から帰ってきた私は、自分の部屋のベッドにダイビング。
「なんか疲れた・・・」
朝から走ったせいで、授業は疲れて寝ちゃったし。
健也は何か考えていたみたいで、ずーっと上の空。
おまけに今日は洗濯だし・・。
時々、何もしたくない時がある。
ずっと何もしないで、このまま寝ていたい。
瞳を閉じて、今日の出来事を思い返して・・夢に入っていくのかな。
そう思うと、だんだん眠りたくなるわけで。
「おやすみ・・・」
自分にそう言い聞かせた時だった。
コンコン
部屋のドアをノックする音。
「だれーっ?」
「俺だよ」
「はぁ・・・」
私は疲れた重い身体を起こし、ドアを開けた。
「何」
「ご飯」
「・・・あぁ、はい」
寝たかったのに。
私はリビングへと向かった。
「・・・・」
なんでだろう。 テーブルの前に座れない。
「何突っ立ってんの。 早くしろ」
「これ、全部・・・風也が作ったの?」
「俺以外作る人いないだろ」
私はおそるおそる椅子に座る。
「・・・冷凍食品?」
「お前・・・今なんて言った?」
「ごめんなさい」
目の前には、綺麗な形をしたオムライスが。
ケチャップがかかっていないせいか、黄色くて、やわらかそうなイメージ。
「ほい」
風也に渡されたのは、ケチャップ。
「・・・自分で?」
「好みがあるだろ」
私はケチャップをかけて、スプーンを右手に持ち、オムライスを口に運んだ。
「・・・おいしい」
「ほんと? よかったぁ~・・・・」
ホッとして私の前に座る風也の笑顔を見た途端、私も口角が自然に上に上がった。
「めっちゃホッとしてるし、ふぅにぃ」
「当たり前だろ・・・」
風也もスプーンを持って、食べはじめた。
「あ、今日の風呂当番のジャンケンしよっ」
「んなもん、あとでちゃちゃっとすればいいじゃん」
「ははぁ~っ、ふぅにぃ、負けるのが怖いんだぁ・・」
「・・・バカ! ちげぇーよ」
なんでだろう。 風也と話していると、自然に笑顔になる。
別に面白い話をしているわけでもない。 やっぱり不思議だ。
「ってかさぁ」
「??」
「なんで、ふぅにぃって言うの?」
「え・・?」
「・・・別に嫌って言ってるわけじゃないけど、なんか・・・お前じゃないよ」
「・・・・」
「俺のこと、兄貴って思ってるの? 風也って言ったり、ふぅにぃって言ったり・・」
「・・・・・・思っちゃいけない?」
私は、スプーンを置いて、風也の目をまっすぐ見た。
「私が、あなたを兄妹扱いにしたら、あなたは怒るの? それとも嬉しがるの?」
「俺は・・・・」
「前みたいに風也って言っちゃう癖、ついちゃったんだよ」
「・・・・?」
「私はどう思えばいいの?」
さっきの笑顔はなんだったんだろう。
私は風也の目を真剣なまなざしで見た。 一方の風也は、少し下を向いている。
『風也、明日どこ行く?』
『風也、誕生日おめでとうっ!!』
『風也―っ!!!』
頭の中で、夢乃の声がリピートしまくってる。
あぁ・・こんなこと聞かなきゃよかった。
「・・・・ごめん、もういいや」
私は、この場の雰囲気が嫌で、リビングから出た。
ふぅにぃ、いや、風也が私を呼ぶ声が聞こえても、私は階段を駆け上がった。
まだオムライスは、半分も食べてない。
それでも、私の心はいっぱいで仕方なかった。
「ふぅにぃ・・・・か」
夢乃がリビングからいなくなった瞬間、俺は一人になった。
当たり前だけど・・・。
「・・・まだ残ってるし」
俺は夢乃の食べかけのオムライスを見て、少し悲しく感じた。
「俺の妹なんだよな・・・夢乃」
『・・・・なんで相沢なの?』
『よく、保護者会で会うようになってな・・。 仲良くなったんだ』
『・・・母さんよりも、いい人なの?』
『・・・・あぁ』
親父の言葉、本当に信じられなかった。
なんでよりによって夢乃の母さんなんだよ。 他にもいるだろ・・・・
『・・・お前、相沢さんと何か関わりあったのか?』
『え? あ・・・・部活のマネージャーとか、委員会で同じだっただけだよ』
『じゃあ・・・少し気まずくなるなぁ・・・』
『・・・』
『・・・・え、再婚!? お母さんが!?』
『うん・・・夢乃、怒ってる?』
『ううん!! まぁそりゃあ知らない人が家族にってのは嫌だけど・・・』
お母さんが再婚を考えてるとは、思ってもいなかった。
だから、聞いた時は、嬉しさと不安が入り混じっていた。
『で、どんな人なの!?』
『優しい人でね。 いつもそばにいてくれてた・・・』
『・・・え、職場の人?』
『ううん、学校の、保護者会とかでよく会ってたの・・・』
『???』
『夢乃、菊池さんって知ってる?』
『えっ・・・・』
世の中に、同じ名字なんていくらでもいるけど、うちの学校で菊池って言われたら
風也ぐらいしかいない。
『息子が、高校2年で・・・あ、夢乃の一つ上よね』
『・・・・その人のお父さんと・・再婚するの?』
『・・・えぇ』
くしゃっとほほ笑む母の顔を見た私は、何もできなかった。




