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零界を旅する一般人  作者: 獏麒


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9.混沌に微睡む


 光が収束し、次の瞬間――空気の匂いが変わった。

 湿った土の匂いから、金属と薬草の混じる乾いた空気へ。

 視界が安定すると、そこには高層塔の群れが立ち並び、いくつもの光路が空を走っていた。

 宙を流れる魔導情報線〈アークライン〉、浮遊する研究艇、そして時折空を渡る小型の竜。

 ここが――アーカム・ネリア。

 オリジン最大の魔導学研究都市にして、“理と狂気の都”と呼ばれる場所だった。


 淡い霧が漂う石畳の街。静謐な鐘の音がどこかから響き、空には無数の魔導線が走っている。

 街全体が巨大な思考装置のように、緩やかに呼吸していた。

 ダルニャータが鼻先をくすぐる風を嗅ぐ。


「ミルダートが混沌の都なら、ここは秩序の迷宮ニャ」


「……すご……」

 思わず呟いた海斗の声が、塔の外壁に反響して返る。

 転送の余韻で脚がふらつくが、それ以上に好奇心が勝った。

 ミルダートの混沌とは違う。ここには秩序がありながら、それがどこか歪んでいる。

 理を追う知性と、理解を越えた情熱が同じ比率で混ざり合う街――そんな印象だった。


「ここからは徒歩ニャ。教授の研究棟までは案内するニャ」

 ダルニャータの尻尾が揺れる。

 シルヴィーが肩をすくめた。「あの人のことだから、きっと散らかしてるわよ」

「片付けておくって言ってたけどな……」

「その“片付ける”が、一般基準と一致してるとは思えないニャ」


 案内を受けてたどり着いたのは、第七研究棟――考古学研究ゼミ。

 ドアには「研究中・起こすな」と書かれた札。


「……嫌な予感しかしない」

 海斗が呟くと、シルヴィーは苦笑してノックした。


「教授? 落人、連れてきたわよ」

 反応なし。

 ドアを開けると、そこは――混沌そのものだった。


 書類の山、魔導装置のパーツ、転がるトマトジュースの缶。

 壁際の棚には瓶詰めの標本と魔晶石が無造作に並び、

 空中には半壊した魔導ドローンがゆっくりと漂っている。

 そして奥のソファでは、書類や乱雑に脱ぎ捨てられた白衣に埋もれて、ひとりの女が眠っていた。


 長い黒髪は寝癖で波打ち、髪の隙間から尖った耳がのぞく。

 その肌は月光を溶かしたように白い。

 白衣の下は黒いシャツと短めのパンツ、足元は履き古したサンダル。

 知性と無頓着が奇妙に同居している。


「呼んでおいて寝てるのかよ……」

「うむ、これぞ我らが教授ニャ」

 ダルニャータが尻尾で紙束をつつくと、エリカがゆっくり顔を上げた。

 乱れた前髪の隙間から覗く紅の瞳が、一瞬で空気を支配する。

 眠たげな声の奥には、鋭い観察者の気配があった。


「……ん……? 誰……? ……あなたね。私の“直感”が呼んだ人」

 その声は穏やかで、けれど確信に満ちていた。

 海斗は思わず姿勢を正す。


 ――この出会いが、この教授が、自分が求める“答え”を導いてくれるかもしれない、と。


読んでくださりありがとうございます。


今日はここまでです

次回もお時間をいただけると嬉しいです。


応援してやるっという素敵な方は

レビューとか評価とかブックマークとかしていただくと

作者が泣いて興奮して喜びます。あと、更新が早まるかもです。よろしくお願い致します。

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