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果てしなく長く凍りついた日  作者: 双鶴


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第13章 夜明けの光

東の空が、わずかに白み始めていた。


霧嶽高原センターの外は、

夜の闇がゆっくりと後退し、

灰色の世界が再び姿を現しつつあった。


だが、その光は温かくなかった。

冷たく、硬く、

まるで“現実”そのもののようだった。


三上遼は、センターの外に立ち尽くしていた。

一睡もしていない。

目の奥が痛む。

だが、眠気はなかった。


――夜が終わる。

――だが、この一日は終わらない。


そのとき、無線が震えた。


「……こちら救助隊本部。

 夜明けとともに、再出動を開始する」


センターの奥で、隊員たちが動き始めた。

ヘルメットのバックルが鳴り、

防護服のファスナーが上がり、

金属音が静寂を切り裂く。


山中巡査長が三上に近づいた。


「……行きます。

 今度こそ、山頂まで」


三上は、無意識に息を呑んだ。


「噴煙は?」


「弱まっている。

 風向きも変わった。

 ただ……噴石はまだ危険だ」


山中の声は静かだったが、

その奥にある緊張は隠せなかった。


救助隊の隊長が声を張り上げた。


「全員、準備はいいか!

 今日は……必ず、誰かを連れて帰る!」


その言葉に、

隊員たちが短く頷いた。


その頷きは、

決意というより、

“覚悟”に近かった。


三上は、カメラを握りしめた。


――彼らは恐れている。

――だが、それでも行く。


その姿が、胸に刺さった。


救助隊が山道へ向かって走り出す。

朝の光が彼らの背中を照らし、

その影が長く伸びていく。


三上は、その影を見つめながら思った。


――この光は、誰を照らすのか。

――そして、誰を照らさないのか。


センターの入口では、

家族らしき人々が震える声で祈っていた。


「どうか……どうか無事で……」


その声は、

朝の冷たい空気に震えていた。


三上は、深く息を吸った。

灰の匂いが肺に入り、

胸の奥が痛んだ。


無線が再び震えた。


「……こちら第一班。

 視界、良好。

 山頂方面へ進行中」


その声は、

夜の無線とは違い、

わずかに希望を含んでいた。


だが、三上は知っていた。


――希望は、残酷だ。


朝の光は、

山の斜面を照らし始めていた。


その光が、

何を照らし、

何を暴き出すのか。


三上は、胸の奥で何かが静かに軋むのを感じた。


夜が終わり、

光が戻った。


だが、

それは救いではなく、

“現実の始まり”だった。


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