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果てしなく長く凍りついた日  作者: 双鶴


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第4章 山が拒む

霧嶽高原センターの外に出ると、空気はさらに重く沈んでいた。

灰が風に乗って舞い、視界は薄い霧のように揺らぎ、

遠くの霧嶽は、黒い噴煙を絶え間なく吐き続けていた。


「救助隊、出るぞ!」


怒号のような声が響き、三上遼は反射的に振り向いた。

自衛隊、消防、警察の合同救助隊が、山頂へ向かう準備を整えていた。

ヘルメット、酸素ボンベ、防護服。

その姿は、まるで戦場へ向かう兵士のようだった。


「噴石の落下に注意しろ!」

「視界は最悪だ、ロープを離すな!」


隊員たちの声は張り詰めていた。

その緊張が、空気を震わせる。


三上はカメラを構えながら、胸の奥が冷たくなるのを感じた。


――彼らも恐れている。

――だが、それでも行く。


救助隊が山道へ向かって走り出した。

その背中を見送りながら、三上は無意識に拳を握りしめていた。


「三上さん!」


霧ノ谷警察署の山岸巡査部長が駆け寄ってきた。

顔は灰で汚れ、息が荒い。


「山頂付近、状況が悪化してる。噴石が大きくなってるんだ」


「……救助隊は?」


山岸は短く首を振った。


「行くしかない。でも……戻れる保証はない」


その言葉は、三上の胸に重く沈んだ。


救助隊が山道を進むにつれ、噴煙はさらに濃くなり、

風が方向を変えるたび、灰が渦を巻いた。


「視界ゼロだ! ロープを確認しろ!」

「噴石、上から来るぞ!」


怒号が山道に響く。

三上は望遠レンズ越しにその様子を追った。


その瞬間だった。


山の上から、巨大な噴石が落ちてきた。

地面に叩きつけられ、灰が爆発するように舞い上がる。


「退避! 退避!」


救助隊が一斉に身を伏せた。

三上の心臓が跳ね上がる。


――山が、拒んでいる。


自然は、助けようとする人間さえ拒絶していた。


救助隊は再び立ち上がり、前へ進もうとした。

だが、次の瞬間、さらに大きな噴石が落ちた。


「これ以上は無理だ! 一旦戻る!」


その声は、敗北の宣告のように響いた。


救助隊が山道を引き返してくる。

その顔には、悔しさと無力感が滲んでいた。


「……ダメだったのか」


三上は呟いた。

その声は、自分でも驚くほど小さかった。


山岸が肩で息をしながら言った。


「噴石が止まらない。風向きも悪い。ヘリも近づけない。

 ……今は、どうすることもできない」


三上は、胸の奥が凍りつくのを感じた。


――助けたいのに、助けられない。

――それが、今日の現実なのか。


救助隊の背中は、重く沈んで見えた。

その沈黙が、何よりも雄弁だった。


三上は空を見上げた。

霧嶽は、黒い噴煙を吐き続けていた。


その静けさが、何よりも残酷だった。


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