表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
零界を旅する一般人  作者: 獏麒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/51

16.風と刃との別れ


 登録を終えた後、四人はギルドの外へ出た。

 昼の陽光が石畳を照らし、通りを行き交う人々の影が長く伸びている。

 喧騒と匂いが渦巻く街の空気の中、カイトは手の中のカードをもう一度見つめた。

 硬質な金属の表面に浮かぶ自分の名――〈カイト・ランディーニ〉。

 それが、この世界で生きるための証であり、覚悟の象徴だった。


「これで正式に、オリジンでの一歩を踏み出したわけね」

 シルヴィーが微笑みながら言う。

「ニャ。これで教授も少しは満足するニャ。……たぶん、寝ながらだけど」

「寝ながら満足って、どんな状態だよ……」

 カイトが苦笑すると、ダルニャータが尻尾で軽く背中を叩いた。


「吾輩たちはこのあと、北の区画に戻るニャ。魔導バイクの整備もあるし、次の依頼も来てるニャ」

「…そろそろお別れ、ね…」

 シルヴィーの声が、少しだけ柔らかく沈む。

「カイト、あなたのこと、心配してるけど――たぶん大丈夫ね。あの教授の弟子なら」

「弟子というか……養子というか、被験者というか……」

「ふふ、それも含めて“縁”よ」


 シルヴィーは優しく笑い、手を差し出した。

 カイトもそれを握り返す。

「短い間だったけど、本当にありがとう。二人がいなかったら、今ここにいないと思う」

「なら、恩返しは“生きて学ぶ”ことニャ。世界を見て、理解して、いつか教授に負けない“理屈”を語るニャ」

「……ああ、約束する」

 

 その言葉に、ダルニャータの尻尾が満足げに揺れた。

 風が吹き抜け、二つの月が昼の空に淡く滲む。

 シルヴィーとダルニャータは軽く手を振り、通りの向こうへと歩き出した。

 その背中には、旅を続ける者だけが持つ静かな強さがあった。

 背中が小さくなるまで見送って、カイトは小さく息を吐く。


「……あの二人、いい人たちだね」

「ええ。私も教授に出会ってからの知り合いなんですけど、とても良くしてもらってます。教授よりずっと面倒見がいいです」

 イリスが微笑む。

「さて、私たちも戻りましょう。教授が起きてたら、報告くらいはしないと」

「起きてる確率、どれくらい?」

「……一割あれば良い方ですね」

「低っ!」


 二人の笑い声が、街の風に溶けていく。

 夕陽が差し込むと、アーカム・ネリアの高層塔が金色に輝き、影が重なり合って路地に模様を描いた。

 街の遠くでは、転送塔の光が再び明滅を始め、誰かが新たな旅へと出る合図を告げていた。


 カイトはもう一度、カードを握りしめる。

 未知の世界で、カイト・ランディーニとして。

 ――その名が示す未来を、これから自分の手で書き足していくために。


読んでくださりありがとうございます。

滑り込み!

次回もお時間をいただけると嬉しいです。


応援してやるっという素敵な方は

レビューとか評価とかブックマークとかしていただくと

作者が泣いて興奮して喜びます。あと、更新が早まるかもです。よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ