13.教授の右腕
転送塔で理と狂気の街アーカム・ネリアに到達した海斗は、教授エリカと出会い、研究補助員・養子・冒険者となる契約を交わす。彼女の掲げる“精霊なき魔法”の一端に触れるが、それ以上に彼女の言動に振り回される。詳しい説明を聞くために、研究室で“誰か”の訪れを待つ。
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「改めまして、イリス・シュミットです。考古学研究ゼミに所属しています。…あなたが落人の……?」
「あ、はい。養子になったのでカイト・ランディーニです。…でもカイトでいいです」
「ふふ、じゃあカイト君ね。私もイリスで」
緩くカールした白に近い水色の髪。
シルバーフレームの眼鏡の奥でシアンの瞳が光り、耳に揺れる星型のピアスがきらめく。
穏やかさと聡明さを併せ持つ――まさに「教授の右腕」という印象だった。
優しい笑みと共に、整えられた部屋に新しい空気が流れ込んだ。
シルヴィーが湯気の立つカップを渡しながら微笑む。
「イリスちゃん、いつも教授の世話ご苦労さま。今日はご馳走するわ」
「あはは、ありがとうございます。でも本当に助かります……」
そう言いながらイリスは、ふとカイトの方に視線を戻す。
「それで、教授からどこまで聞いたの?」
「とりあえず、研究補助員と養子と冒険者になって、教授の夢を聞いた……くらい。
あとは“これから来る子に聞け”って。つまり、イリスのことだよね?」
「はぁ……やっぱり、ほとんど話してないのね」
イリスは小さく息を吐き、立ち上がった。
「それなら、ちょっと早めのお昼にしましょう。
食べながら説明した方が、頭に入りやすいですし」
「いい考えニャ。それなら“風巡り亭”がいいニャ。あそこなら安くて美味しいニャ」
「ダル、いいチョイスね! 私も久しぶりにイリスちゃんと話したいし、ご馳走するって言ったし」
「じゃあ決まりですね!早速行きましょう!」
――風巡り亭――
魔導大学が建つ高層塔群から少し離れた、アーカム・ネリア内にある小さな石造りの食堂。
風を呼ぶ結界魔導石で、店内に心地よい空気が流れ続ける。
香ばしいパンと薬草の香りが漂い、壁には旅人の写真と古い地図が飾られていた。
「カイト君はどこに落ちてきたの?」
「大渓谷だよ。あれ……灰色の、デヴォールって言うらしいけど、四足の大型の獣に襲われそうになってたところをダルニャータに助けられたんだ。正直死んだと思った」
「デッ!……カイト君、よく生きてたね……魔力の流れも乱れてるのに」
「実際危ないところだったニャ。吾輩が見つけた時にはデヴォールの顎がもう少しで届くところだったニャ」
「ほんと、頼れる旦那さまね」
「フフン! 聞いたニャ? 二人とも!」
笑いが弾ける。
湯気の向こう、イリスがふとカイトを見た。
「でもあなた、観察の目がある。教授が気に入るのもわかります。……考えるときの顔、少し似てる」
その言葉に、カイトは少しだけ頬を掻いた。
(似てる……か。たぶん、同じ“知りたい”なんだろうな)
彼の心の奥で、何かが静かに繋がっていく。
異世界の食堂のざわめきの中で、
自分がこの“混ざり合う世界”の一部になり始めていることを、確かに感じていた。
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