27.理を編む者
淡い光が導くように、三人は通路の奥へ進んでいた。
その先に広がるのは、巨大な円形空間。
天井を支える柱は金属の樹木のように枝分かれし、その中心に――巨大な結晶〈中央コア〉が浮かんでいた。
青白い光が鼓動のように脈打ち、空気そのものが震えている。
「……やっと見つけたわね」
イリスが息を整え、魔導板を起動させた。
測定値は振り切れ、コアから放たれる魔力の波が周囲の空間を撓ませている。
カイトは目を凝らし、構造を観察する。
「この構造……なんだろう……これまでのマギアビースト、ゴーレム、遺跡のギミック、そしてスライムと理を見てきたけど……何か無理矢理ちぎれたような感じなんだよな」
「暴走してるからではなく……“ちぎれたから暴走した”ということですか?」
イリスの問いに、カイトは頷いた。
「うん。多分だけど……本来、魔力を集めて理を制御して、遺跡の範囲内で魔法を使っていた。
でも、ある時に何かが起きて、その理の流れを断ち切られたんだと思う。だから今は制御できずに、各地で暴走してる」
マチルダが顎に手を当てる。
「じゃあこの古代遺跡は、理を制御できていたのに……何かに“傷つけられた”ってことかい?」
「そういうことかも知れませんね。けど、いずれにせよ今のコアは不安定です」
イリスが魔導板を操作しながら、淡々と指示を出す。
「観察は後です。今は魔力の横流しを試しましょう。カイト君、この紋様――ここの記述。今までの研究では“魔力変換リンク”とされてます。ここから私の氷結魔法に直接供給できそうですか?」
「理論上ならいけると思う。制御層を励起して流れを変えれば、コアから魔力を引き出せるかも」
カイトが床に膝をつき、魔導端末を接続する。
柱の光が脈打ち始め、空気が低く唸る。
イリスは詠唱の構えを取り、深呼吸をひとつ。
「……魔力励起、開始。循環安定……出力上昇……」
彼女の指先が光り、コアの輝きと共鳴を始めた。
その瞬間、床が微かに震えた。
広間の奥から、あの“音”が近づいてくる――
ぬるり、と粘性の波が通路を押し流し、巨大な影が姿を現した。
「来たか……!」
マチルダが剣を抜く。光が刃に宿り、空間を照らす。
スライムの巨体が壁を這い、天井から滴り落ちる。
その中心には青い核があり、理の光が暴れ狂っていた。
「マチルダさん、時間を稼いで!」
「任せろ!」
剣が閃き、衝撃波が広間を駆ける。スライムが弾け、無数の粘塊が飛び散った。
しかし、それらはすぐに結合し、再び形を取り戻す。
「やっぱり通常攻撃じゃ無理か!」
「カイト君、もう少しだけ――!」
カイトの手が紋様の上を走る。
「制御層励起、成功……魔力ライン接続!」
柱の光が一気に明るくなり、イリスの魔導板に数値が走る。
彼女は息を吸い込み、声を放った。
「魔力励起完了!――凍てつき、沈め!大氷棺!」
空気が一瞬で凍りついた。
青白い魔法陣が足元から展開し、巨大な氷柱がスライムを包み込む。
その動きはゆっくりと鈍化し、核を中心に凍結が広がっていく。
マチルダが前に出る。
「今だ!」
光剣が走る――轟音と共に、氷と粘体をまとめて断ち切った。
爆ぜるような音のあと、静寂。
スライムの体は崩れ落ち、青い核が粉となって消える。
広間を包む冷気の中、三人は息を整えた。
「……成功、ね」
イリスが肩を落とす。
「完璧な連携だったな。ぶっつけ本番でこれなら十分でしょ」
カイトが笑うと、マチルダも剣を背に戻して満足そうに頷いた。
氷の残骸の向こうで、コアの光が安定し始めていた。
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