ひとつ
10代後半の頃。早朝勤務のバイトをしてた。
飲食業で、朝の仕込みがあるから朝5時半出勤。
家からバイト先には徒歩で行ける距離で20分くらい。
電車の高架下、線路脇、マンション、団地がある通りだった。
夏はいいけど、冬の朝の5時半なんて真っ暗。
夜中みたいな雰囲気だし、始発も動く前だから誰一人歩いてないし、車も全く通らない。
あの冬の日もいつもと変わらず、出勤するためにいつもの時間、いつもの道を、暗い中とぼとぼ歩いて向かってた。
マンションが並ぶ通りにさしかかった時、
何か聞こえる。
声。人の。
でも、小さすぎて聞き取れない。
「………ン」「………ン」
辺りを見回すも人の気配はない。
確かに何か声がする。するけど、何て言ってるかわからないし、どこから聞こえてくるんだろう。。。と足元を見た瞬間。。いた。。
そこは、マンション住人専用のゴミ収集場、大量のゴミ袋の中に。。。男がいた。
ゴミ袋の中で倒れてる。埋もれてるが顔がこっちを見てて思いっきり目があった。悲鳴より私の体が飛び跳ねた。
ドッドッドッドって心臓がありえない音立てて暴れて息も出来ず、でも目がそらせないし体が動かない。
どうしよう。どうする。どうしよう。どうする。とぐるぐる考えてると
男
「スミマセン。。。A駅ハ,ドッチデスカ?」
私
「ハァハァハァ。←呼吸出来なくて荒い息。え?え、え、駅!?駅は、線路沿い通って突き当りの坂を〜」と道案内。
男
「スミマセン。。アリガトウゴザイマス。」
私
「ハァハァハァ。。。。えっと。。大丈夫ですか?」
男
「ダイジョブデス。。。( ˘ω˘)スヤァ」
私、全速力で立ち去る。
走ってて気づく。
そういえば、少し離れてるけど専門大学があるわ。。。なんだか学生っぽかった。
なるほど。酔いつぶれてここで力尽きて一晩過ごしたのか。。と。
ゴミ捨て場に、人が倒れてるって、映画やドラマやマンガだけじゃない。リアルにあるんだ。
お店に着いた私は、店長に事情を説明して、すぐ現場に戻ったけどもう男はいなかった。