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思えば、私って昔からついてなかったと思う。
…いや、運がだよ。道歩いてて上から鳥の〇〇がってのはあったけど…おにゅーの服がぐしゃどろになってめちゃくちゃへこんだけど…って、そっちじゃなくて、ラックの方。
幼稚園の時は、遠足で楽しみにしてたお弁当に毛虫落ちてきて、ひっくり返しておじゃん。
小学校の時は、マラソン大会で何故か車にひかれそうになるし。(ほぼ毎年)修学旅行では迷子になるし。
中学校の時は試験前に必ず愛用のシャーペンが紛失or破損。修学旅行では迷子になるし。(2回目)
高校の時は張り切って作った手作りチョコをこけた拍子に側溝にポイ捨て。(ちなみに、友チョコ)修学旅行では迷子になるし(3回目)
そして1番不幸だったのが大学受験の時。その日に限って目覚まし時計が壊れて、遅刻しそうな中、死に物狂いで受験会場へ。
大学受かったのが、嘘みたいだった。絶対落ちると思ってたし。ついてない事ばっかりだけど、神様は頑張る私を見ていてくれたんだ!
今まではついてなかったけど、これからはバラ色の人生が待ってるんだ。私は、そう信じて疑わなかった。
だって、念願の1人暮らしだし。憧れの大学に入れたし。親友も一緒の大学に受かったし。うん、言うことなし。楽しい明日が待ってるぜ!
「なーんて、やっぱり私の人生上手くいかないもんだね」
ずずー。適度に混んだマッ〇でコーラをすする様に飲む。
「やめなさい。バカっぽいから」
「だってー…」
私の前でハンバーガーをパクつく幼稚園からの親友。(幼馴染みでもある)
艶々の茶髪を綺麗に巻いて、バッチリメイクにスラッとした体。
彼女は佐々木 唯。不幸体質の私を影から日向から支え続けてくれる姉御肌の美人さん。
私にお弁当半分わけてくれたり、突っ込んでくる車から助けてくれたり(私を蹴り飛ばして)、代わりの友チョコ買うお金貸してくれたり、毎回シャーペン貸してくれたり迷子の私を探しだしてくれたり。
…もう本当に、唯様々です。
唯は私にとって、女神と言っても過言じゃない。
助けられまくり。唯的には、私は「出来の悪い妹」らしい。…姉さん、あざっーす。
でも、私ももう大学生だし。唯に心配と迷惑ばかりかけるのも申し訳ないって思うし。ここらで独り立ちをしなきゃな、なんて考えた。…遅いかもだけど。
それで、唯に大人になったねって言わせて、安心してもらうのだ。
その為に、唯に相談中。
「私から自立しなきゃって考えは良いと思うよ、知恵里。でも、なんで彼氏作りが独り立ちなのよ」
訳解らん、って全力で語ってるよその顔。
「だって、『大人の女』って彼氏の1人や2人や3人いるものじゃん」
「…知恵里の言う『大人の女』、激しく間違ってるでしょ。良い女はたった1人を深く愛するものよ」
「じゃあ1人にする」
「……」
あんた、バカ?って全力で語ってるよその目。
「やめときなよ。知恵里が本気で頑張る時って、何かしら起きるんだから」
さすが、女神はわかっていらっしゃる。めちゃくちゃ気合い入れた時とかやる気出した時に限って、不幸が起こるんだよね。
「でも今のところ、何にも不幸になってないし」
にへっと笑う。
「甘いわね。本気で彼氏作ろうって思ってないからよ」
ふふん、と鼻笑う唯。不適な笑みがすんごく似合ってるし。
「すんごく気合い入れてるんだけどなー。毎日化粧して、スカートはいて、かかとの高い靴はいてるし」
「それ、だいたいの女子の標準装備だと思うけど」
「……」
私的には、めちゃくちゃ頑張ってるつもりなの。女神の唯様の女子力には遠く及ばなくとも。
「どっかに彼氏落ちてないかな…」
ずぞぞー
「バカにしか見えないから、変な事言うのやめなさい」
ハンバーガーを食べ終わった唯に引っ張られて、渋々店を後にした。
「ありがとうございましたー」
やる気ないような店員の声に見送られて、自動ドアがしまった瞬間。
何故か、ほっと息をついた。
「何、あからさまな溜め息」
眉を寄せる唯。地獄耳だし。
「なんだか、店の中で変な視線感じてさ。また唯狙いのおじ様の熱い視線かな」
「私は何も感じなかったけど?」
「多分慣れてるからでしょ」
「バカね、知恵里よりは鋭いんだから。何回あんたを色んなものから助けたと思ってんの」
「感謝感激雨あられ…」
「それ懐かしくない?…まあ、気のせいでしょ。にぶちんの知恵里が気づいて、私が気づかないなんて有り得ないし。
」
「うぃーむっしゅ」
「……」
気のせい。その言葉に安心してしまっていた。
私が本気出した時の不幸、舐めてたかも…