1章2 巫女のバイト
神社の鳥居をくぐると、金髪に赤縁メガネ、白と赤の巫女装束を身に纏った杏里が立っていた。深々とお辞儀をし、参拝客に向かって控えめに挨拶を返す。その仕草ひとつひとつが、普段の無邪気さとは違う凛とした空気を漂わせていた。
杏里さんは視力が良いので伊達メガネだ。
…メガネっ娘いいよね。
旦那さんは遠目から見守る。潜入なんて大げさなことをしなくても、彼女の一挙手一投足を見るだけで、胸が少しざわつく。
「……やっぱり、杏里さんの巫女装束いいな。スマホの待ち受けにしよ」
心の中でそう呟く。
参道の片隅で、ヤンキー三人組が杏里に声をかけ、腕を掴もうとした。
「…やばい!!」
瞬間、彼女は軽く手を振る。空間が微かに揺れ、腕を掴もうとした手が弾かれるように動いた。
驚いたヤンキーたちは立ちすくむ。旦那さんはすぐそばまで駆け寄ったが、杏里は淡々と状況を制していた。気づいた警備員が駆けつけ、事態は収まった。
その後、公園のベンチで二人は並ぶ。
「巫女装束恥ずかしいから見に来るなって言ったじゃん!」
「ごめん、家宝にしたくて」
「バーカ」
彼女の顔が少し赤くなるのを見て、旦那さんは微笑むしかなかった。