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果てしなく長く凍りついた日  作者: 双鶴


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第14章 最初の発見

朝の光は、冷たかった。


霧嶽高原センターの前で、

三上遼は無線機を握りしめていた。

夜明けとともに再出動した救助隊は、

すでに山道の奥へと消えている。


風は弱く、噴煙は薄い。

だが、その静けさが逆に不気味だった。


――光が戻った。

――だが、それは救いではない。


無線が震えた。


「……こちら第一班。

 山頂付近、視界良好。

 これより火口縁へ接近する」


センターの奥で、家族らしき人々が息を呑んだ。


「見つかる……?

 見つかるの……?」


その声は、祈りというより、

“願いの残骸”のようだった。


三上は、胸の奥が締め付けられるのを感じた。


山中巡査長が隣に立った。


「……ここから先は、覚悟が必要です」


三上は頷いた。

覚悟という言葉の重さが、

朝の光よりも冷たく感じられた。


無線が再び震えた。


「……こちら第一班。

 火口縁に到達。

 周囲に噴石多数……」


雑音が混じる。

風が強くなったのか、

無線の向こうで砂利が転がる音がした。


「……視界、確保……

 ……人影……確認……」


その瞬間、

センターの空気が凍りついた。


家族の誰かが、

小さく悲鳴のような声を漏らした。


三上は、無意識に息を止めた。


「第一班、繰り返せ。

 人影を確認したのか」


山中の声が震えていた。


無線の向こうで、

隊員たちの息が荒くなる。


「……はい。

 人影……複数……

 ただし……」


沈黙。


その沈黙が、

朝の光よりも鋭く胸に刺さった。


「……反応なし。

 動き……確認できず」


センターの奥で、

誰かが崩れ落ちた。


「いやだ……いやだ……!」


泣き声が、

朝の冷たい空気を震わせた。


三上は、カメラを握りしめた。

指が震えていた。


――これが、光が照らしたものか。


無線が続けた。


「……至近距離で確認中……

 ……状態は……」


雑音。

風の音。

隊員の短い叫び。


そして──


「……死亡を確認」


その言葉は、

山の静けさよりも冷たく、

噴煙よりも重く、

三上の胸に沈んだ。


センターの前で、

家族の叫びが響いた。


「嘘だ……嘘だ……返してよ……!」


その声は、

朝の光に溶けることなく、

ただ、地面に落ちていった。


三上は、空を見上げた。


霧嶽は、

朝の光の中で、

黒い噴煙を静かに吐き続けていた。


その静けさは、

夜よりも深く、

夜よりも冷たく、

夜よりも残酷だった。


――光は、救いではない。

――光は、現実を照らすだけだ。


三上は、胸の奥で何かが静かに崩れるのを感じた。


そして、

その崩れた場所に、

“書かなければならない言葉”が

ゆっくりと積もり始めていた。


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