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零界を旅する一般人  作者: 獏麒


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15/51

15.カードに刻まれた名


 イリスは小さくため息をつき、板の光を消した。

「……あの人は、いつも少し危ういんです。けど、それでも追いかけたくなる。あの人の理屈には“熱”があるから」


 窓の外では、風が赤い屋根瓦を渡っていった。

 カイトは湯気の立つカップを見つめながら、教授の危うさと、この世界における“理”という言葉の重みを、ゆっくりと噛みしめた。


「ああ、教授の理論的魔法での契約は未完成の魔法だから、念のため冒険者ギルドで登録に不備がないか確認しましょうね。ギルドカードを発行すれば、正式に“冒険者”として活動できるので」

「カード……身分証みたいなものか?」

「そう。世界のどこで亡くなっても、登録された魔力反応で身元が確認できるから」


 イリスが言葉を締めくくると、食堂の下階からパンを焼く香ばしい匂いが漂ってきた。

 それを合図に、シルヴィーが席を立つ。

「それじゃ、午後はギルドに行きましょうか」

「ニャ。教授が寝てる間に全部終わらせるニャ」

 笑いながら立ち上がる二人を見て、カイトもまた息を整えた。


 ーーアーカム・ネリア冒険者ギルドーー

 巨大な時計塔のふもと、古びた石造りの建物。入り口の扉には竜と槍を象った紋章が刻まれている。

 中に入ると、ざわめきと金属の響きが混ざり合い、空気が熱を帯びていた。

 酒場のように開けたホールには、装備を整える者、依頼書を眺める者、そして報酬を受け取って歓声を上げる者たち。

 それぞれの冒険者が、己の物語を生きている。


「ここがギルドか……想像よりずっと活気があるな」

「依頼と戦いの中心ニャ。命と金と名誉が交わる場所ニャね」


 カウンターの奥では、銀髪の受付嬢が淡い魔導端末を操作していた。

 イリスが一歩前へ出て、手早く書類を差し出す。

「登録希望者です。教授――エリカ・ランディーニの研究補助員、兼、契約者としての確認をお願いしたいのですが」

「……ランディーニ教授? また難しい契約を通しにきましたね」

 受付嬢は苦笑しつつ、カイトを一瞥する。


「魔力登録を行います。右手をこちらの水晶に」

 カイトが促されるままに手をかざすと、水晶の内部に淡い雷光が走った。

 それは彼の魔力を読み取り、契約紋と共鳴している。

「反応は安定……ですが、これは……精霊契約ではありませんね?」

「はい、教授の研究によるものです」

 イリスが申し訳なさそうに肩を縮める。

「前にも何度かお話しさせていただいてますが、精霊を介さない契約は、無理矢理当てはめてるだけですからね?

…まぁ、内容に問題はありませんし、この契約でも基準魔力値を満たしています。だから登録を承認しますけど…」


 淡い光がカイトの掌に集まり、金属のカードが形を成す。

 刻まれた名は――カイト・ランディーニ。

「……本当に、登録されたんだ」

「これで正式に、君はこの世界での“冒険者”になったニャ。つまり吾輩達の後輩ニャ」

ダルニャータがにやりと笑う。


 ギルドの喧騒の中で、カイトは自分の新しい名と立場を見つめていた。

 ここから先、自分の“理”をどう刻むかは、もう自分次第だった。


読んでくださりありがとうございます。

今日も2話更新です。

数少ないストックが無くなりました!

でも頑張りますm(_ _)m


次回もお時間をいただけると嬉しいです。


仕方ないから応援してやるかという素敵な方、心優しい方は

レビューとか評価とかブックマークとかしていただくと作者が泣いて興奮して喜びます。

あと、更新が早まるかもです。よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
拝読いたしました! 理屈と感情の境界を探るような知的ファンタジーとして、とても完成度の高い序盤でした。 「祈りではなく理解による魔法」という発想が鮮烈で、異世界転移ものの枠を越えて“科学が神秘に触…
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