宋飛2
「どうしたもんかなぁ」
「何がだ、班礼」
「最近この辺りをおかしな軍がうろついているんですよ」
「何言ってるんだ。まともな軍なんてものがこの辺りにいたか?」
「どうも腑抜けた州の軍とは違うらしいんですよ。なぜか騎馬でたったの二百ほどです。それでも、少なくとも州軍のように腐ってはない。動きもとても機敏で速いって話です」
宋飛はちょっと考え込んだ。
近々城内の商人の蔵を襲う計画があった。
それを止めたくはないが、班礼は危険かもしれないと言っているのだ。
「気にするな。たった二百なら、どうせ中央の役人の巡視か何かさ。護衛目的ならこっちから近寄らなきゃいい」
「ならいいんですけどね。念には念を入れて、少しだけ他所で陽動を入れましょうか」
「そうだな。それでいこう」
相手が賊徒討伐の軍なら、その目的は自分達ではないだろう。
五十名かそこらの人数など、追い回すだけ時間の無駄でしかなく、大抵は無視されている。
「少し時間をおいたら、予定通りやるぞ」
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それから半月後の深夜。
目標とした商人の蔵と、それを守る私兵が確認できる位置に身を潜めた。
何も起きないまま、二刻息を殺していた。
突然、反対側の城壁付近で何か騒ぎが起こった気配があった。
その瞬間、潜んでいた全員が一斉に蔵に飛び込んだ。宋飛は先頭で剣を振り下ろし、こちらに気づいた相手が身構える前に打ち倒した。
次の一人は蹴り倒し、後ろに任せて切り掛かってきた相手を剣ごと切り倒した。
仲間が蔵の扉を蹴破り、荷車に中のものを載せ始めた。
「急げ。すべてを奪うのは無理だ。引き際を間違えるなよ」
僅かな間で脱出し、来た道とは違う方向に駆け出した。
城内の守兵が駆けつけるにはまだ時間がかかるはずだ。