21.霧に沈む遺跡
正式に冒険者となったカイトは装備を整え、研究室に戻ったところで特級冒険者マチルダ・ハートランドと出会う。
彼女の勢いに圧倒されつつ話を聞くと、教授の依頼で呼ばれていたことが判明する。
そこへ教授とイリスが戻り、言い合いの末に教授が折れ、カイト・イリス・マチルダの三人による調査隊が結成された。
ーーーーーーーーーー
転送塔の光が消えると、三人の足元には赤い岩肌の大地が広がっていた。
空気はざらつき、胸の奥に微かな重みを残す。
霧の中には淡い光を帯びた魔力の粒が漂い、触れると肌にまとわりつくようだった。
マチルダが肩を回しながら空を見上げる。
「相変わらず息苦しいな。ここの魔力は濃すぎる」
「この村でも魔力が少し乱れていますね。計測値が安定しません」
イリスが魔導板を確認しながら頷く。
「転送塔が維持されているのが奇跡です。ここはヘルダム・シン最寄りの村。正式な街ではありませんが、遺跡調査用に例外的に整備されているんです」
村の周囲には簡素な柵と魔除けの結界柱が並び、遠くでは研究者風の人々が資材を運んでいた。
三人は簡単な補給を済ませ、村長らしき老人に挨拶をする。
「最近、遺跡の方角がたまに光るんだが……前より頻度が多い気がしてな。あれは何なんだろうな」
老人の不安げな声に、マチルダが軽く笑った。
「心配いらない。原因はこれから確かめに行く」
そう言って彼女は酒瓶を腰にぶら下げたまま、軽やかに歩き出した。
村を出てから、道は狭い峡谷へと続いていた。
赤い岩肌の合間を抜ける風が熱を帯び、霧が靄のように漂う。
魔力の濃度が上がるにつれ、光の粒が青白く変わっていく。
地面のひび割れからは微かな蒸気が漏れ、時おり雷のような音が遠くで鳴った。
「この先を半日ほど進めば、ヘルダム・シンの外郭に出ます」
イリスがそう言い終えた瞬間、前方の岩陰から低い唸りが響いた。
霧の中から、四足の獣が姿を現す。
毛並みの隙間で青い火花が踊り、目は理の光を孕み、陽炎のように揺らめいている。
「マギアビースト……! 魔力に侵食された個体ですね!」
「おおかた遺跡の魔力を吸って暴走したんだろうな」
マチルダが剣を抜き、刃先を霧に向けた。
獣が飛びかかる。咄嗟にイリスが風の魔法を放ち、結界を展開した。
「カイト君、後ろに下がってください!」
「りょ、了解!」
風圧が吹き抜け、霧が裂ける。マチルダの剣閃が閃光のように走り、獣の胴を切り裂いた。
火花のように光が散り、獣の身体が崩れ落ちる。
残った毛皮の下には、青い結晶のようなものが瞬き、すぐに霧へと溶けていった。
「……今の結晶みたいなのが理の断片?」
「ええ。魔力の乱れで生命が理に干渉して、一瞬だけ形を得たんです」
イリスが頷き、魔導板に記録をとる。
カイトは息を整えながら、その光の余韻を見つめていた。
やがて、霧の向こうに淡い光が走った。
赤岩の谷の先――崩れた塔と円環状の城壁が浮かび上がる。
地表には露出した金属構造が絡み合い、低い唸りとともに魔力が波打っていた。
その光景に、カイトは息をのむ。
まるで遺跡そのものが、彼らの到来を察して目を覚ましたかのようだった。
「見えたよ。あれがヘルダム・シンだ」
マチルダが剣を肩に担ぎ、口元を緩める。
「さぁ、ここからが本番だ」
滑り込み!
読んでくださりありがとうございます。
次回もお時間をいただけると嬉しいです。
またストックが…
応援してくださるという優しいなは
レビューとか評価、感想、批評、ブックマークとかしていただくと作者が泣いて興奮して喜びます。
あと、ストックが早く溜まるかもです。よろしくお願い致します。




