3/54
宋飛3
街を出て少し駆け足を落とした。
「なんだ、あれは」
黒い細長い龍。地響き。近づいてくる。
次の瞬間、宋飛の全身に汗が吹き出してきた。
「全員散れ、すぐに荷は全て捨てろ。自分が逃げることだけ考えろ」
黒い甲冑に統一され、覆面をした騎馬隊がこちら目がけて飛び込んでくる姿がはっきり見えた。
「班礼、馬を全てもらうぞ。俺と王蓮の隊で時間を稼ぐ。お前は隠れ家で散った奴らを回収しろ」
「宋飛殿、何を」
「敵はおよそ二百。しかもあれは正規軍だ。まともにやれば全滅だ。いいな、命令だ」
言い終わるや否や、馬に飛び乗って駆け出した宋飛を含めた6名が、相手の騎馬隊の先頭集団に横一列でぶつかった。
とんでもない圧力を身に受け、宋飛は弾き飛ばされた。
相手も多少意表をつかれたのか、僅かに勢いを削がれ、動きを乱した。
そこへ体勢をすぐさま立て直した王蓮が突っ込んだ。
横向きになった先頭の相手の胸に剣が突き刺さるのが見えた。
しかし、次の瞬間、王蓮は数騎に押し包まれ、その姿は馬上から消えていた。