第1話 中篇
「じゃあ、また明日ね」
「うんっ。 ありがとね!」
結局、家まで送ってくれた健也。 バス代として偽ったお金、意味なかったかな・・・
でも、一緒にいれたからそれでいい気もしていた。
健也は私に手を振って、背中を向けて歩いて行った。
私は、健也の背中が見えなくなるまで、ずっと見ていた。
「はぁーっ・・・」
健也の姿が見えなくなり、私はその場で立ち尽していた。
「・・・何してんの?」
背後から聞こえた声。
「・・・あ、ふぅにぃ」
ふぅにぃだった。
「・・・どいて」
「あっ・・・ごめん」
私は少し右により、玄関から離れた。
黒の無地のマフラーで首を覆い、ブレザーのポケットに手を突っ込んでいるふぅにぃの姿を見ると、1年前を思い出してしまう。
「・・・そこにいると風邪ひくぞ。 あんま長い時間いるなよ」
「えっ・・・」
ふぅにぃは、そのまま家に入っていった。
「今の言葉・・・」
そっくりそのまま。 あの時と同じだよ。
今の優しさは、兄妹としてですか?
どうしても期待をしてしまう私はバカですか・・・?
「・・・寒いっ」
寒さに耐えられず、私も家に入った。
私はすぐに自分の部屋に入り、暖房をつけた。
「寒い寒いっ・・・」
部屋着に着替え、少し身体が温まった。
私は机にあった写真立てに目を向けた。
1年前の文化祭の写真。
そこには私とふぅにぃがいて、お互いに右手でピースをしていた。
ふぅにぃが・・まだ高校2年の頃。
2年C組の教室前で撮ったのを、今でも覚えている。
でもね、ふぅにぃ。
写っていたのは、私とふぅにぃだけじゃないんだよ?
「・・・・」
端っこで、文化祭のパンフレットを持って悩んでいる一人の男。
「・・・・ほんと偶然だよね」
健也が写っていたんだ。
「夢乃~っ! 晩御飯! 風也君も~!」
「はーいっ!!」
母の声で我に戻った私は、写真立てを元の場所に戻し、部屋を出た。
「夢乃~っ! 晩御飯! 風也君も~!」
「ほーいっ」
夢乃の母さんに言われた俺は、教科書を閉じてシャーペンをおいた。
「はーいっ!!」
部屋越しから、夢乃の声が聞こえた。
「・・・はぁっ」
ひとつため息をついて、俺は部屋から出た。
「あれ、またカレー?」
「ごめんねぇ・・時間なくって」
おいしいからいいんだけどね。
そんなことを思いながら、私は椅子に腰かけて、手を合わせた。
それと同時に、ふぅにぃがリビングのドアを開けて入ってきた。
「・・・いただきます」
右手に持ったスプーンで、カレーをすくいあげた。
「・・・あ、飲み物」
「あら、出すの忘れてた!」
「私、持ってくる」
私はスプーンを置いて、立ちあがった。
「いいよ、俺持ってくるから」
「え、あ・・」
私の隣に座っていたふぅにぃが立ちあがり、さっさとキッチンへ向かってしまった。
「風也君優しいわよね~・・・」
小声で言うお母さんの一言が、なぜか胸を締め付ける。
ふぅにぃの後姿を見た瞬間、私の頭の中で、あの日の記憶がよみがえった。




