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1.どうしようもないこと。

 処刑台には、人集りができていた。村人らしき男性が、処刑台前に立つ。


「やめッ…やめて…止めてよ。やめて…離せ、離せ、離せ、離せよ」


 取り押さえられた小さな子供が、大粒の涙を流し、必死に懇願する。


 そんな異常事態で、誰もが素知らぬ顔、目も合わせてくれない。


 無情にも、処刑人は一人の首を刎ねる。


「アーーーーッッ」


 父の首が飛ぶと、拘束は解かれたのだが、もう動く気力もなくなった。


 声を上げるだけで、何もできなかった。私はどうして、こんなにも無力なのだろう。


 力無きことは、罪だと知った。涙など流すだけ無駄だということも。


 剣を持たなければならない。力無き私には、武器が必要だ。


 血反吐を吐くような特訓を始め、それから六年の月日が経った。今日は、アレグリア中立学校の入学式だ。


 アレグリア中立学校では、裕福な家庭や権力のある家柄に関係なく、入学を認められている。


 しかしながら、学生同士でのトラブルは少なくない。


『才持たなければ、努力をせよ。才あるものよ、意思を磨け。無能であるならば、才を食え』


 校風としては、上記の格言を提言されている。


 入学試験最低点の補欠合格をした兄妹、プランとハルナラは、入学式が行われる会場へ仲良く向かっていた。


 学生には、それぞれ序列があり、能力に見合った二つ名とON(オブジェクトナンバー)を与えられる。


 妹は、ON.七百二十、無銘。俺は、ON.七百十九、逆刃刀。兄妹揃って最底辺だ。


 入学式では、ダントツトップの成績であった才女、フレグラ・クラリアが新入生代表の挨拶に選ばれた。


 彼女は、一年生でありながら、ON.二十位という規格外な存在だ。俺とは天と地の差があり、雲の上の人物といったところである。


 入学式が終わり、各々のクラスに分かれる。教室は、妹と同じFクラスだった。


「今日からこのクラスの担任、アバールだ。よろしく」


 綺麗だけど、怖そうな人が担任になってしまった。席は、ON順のため、一番左端の後ろの席だ。


「さて、底辺なお前らに朗報だ。強くなりたいか?」


 思わずゴクリと唾を飲み込んだ。


「強くなれるんですか?」


 つい本音が漏れてしまった。


「だから私たちは、武器を持つんだ。武力で勝てないから、武器を持つ。単純なことだが、明快だ」


「それは卑怯じゃないんですか?」


 ある女生徒が疑問を口にした。


「卑怯ではないよ。元々武術や武器というものは、身体的スペックで勝てないから生まれたモノなんだ。私は潔く勝てとは言わない、言えないが正しいかな」


 アバールは空笑いをする。


「負けた結果、地獄のような日々を送る生徒を何人も見てきた」


 でも、負けてもチャンスがないわけじゃないだろ。パチリと浮かんだ感情。


「負けて次があると思うな」


 心を読まれた気がして、冷や汗が流れた。


「自らの正しさを証明したければ「勝て」そういうことですね」


「わかってるじゃないか」


 アバールは、中指を立ててウィンクをした。


 この妹は、恐れ知らずというか、なんというか。僕の自慢の妹だ。

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