脱出!
あれから何分だっだろうか...
俺の目の前に立ち塞がるは巨大な壁。
ドアを開けたいのだが、ドアノブに体が届かないのだ!!!
何度かジャンプをしてみるも、俺の跳躍力は約10センチほど。届かない。
よじ登ろうとするもズリズリと落ちる。
うんこにも関わらず粘着力もないみたいだ。
体が駄目なら頭を使うしかない!
①助けを呼ぶ
②道具を探す
③どうにも出来ない。俺はうんこ。
この3つの案が思い浮かんだ。
まず①。さっき教えてもらったテレパシーで助けを念じるも、何も反応がない。ダメ。
次に②。探したが使える道具はなかった。そもそも道具を使える体でもない。
最後の③。もうどうしようもない。
諦めてしばらく待つも、依然として宿屋のおっちゃんが部屋を開ける気配はない。
この何も無い時間が俺をナーバスな気持ちにさせる。
結局異世界にきてもこれか。
俺は勇者じゃない。無力なんだ。何もできないんだ。俺はうんこなんだぁ!!!!!!
自分がうんこであることを強く意識した時だった。
「ステータスオープン、うんこ」
頭の中で機械的な音声が流れて、俺の目の前に画面が表示された。
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名前:うんこ
レベル:1
HP:10 MP:30
力:1
身の守り:10
素早さ:1
魔力:1
かっこよさ:-999
技:テレパシー
魔法:テレポート
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こ、これはステータス画面だ!!!
突然の異世界要素に興奮しながら一個一個のステータスを確認する。
まず1が多い。まあ、うんこだからしょうがない。その中で身の守り10はでかい。
すぐに崩れるうんこではないみたいだ。
というか正直数値なんてどうでもいい!
注目すべきは一番最後の項目!
「「「テレポート」」」
俺、魔法使えるんだ!ただのうんこじゃない!使うぞ!魔法!
まずステータス画面を閉じる。
色々試したが自分がうんこだと強く念じるとステータス画面が開閉するらしい。
そしてついに、、、テレポートを使ってみる!
目標はあのドアノブ!
魔法なんて使った事ないが、転生前は散々魔法を使う妄想をしたもんだ。楽勝だ。
まずはゆっくりと深呼吸。自分が行きたいドアノブの上を強くイメージする。
---テレポート---
心の中で呟く。体が光に包まれる。
一瞬景色がぐるりと回転すると、イメージ通りドアノブの上に移動することが出来た。
つかまれぇええええええ!
ドアノブを体全体で掴む事に成功する。
捻じれぇえええええええ!
最後に全力で体をくの字に曲げて、ドアを開けることに成功した。
やった。
俺は成し遂げた。ドアを開けれた。やった。やった。やったんだぁ。
達成感に包まれていると、ドアノブから体がツルッと滑った。
体がクルクルと回転する。地面が遥か下に見える。
えっ地面遠くね?俺大丈夫?
つかこれ怖い。怖い怖い怖い怖い怖い。
死。
頭の中にその一文字が反響する。
体の全身から危険信号が発せられてパニックになる。
体がクルクル回転してる為、上手く着地体制を取ることも出来ない。
視界は上下が何度も入れ替わるから吐きそうになる。
そうだ!テレポートを使え
ひらめいた時には遅かった。
今までの人生では経験が無い、凄まじい衝撃が俺を襲った。