うんこと勇者
部屋を出て恐る恐る階段を降りる俺。
HPが残り1だからな。何かあったら4ぬから慎重に1段ずつ降りていく。
下の階に行くと、宿屋のおじさんがカウンターに立っていた。
熊のような図体。黒髪に若干白髪が目立ち始めた60代のような風貌だ。
---もしもーし、転生してきたうんこです---
挨拶をするとこちらに気がつき、大爆笑を始めた。
「ガハハッハッハ、ルルアの言ってた通りに本当にうんこが動いてらぁ。ハッハッハ。」
なんて失礼なやつだ。どうやら異世界でも、うんこが動くのは普通ではないらしい。
---ルルアってさっき話しをした金髪の女性ですか?つかこの姿とか魔王やらわからない事だらけなんですけど?---
「なんだあいつ自己紹介もしてないのか?
そうだぁ!賢者ルルア!その名を知らぬ者はこの街にはいねぇ程の有名人だせ!俺の名前はダイス。
見てくれの通り宿屋の店主だ。」
どうやらルルアは凄い人らしい。ノリが軽くてそんな風には見えなかったが。ダイスは軽快な口調で話を続ける。
「魔王は魔王だ。俺等人類の敵!そいつを倒す為にルルアが2人の勇者を召喚するはずだったんだが、
まさか1人がうんこになるとは想像もしてなかったぜ。」
俺の姿を見て再び大笑いするダイス。
というか2人?俺の他に勇者がいるのか?
---俺の他にも転生者がいるんですか?つか、なんで俺はうんこなの?---
そう質問すると、ダイスは改まった表情をして語り始めた。
「1週間前にな、ルルアが勇者の力を持った2人を召喚する大魔法を使ったんだ。1名は無事召喚されたんだが、お前さんの姿はなかった。てっきり失敗したのかと思ってたよ。
何せ歴史上ルルアしか使った事ない魔法だったからな。でも今日だった。街の下水道のゴミ処理場で勇者の魔力をルルアが感じ取ったんだ。そこでうんこのお前を発見した。何故うんこかはルルアでもわからないらしい。」
一旦区切るおっさん。
どうやら俺は勇者の失敗作であり、うんこのようだ。それ以上でも以下でもないらしい。
---俺がうんこの理由はもういいです。もう1人の勇者について教えてくれませんか?---
「わかった!お前はうんこだが、召喚された勇者は凄いぞ!チキュウって所から召喚されたらしいが、レベル1にも関わらず凄まじいステータスをしていたぞ!騎士にも引けを取らない位だ。まあ詳しくは今やってるニュースを見た方が早いな。」
そう言ってカウンター前の共有スペースらしに場所に行くダイス。
カウンターの前にいた時は気づかなかったが、よくよく見ると体にあちこち古傷があった。
ダイスは机の上の石ころを動かすと、空中にモニターのような物が表示された。
「今は丁度パレード中だ。俺の宿の客もみんな外出している。このお祭り騒ぎも勇者のおかげなんだぜ。」
モニターでは、女性のレポーターが興奮した口調で勇者の偉業を説明していた。
1週間前に勇者が誕生した事。
3日でレベル30に到達した事。
首都メルトアーク(今俺がいる所らしい)近郊の魔王軍を壊滅させた事。
そして現在凱旋パレード中だという事。
「 俺は勇者が召喚出来るなんて信じて無かったが、この活躍はバケモンだぜ。ルルアの賭けも当たりって所だ。ホラッ!今から勇者の演説が始まるぜ!ルルアも一緒だ!いやー、お前もうんこの姿をしているが、もしかしたら勇者のように強くなるかもしれないぜ!」
俺はレポーターやダイスの言葉が一切頭に入ってこなかった。
モニターに表示されている勇者の顔。
まさかあいつが転生しているとは。




