表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
零界を旅する一般人  作者: 獏麒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/51

6.混沌の街の朝市場


 夜が明けると、世界が一変していた。

 淡い金色の光が大地を照らし、赤土の地平線の向こうに、巨大な結界壁が見えてくる。

 それは青白い半透明の膜で、陽光を受けて波のように揺らめいていた。


「あれが……ミルダート?」

「そうニャ。魔導都市圏の玄関口ニャ。オリジンでいちばん“混ざった街”でもあるニャ」

「混ざった?」

「人もモノも思想も――上位世界の落とし物が、全部ここに集まるのニャ。混ぜ物の都、ってやつニャ」


 バイクが結界を通過すると、空気の密度が変わった。

 まるで見えない水面を割ったような感覚。

 耳の奥で微かな鈴の音が鳴り、光の粒が肌を撫でていく。


 そして――目の前に広がったのは、色と形が乱舞する世界だった。


 高層の塔が空に伸び、その隣に茅葺き屋根の民家。

 浮遊する搬送車が上空を通り過ぎれば、路地裏では鍛冶屋が鉄を打つ音が響く。

 通りを歩くのは、翼のある種族、金属の腕を持つ人間、耳の尖ったエルフ、透明な皮膚の少女。

 誰もがそれを“普通”として受け入れていた。


「……すげぇ。まるで未来都市と中世が合体したみたいだ」

「ここはそういう場所ニャ。時代も世界も、ぜんぶ折り重なってるニャ」

 ダルニャータが尻尾で軽く合図すると、魔導ドローンが頭上を横切り、街の案内広告を投影する。


 “ミルダート転送塔 本日の通行制限:第三区以降”

 “ギルド通り 再生薬草セール開催中”


 カイトは目を丸くした。

 見たこともない言語が、次の瞬間には日本語に変換される。

「……これ、俺に合わせてる?」

「翻訳結界ニャ。都市全体に張られてる。言葉の違いで揉めるのは効率が悪いニャ」


 歩道の脇を、魔導車が音もなく滑るように走り抜けていく。

 魔力灯が淡く点滅し、通りには香ばしい匂いが漂っていた。

 どうやら屋台街に近づいているようだ。


「そろそろ腹ごしらえニャ。人間はエネルギーがすぐ切れるニャ」

「おいおい、猫に言われたくないけど……正直、腹減った」

「にゃはは、素直でよろしい」


 通りを曲がると、一気に喧騒が広がった。

 鉄板で焼ける肉の音、果実を搾る香り、香辛料と甘味の入り混じる匂い。

 屋台の主人たちは種族も姿もバラバラで、だがそれぞれの手つきは慣れたものだった。


「ほら、ここは“異界市場バザール”。

 ミルダートに来たら、まずここを見ろって旅人の常識ニャ」


 頭上を見上げると、浮遊する魔導ランプが朝陽の代わりに通りを照らしている。

 人々の喧騒が、どこか懐かしく、心地よかった。


 香辛料の匂いが風に混じり、通りを抜けていく。

 バイクを預け、三人はしばし徒歩で街を回ることにした。

 行商人の呼び声、子供たちの笑い声、空を飛ぶ使い魔。


 カイトは深呼吸をした。

 この混沌に自分が混ざるようで、"異世界で生きている”という実感が、静かに胸の底に落ちていった。


読んでくださりありがとうございます。

次回もお時間をいただけると嬉しいです。


応援してやるっという素敵な方は

レビューとか評価とかブックマークとかしていただくと

作者が泣いて興奮して喜びます。あと、更新が早まるかもです。よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ