内側の表側 ~童話『銀の鳥の庭の中』~
〇月×日 △曜日
この日記も、もうそろそろ終わりにしたいと思います。
なぜって、これを読んでる貴方なら分かるでしょう? そう、私はもう時期羽ばたくことができるのです。あんなに弱々しくて何も出来なかった雛鳥は、ようやくあの蒼の中を飛べるのです。この時を、いったいどれ程待ち焦がれたことでしょう。
と、そんな前置きは置いといて。終わりの、いえ、始まりの記念として、あの童話の続きを書き写していこうと思います。
ですが、幸せというものは永遠に続くものではありません。真の幸福とは、非常に短い時間でしか味わえないのです。
なんと、銀の鳥はある日突然猟師の前から姿を消したのです。どこを探しても、何日探しても銀の鳥を見つける事はかないませんでした。絶望に暮れた猟師は、この世界から消える事を試みます。何せ、松明の無い暗闇の中ででは、どうやったって生きていけはしないのですから。
猟師は、毒を仰ぎました。ですが一向に毒の効き目がやってきません。そこで猟師は、ある衝撃的な事実を知る事になるのです。消えたと思っていた銀の鳥は、実は、猟師の心臓となっていたのです。猟師は驚きの後、子供のように泣き始めました。
松明は、いつだって自分の内側にあったのです。猟師は全くそのことに気が付きませんでした。それどころか、灯火を灯す柱が元々存在していたことさえ、知らなかったのです。
ですがそれは、猟師だけでなく、多くの人々が忘れていることなのです。自分自身の中に灯火があるということ、その事実を知らない人間は多く、あまつさえ、時にはそれを知らないまま自らの世界を諦めてしまうこともあるのです。
ですが、猟師はまだ勘違いをしていました。それは、銀の鳥が猟師の心臓になったのではなく、猟師の心臓がいつの間にか銀の鳥になっていたということです。猟師は、満ち足りた生活をするにあたり、善良な精神を持つようになっておりました。それが、彼が銀の鳥となった主な理由の一つです。
猟師はもう以前と違い、自らの力で羽ばたくことができるのです。それを悟り、彼の探していた銀の鳥は彼の元を去ったのです。
ですが、そんな猟師の飛んでゆく空が、果たしてどのような世界をしているのかは、銀の鳥には分かりませんでした。それは、猟師自身が、自分が誰かにとっての銀の鳥――幸福の証だと知る必要があるからです。
こうして猟師は、新たな人生へと羽ばたき始めました。
おしまいです。どうでしょうか? 少しは字は上手くなっているでしょうか? 彼に見せても恥ずかしくない程度にはなっているでしょうか?
と質問しつつも、もうそのようなことは関係ありませんでした。何せ、私も彼のおかげで、羽ばたくことができるからです。
どうかこの童話が、あなたの中の銀の鳥を思い出させてくれますように。そして、あなたが誰かの銀の鳥になれますように。といっても、私の心配のしすぎですね。
だってあなたは、一見寂しそうに見えても、名も知らない他人の私があげた木の実を、その場ですぐに飲み込んでしまうような勇敢な女の子ですもの。
これでこの物語は完結です。拙作に目を通してくださった方、本当にありがとうございます。
どうか、あなたの胸に、何にも変え難い銀の鳥が宿ることを祈っております。




