第1話 前篇
季節は秋。
少し肌寒いと感じてくる。 首に巻いているマフラーで顔をうずくめる私。
校庭には、赤やオレンジの葉がはらはらと落ちていた。
「寒っ」
‘相沢 夢乃’と書かれた下駄箱から靴を取り出し、履き替える。
「あっ、健也」
昇降口で待っていた健也を見て、私は急ぎ足でくつをはいた。
「急がなくても大丈夫だよ?」
「ううん、待たせちゃ悪いし」
「今日、どこ行く?」
「ん~・・あ、プリクラ!」
「よし、けってーいっ!」
健也は私の手をぎゅっと握りしめて、歩く速度を少し早めた。
健也の手のぬくもりを感じるたび、寒さはしのいでいく。
思えば、なんで健也と出会ったのか・・・。
部活が一緒にでもない、委員会も全然違う。
お互い見知らぬ人だった。
でも、文化祭の日を境に、私達は出会った。
「あの・・・写真部の喫茶店って、どこかわかる?」
「あ、この廊下を右に・・・」
「・・・ごめん、俺転入したばっかで、まだ学校慣れていないんだよね」
笑いながら答える君の顔は、今でも忘れない。
とてもキラキラしていた。
ついつい私も頬がゆるんでしまい、笑顔になってしまうくらい。
・・・まぁ、健也に道を聞かれただけなんだけど。
その日以来、私と健也は廊下ですれ違うたびに挨拶を交わすようになった。
お互いの学年を知り、話すようになるのは、そう長くはなかった。
あれから1年。
そうなると、もう早い気がする。
大好き。
ただ、この好きという気持ちはどこか違うようで。
「・・夢乃?」
「・・えっ? あ、ごめんボーっとしてた」
私は、ふぅにいからもらった150円を健也に渡した。
「・・・夢乃、あと50円」
「・・・え!? 嘘! 間違えた・・・」
「もしかして、100円ないの? 今日は俺が払うよ」
そういって、健也は私の手に150円をそっとおいて、財布から100円を取り出した。
「ごめん・・・」
「はいはい気にしないの」
健也の優しさに、私は少し切なさを感じていた。
「・・・何かあったの?」
「ううん! 何でもないよーっ」
プリクラに写っていた私の笑顔は、1年前とは何か違っていた。
「はいっ」
「ありがと~っ」
プリクラを取り終えた私達は、外に出て近くのベンチに座った。
健也からもらった温かいコーヒーを、冷たい私の手でくるんだ。
「そういえばさ」
「ん?」
「俺と夢乃が付き合って・・もう1年経つんじゃない?」
「そっかぁ・・・もう1年か」
と言いながら、私は1年前の頃を思い出していた。
あの頃は、自分でもよくわからなかった。
あの時から、自分の気持ちに嘘をつき始めたのかもしれない。
「今度さ、休みあったら・・どっか行かない?」
「うんっ、行こ」
私は、健也の手のぬくもりを感じながら、また歩き始めた。




