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ナマエ

作者: 山上きつね


では、スタート。


カチカチカチ……。


僕の名前はなんといったらいいのでしょう。

皆さんの中にだって「同姓同名」の知人がいるのかもいれない。

だったら、僕の名前を明かしたところでそれは「僕」ではなく「同姓同名」になってしまうのではないかと、僕は思います。


「君の名前はなに?」


そう聞く人は何のために聞くのでしょう。

自分と同じ名前だったらどうするつもりだったのでしょう。

残念なことに、僕はその人とは違う名前でした。なので、答えを知ることはできませんでした。

ちなみにどうやってわかったかというと、「先に名乗るのが礼儀じゃないの?」と聞いたからです。

僕は名乗ったかどうかは忘れました。

きっとその人も忘れてくれたでしょう。


カチカチカチカチ……。

一分経過。


人とのつながりは「名前」ではないかと思います。

だからひとは関係をつくるために互いに名乗っているのではないでしょうか。

名乗り出るのは、知ってほしいから。

名をあげるのは、もっと知ってほしいから。

歴史に名を残すのは、もっともっと知ってほしいから。

昔の人の行動は、こうやって勉強していく僕たちを苦しめることになるのに。

そんな関係をつくるとは考えず、人は自分の存在を残していく。

それは死にたくないことと似ている。

または、生き物の運命(さだめ)とした、子孫繁栄にも似ている。


「名前」自分の生きた証しだから。


しかし、名家が遺産相続で滅びる事件とか、王族が民衆の怒りを買って一族滅亡とかがあるように、いつかはそのつながりは途切れていく。

証拠に。


「なぁ、テストの問3。革命起こしたの奴の名前なんだっけ」

「忘れたよそんなの。それより次の英語の単語を覚えなきゃいけないんだから。余計なこと言わないで」


ほらね。

誰にも気づかれない嘲笑はチャイムによって消された。

貴方達もこういった時間の経過によって消されたのだ。


カチカチカチカチカチカチ……。

十分経過。


さて。

別に事件解決の探偵じゃないけど、さて。

僕の名前は知られています。

いくら隠したって知られるわけなのです。

持ち物に名前を書くのだって自分のものだと証明するのと同じで、物と自分のつながりを保っているだけなのです。

しかし、保ち続けた結果。皆に僕の名前は知られました。

つながりを得てしまいました。


しかしこれも同じことです。

皆はそのうち僕の名前なんて忘れてしまって、余計なものに分類して捨てられてしまうのです。

あの人もあの人もあの人も。

きっと明日には僕の名前を一文字も覚えてはいないでしょう。

そうして僕はなんのつながりも持たず、残さず、時の中の人になるのです。

秒針は規則正しくなっています。


カチカチと。カチカチカチと。


この中で人はいくつもの事を覚えます。

その中に僕なんかが入れる隙間はありません。

なので僕は進んで進みません。

僕の周りは常に無音。無色。無味無臭。

透明な殻に入ってこのナンニモナイ空間で死にましょう。


カチカチカチ……。

二十分経過。


「ねぇ」


カチカチカチ……。

三十分経過。


「ねぇってば」


カチカチカチ……。

四十分経過。


「シカトかい!」

「イタッ!!」


カチカチカチ……。


「たかだか十代の女子のチョップで痛がるな!情けない!」

「……」

「や、やだ!そんなに痛かった?恐るべし十代の女子のチョップ!というか私!言葉も失うほどの激痛だったとは知らなくてごめんなさい!もしかして言葉も失うほど良い一撃だったと感じるそんな性癖の人とは知らなくてごめんなさい!」

「……」

「…………。私謝らなくていいじゃん!」

「イタッ!!」


カチカチカチ……。


「君がどういった人とかは今はいいよ!今だけね!そうその今!君は、これからのことを考えて私にするべきことがある!」

「……」


カチカチカチ……。


「私が名乗ったのだから、君も名乗るべきだよ」


カチカチカチカチカチカチカチカチカチ……。


「……言ったじゃないか」

「あ、喋った。良かった―。舌は無事だったんだね」

「……「名前」を名乗ることがどういうことになるか、言ったじゃないか」

「あー、アレね。うんうん中々わかるよ。テストとか、特に日本史とか、似たような名前や事件とあるよね!まぎらわしいのとかむかつくよねー。でも結構解けたんだよー。」

「……」

「…………。テストの話じゃない!」

「イタッ!!」


カチカチカチ……。


「……だから。僕は名乗りたくなんかないんだよ。むしろ遠慮してるんだ。名乗ったところで、忘れられるなら、名乗らなければいいじゃないか。むしろ失礼じゃないか。人さまの記憶スペースにどうせ必要のないモンが入ってるなんて。そんなの最初っから開けといて、もっと有意義なものに使えよ。と僕は言ってるんです。フェアリーさん」

カチ。

「あ、私のニックネームだ。」

カチ。

「第一、僕と接することすらどうせ消えていく記憶だ。ほら、見てご覧よ。さっきまで話し合っていたアスちゃんとラバだって今は全く別の奴と楽しそうに名前呼び合ってるじゃないか」

カチ。

「あれは二人とも照れてるんだよ。男子と女子が話すだけで目立っちゃうし、あれは話せたことが嬉しかったんじゃないかな?二人が恋人になるのも遅かれ早かれってやつだね」

カチ。

「それなら、今こうして話している僕たちだって目立っているよ。ホラ、君の友達のウェンディさんとピーターくんだってこちらを心配そうに見ているし。噂好きで新聞部の百聞くんにもなんかメモとられてるし」

カチ。

「うわわ、恥ずかしいなぁ。もう、見ないでよぅ!コラ百聞!なんのガッツポーズだ!」

カチ。

「だから君は、君の中に僕の名前も存在も残したくないという僕の心意気をどうか受け止めて。今すぐにここから離れて元いた場所に帰るんだ」

カチ。

「そ、そんな捨てられたペットみたいに」

カチ。

「捨てたんだよ。僕は君との関係も。つながりも。だから君も僕を捨ててくれよ。ダレカさん」


カチ。


カ……。


「なんじゃそりゃぁああ!!」


バチン!とそれはそれはいい音が鳴った。それはそれはガヤガヤと色の違う騒音が主張をやめるほどに。

しかし音のなった場所―つまり僕の頬―は痛みを脳に直接送り込んでくる。

こんなことは覚えたくないのに。


「君ってやつは!君ってやつはさぁ!そんなに人のこと考えているのなら、私の願いを聞いてよ!」


覚えたくないなら、覚えたくないから消そう。

記憶の中にこんなものはいらない。僕に何かが関わってできた痛みなんていらない。


「もういっちょ言うけど!君のは自己防衛だ!忘れることが怖いんだろ!忘れられることが怖いんだろ!」


だって僕が痛みを負うことは、痛みを負わせた人に非が。

だから忘れよう。

忘れるんだ。早く忘れろ。忘れてしまえ。


「だから君は忘れない!君は覚えているんだ!皆のニックネーム知ってるのもそうだからだろ!怖いから!つながりを無くすことが怖いから!」


忘れなさい。忘れてください。

僕のことなんか。忘れてしまって。

あなたをきずつけるぼくなんて。


「そんな良い人の名前くらい、知りたいじゃないかぁ!!」


忘れて忘れて忘れて忘れて忘れて忘れて。


「忘れないから、教えろやコラーーーー!!」


カチン。


「……本当に?」


その時。確かに僕の中で時は止まりました。

時が進めば、皆は僕を忘れるのなら、時が止まってくれたらいいといつも願っていました。

その中でなら、例え夢の中でも僕を生きていてもいいということになると思っていたからです。


「ていうかフェアリーちゃんさぁ。コイツの名前マジで分かんないの?」

「漢字難しい!だから教えろコノヤロー!!」

「キレちゃってる……。ちょっと百聞くん。アンタなら知ってんでしょ?」

「知らないこともない」

「ダメ!コイツから直接聞かなきゃやってらんない!」

「フェアリーちゃんはキレると頑固だし曲げないからなぁ。ここは君が折れてくんない?だから」


「君の名前はなに?」


時が止まってくれたおかげか、皆が僕に関わろうとしました。

いいんでしょうか。

こんな僕が、皆の中に何か残してもいいのでしょうか。


「……僕の、名前は」


カチカチカチ……。

一分経過。

カチカチカチ……。

十分経過。


皆に僕の名前を教えてしばらく経ちました。

けれど皆はまだ僕を覚えてくれます。

でもあとどのくらい?あとどのくらい時が経過したらこの夢は覚めてしまうのでしょう。


「君はまたバカなことを考えてはいない?」


今度は軽くチョップされ、その軽さが感覚の無い夢の中である錯覚を強めた。


「友達の名前を忘れるわけないじゃん!」


目覚めてしまうようなまぶしい笑顔に照らされ、あまりのまぶしさに泣いてしまいそうでした。


カチカチカチ……。


時は相変わらず規則的に過ぎていきます。


「そういえば君の素朴な疑問だったアレなんだけど」


僕たちの中にもそれは変わらず流れていき、止まることなんか決してありません。


「私だったら、自分の名前と一緒の人がいたら」


それでも僕は。僕たちは。


「『絶対に忘れないね!』とか言っちゃうかもしんない!」


このつながりをきっと忘れることなく、残していけるだろう。


END



〇あとがき〇

初です。

『名前』をテーマにするのが好きです。

忘れられることが嫌で、覚えられたくなく。

また忘れてしまうことが傷つけることと分かっているので、覚えている。

そんな男の子でした。

ちなみに出している名前は全部ニックネームです。

この本名の人、またはニックネームの人ごめんなさい!

変なキャラでごめんなさい!


ちなみに名前講座!

フェアリーさん。ウェンディさん。ピーターくんは。もう『ピーターパン』です。

僕らはまだまだ子供です。

ラバとアスで『ラバース』

っていうかどんな名前でこのニックネームだよ(特にラバ)

百聞くんは『百聞は一見にしかず』

記憶って、目より耳のほうが強いって聞いた気がする。

だから聞いて覚えているよ。(僕の名前)

最後に僕の名前はありません。いや、あるけど!決めてません!

とりあえず難しい感じの名前です。

だから記憶に留まりにくいから、忘れられていくという自分の名前のコンプレックスだったのかも。ね。


こんな感じの話をこれからも気が乗れば書いていきます!

よろしくお願いします!


以上!


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