表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
零界を旅する一般人  作者: 獏麒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/51

21.霧に沈む遺跡


正式に冒険者となったカイトは装備を整え、研究室に戻ったところで特級冒険者マチルダ・ハートランドと出会う。

彼女の勢いに圧倒されつつ話を聞くと、教授の依頼で呼ばれていたことが判明する。

そこへ教授とイリスが戻り、言い合いの末に教授が折れ、カイト・イリス・マチルダの三人による調査隊が結成された。


ーーーーーーーーーー


 転送塔の光が消えると、三人の足元には赤い岩肌の大地が広がっていた。

 空気はざらつき、胸の奥に微かな重みを残す。

 霧の中には淡い光を帯びた魔力の粒が漂い、触れると肌にまとわりつくようだった。

 マチルダが肩を回しながら空を見上げる。

「相変わらず息苦しいな。ここの魔力は濃すぎる」

「この村でも魔力が少し乱れていますね。計測値が安定しません」

 イリスが魔導板を確認しながら頷く。

「転送塔が維持されているのが奇跡です。ここはヘルダム・シン最寄りの村。正式な街ではありませんが、遺跡調査用に例外的に整備されているんです」


 村の周囲には簡素な柵と魔除けの結界柱が並び、遠くでは研究者風の人々が資材を運んでいた。

 三人は簡単な補給を済ませ、村長らしき老人に挨拶をする。

「最近、遺跡の方角がたまに光るんだが……前より頻度が多い気がしてな。あれは何なんだろうな」

 老人の不安げな声に、マチルダが軽く笑った。

「心配いらない。原因はこれから確かめに行く」

 そう言って彼女は酒瓶を腰にぶら下げたまま、軽やかに歩き出した。


 村を出てから、道は狭い峡谷へと続いていた。

 赤い岩肌の合間を抜ける風が熱を帯び、霧が靄のように漂う。

 魔力の濃度が上がるにつれ、光の粒が青白く変わっていく。

 地面のひび割れからは微かな蒸気が漏れ、時おり雷のような音が遠くで鳴った。

「この先を半日ほど進めば、ヘルダム・シンの外郭に出ます」

 イリスがそう言い終えた瞬間、前方の岩陰から低い唸りが響いた。


 霧の中から、四足の獣が姿を現す。

 毛並みの隙間で青い火花が踊り、目は理の光を孕み、陽炎のように揺らめいている。

「マギアビースト……! 魔力に侵食された個体ですね!」

「おおかた遺跡の魔力を吸って暴走したんだろうな」

 マチルダが剣を抜き、刃先を霧に向けた。

 獣が飛びかかる。咄嗟にイリスが風の魔法を放ち、結界を展開した。

「カイト君、後ろに下がってください!」

「りょ、了解!」

 風圧が吹き抜け、霧が裂ける。マチルダの剣閃が閃光のように走り、獣の胴を切り裂いた。


 火花のように光が散り、獣の身体が崩れ落ちる。

 残った毛皮の下には、青い結晶のようなものが瞬き、すぐに霧へと溶けていった。

「……今の結晶みたいなのが理の断片?」

「ええ。魔力の乱れで生命が理に干渉して、一瞬だけ形を得たんです」

 イリスが頷き、魔導板に記録をとる。

 カイトは息を整えながら、その光の余韻を見つめていた。


 やがて、霧の向こうに淡い光が走った。

 赤岩の谷の先――崩れた塔と円環状の城壁が浮かび上がる。

 地表には露出した金属構造が絡み合い、低い唸りとともに魔力が波打っていた。

 その光景に、カイトは息をのむ。

 まるで遺跡そのものが、彼らの到来を察して目を覚ましたかのようだった。


「見えたよ。あれがヘルダム・シンだ」

 マチルダが剣を肩に担ぎ、口元を緩める。

「さぁ、ここからが本番だ」


滑り込み!


読んでくださりありがとうございます。

次回もお時間をいただけると嬉しいです。


またストックが…


応援してくださるという優しいなは

レビューとか評価、感想、批評、ブックマークとかしていただくと作者が泣いて興奮して喜びます。

あと、ストックが早く溜まるかもです。よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ